第23話 脱出と激情

「え? なんでだよスキルは破壊したろ? もう縛るものはないはずだ」


「ごめんね、私のスキルは破壊されたけどこの仮想領域のトリガーとしての制約が残ってるの?」


「トリガーの制約?」


「αは私の体の中にトリガーとしての魔法を施したわ。つまり私のHPが0にならないとこの仮想領域は消えないのよ」


「嘘だろ……はっ、それなら安心しろ麗美、うちには里音先輩がいる」


「ああ、里音さんね」


「そうそう、里音先輩とαの奴の攻撃がぶつかれば仮想領域が破壊されるんだよ。前回俺はそうやってでたんだ」


「それは無理そうね」


「里音先輩、αはどうしたんです」


 次の瞬間里音先輩が現れた。


「あいつは逃げたわ。絶望を知るといいって言ってね。さっきの春樹が言ってたことは、既にαとの戦いで試していたけど、今回は全く空間にひびが入らなかったわ」


「いったいどうして……」


「αが言ったのよ。魔王城は特別強固なSSS仮想領域でそれほどトリガーの制約も強いものになる。今私はその意味を理解したわ」


「じゃあ、麗美を倒すしかここを出れないってことですか」


「そういうことになるわね」


「ふ、ふざけんなよα!」


「落ち着いて春樹君、今のあなたはこんなに仲間に恵まれている。もう私はあなたには必要ないのよ」


「ふざけんなよ、だって麗美の話を聞いてたら全部俺とαの奴が悪いんじゃねえのかよ」


「そんなことはないでしょ。それに私は多くの罪を背負ってしまったわ。もうここから先には進めない」


「そんなこといったら、俺だって多くのプレイヤーを倒したぞ。このゲームで消えた人は救う方法があるはずだから、麗美は罪を感じなくていいはずだ」


「そうじゃないのよ。私の能力は現実世界にいる時も人格に影響を与えたの。夏菜の彼氏さんや夏菜、その他にも多くの人に酷いことをした。私はもうここにいるべきではないわ」


「そんなん全部αのせいじゃん」


「これは私なりの罪への償いなの。それにさっき自分で春樹君は答えを出したじゃない。ゲームで消えた人を救う方法はある。それならその時に私はみんなと再会できるときを待っているわ」


「そ、そんなこというなよ……まだ何か方法があるはず」


「春樹、魔王城のフィールド機能はリミットつきよ。時間経過でいずれ空間内のプレイヤーは全て消失する」


「ん、だよそれ! 何が面白いんだよこんなの!」


 里音先輩の言葉に最早怒りしかわかなかった。


「そういうことだわ、里音先輩春樹君をよろしくお願いします」


「分かったわ麗美さん」


「夏菜ちゃんには本当に言葉もないわ。もし戻れたら全力で罪を償う」


「そ、そんな必要ないわよ。戻ってきてくれたら、私が抱きしめてあげる」


「ありがとう!」


「……」


「そんな表情しないで春樹君、またあったら一緒にお茶でもしましょうね」


「させねえよ」


「うん?」


「麗美のHPは俺が守る」


「ちょっと春樹あなた何を考えて」


「里音先輩は黙ってってくださいよ。脱出方法は俺が考えるんで」


「そんな時間あると思ってるの? 麗美さんの決意を無駄にする気」


「くっ……」


「春樹君、私にはこれしかできないのよ。ごめんね」


「ちょっ、麗美待て早まるな」


 麗美は懐に隠し持っていた毒アイテムを取り出した。


「みんな、本当に迷惑かけてごめんなさい」


「-」












「はっ」


「どうやら出られたようね」


「ぶっ潰す」


「春樹?どうしたの?」


「αは俺が絶対にぶっ潰す」


 俺の怒りは頂点へと達したのだった。

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