第33話 スキルが使えれば最強

 これは想像を絶するスケールである。

 

「ちょっと! 春樹! もうゲームの次元超えてるんですけどこれ。どうすんのよ」

 

「藤宮君私もう帰っていい?」

 

「ははは、どうしよこれ」

 

 俺は確実にこの時命が尽きたと感じたのだった。

 

「何?」

 

 次の瞬間俺が持っていた携帯式仮想領域が動き出した。

 

「あれ? これは俺の知ってるMMO世界の最初のステージじゃん」

 

 そして周囲の光景は宇宙空間から、中世ヨーロッパ風の街から少し離れた小さな村の森に変わったのである。

 

 同時に宇宙空間の破片も消滅した。

 

「ずいぶんと変わったものだわね」

 

「夏菜も覚えてるでしょ? 麗美の魔王城ステージ。あそこがラスボスステージなら、ここはチュートリアルの最初のステージだよ」

 

「え、ええ、随分詳しいのねアンタ」

 

「そりゃあ、レベル100になるまで、やりこんだからね!」

 

 ステータスを確認すると、しっかりと俺のステータスはレベル100になっていた。

 

「ば、馬鹿な、ゲーム自体が書き換えられた」

 

「そういうことみたいですよ。これで俺は戦えます」

 

「ふん、ステータスを戻したところで私がγであることに変わりはない。こんなゲーム世界いくらでも私が奪ったβの能力で書き換えてやるわ」

 

「知らないんですか?」

 

「うん?」

 

「俺って里音先輩より強いんですよ」

 

「は? ぐはあ!」

 

「レベル100スキル 閃光」

 

「ぐは、ぐは、ぐは」

 

 俺はレベル100スキルで堀本凜を圧倒した。

 

「まずい、このままだとHPが尽きる。もうβは使い物にならないからいらない」

 

 次の瞬間、里音先輩の体が動きを止めて、抜け殻のように落ちた。その傍から残像のようなものが見えた。

 

「夏菜!里音先輩の体をお願い!」

 

「分かったわ」

 

「ふ、ふふふふふ。やっぱりこっちの体の方がしっくりくるわ」

 

 次の瞬間陰から堀本凜が元の姿で現れた。

 

「やっぱりそっちの方が私も合ってると思うわ」

 

「そうでしょ沙月さん。じゃああなたから仕留めさせてもらうわ」

 

「そんなことしたら一生恨むし、あなたの闇営業の事実全部記事にしたバラすわよ」

 

「ふふふ、もうそんなことどうでもいいわよ。私はγになったんだから!」

 

 堀本凜は高速で沙月さんに接近した。

 

「俺のこと忘れてもらっちゃ困りますよ」

 

「ぐはっ」

 

 しかし俺のレベル100スキル閃光の方が早かった。

 

「ど、どういうことだ。私はγの力で最強と言われるβもαも超えたのに。私がどれだけ積み重ねてここまで来たと思ってるんだよ。お前は一体何者なんだ」

 

「いやあ、普通にゲームしてたら、レベル100になっちゃっただけの人です」

 

「ふざけんなよ!」

 

「レベル100スキル切断」

 

「うわああああ」

 

 俺はレベル100スキル切断で堀本凜を消し飛ばしたのだった。

 






「ガタッ」

 

「どうしたのα、椅子から崩れ落ちちゃって」

 

「う、嘘だろ? γがあんなにあっさりやられるなんて」

 

「詰めが甘かったようね」

 

「く、くそがなんであいつがMMO空間を展開できたんだよ。あれはお前の能力だろうがβ」

 

「春樹には非常時に備えて携帯式仮想領域をもたせているのよ。彼はMMO世界にいる間だけ最強の存在になる」

 

「馬鹿なそんなものは、俺がゲームに閉じ込めた瞬間何もできなかった時点でなかったじゃないか」

 

「その時の春樹君は麗美さんへの思いに取りつかれていたからね。冷静な判断も何も出来てなかったんじゃないかしら」

 

「くそが、お前の口調ムカつくんだよβ。ここで今すぐ」

 

「見つけたわよ内村礼」

 

「ぐっ、お、お前は国城穂美香なんでここに」

 

「私が天才ハッカーなの忘れた? 他人の意識に侵入するなんて造作もないことよ」

 

「馬鹿が、お前もゲームの具現化を微小にしてるだけだろうが。普通はそんなことできないよね」

 

「そりゃあまあ現実でそんなことが出来るわけないよね」

 

「お前もどうせ僕と同じ実験サンプルの1人だろ? 大人しく僕の計画にしたがえよ」

 

「いやなこった。私は長いものには巻かれるたちでね。お前はとっととお縄につけよ」

 

「さっきからあなたたちは何の会話をしてるのよ」

 

「とにかくだ。僕はこんなところで終わるつもりはない。β、君のことはいずれまた捕まえに来るからな。そしてあの春樹の奴も」

 

「逃がすかよ」

 

「逃げたわね」

 

「はあ、また逃がしちゃった」

 

「あなたは」

 

「私の名前は国城穂美香よ。簡単に言うと春樹君の協力者、あなたもう意識取り戻していいわよ、内村礼の残存思念は消えたわ」

 

「そう、ありがとう。そうさせてもらうわ」

 







「里音先輩!」

 

「うん? 春樹と夏菜さん、ごめんなさい遅くなったわ」

 

 この声は紛れもなく里音先輩だ。

 

「いやあ、意識が戻ってよかったこれにて救出作戦完了です」

 

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