第17話 魔王城

 俺は仮想領域のMMO世界に完全にログインした。

「ここは」

「ここはステージEX、魔王城といったところね。最難関ステージだわ」

「なんでよりにもよって魔王城がステージになるんですか」

「分からないわよそんなこと。それより夏菜さんの元へ急ぐわよ」

「そうですね」

 夏菜はおそらくレベル1だしこのまま、誰かと接触したらおしまいだから急がないと。

「君たち待ちたまえ」

「お前は智蔵か?」

「智蔵? 知らない名前だな」

 智蔵は里音先輩と初めてあったタイミングでの麗美との接触で一緒にいた男子である。

「それでなんのようだよ」

「ここから先は当主様に認められたもののみが通過可能だ」

「当主? そんなルールに従うとでも?」

「だったら、俺は君たちを拘束することになるが?」

「無理な相談だな」

「春樹!」

「里音先輩は先に行ってください。ここは俺が」

「分かったわ」

「悪いが俺は当主様の筆頭騎士だ。君に勝機はない」

「それはやってみないと分からないだろ!」

 拳を振るうと智蔵だった男は、瞬時に回避をした。

「その程度の速度で俺に攻撃を当てられるわけがない」

「うわ」

 すかさずカウンターを入れられた。しかしどうということはない。

「なんだと? 全然効いてない!?」

「そういうこと! 俺はこのゲームで負けなしなんだよ!」

「ぐはああ」

 智蔵だった男を拳で吹っ飛ばした。その後相手の眼鏡は破損した。

「すまない、また俺は一人ゲームの世界で犠牲者を出してしまった」

「ふん、分かっていて、やるとは随分と図太い精神をしているな」

「俺はもう覚悟を決めたんだよ。夏菜を泣かせた麗美を許さないし、もう俺の傍にいる人を泣かせたくない」

「麗美……君主……うっ頭が、ぐわああああ」

「おい、どうしたしっかりしろよ智蔵」

 突然智蔵だった男は頭を抱えだし、その後冷静になっていた。

「麗美……そうか、君は春樹君……気を付けろ麗美は危険だ……ぐわあ」

「智蔵しっかりしろ!」

 仮想領域でHPが尽きたものはその世界の一部になる。智蔵にもその時間が来たようだ。

 麗美が危険、智蔵はいったい麗美に何をされたんだ。

「ガシャアアアアア」

「なんだ!」

 次の瞬間魔王城の天井が崩れて、誰かが落ちてきた。

「里音先輩!」

「くっ、やはりあなたもここにいたのねα、いや内村礼といった方がいいかしら」

「α?」

「酷いな、そっちは現実世界の名前だって。今はαでいいって。それになんかこっちでその名前で呼ばれると嫌な気分になるんだけど?」

 煙が舞う瓦礫の中からαの声が聞こえた。

「なんでお前がここにいるんだよ」

「やあ、また会ったね元トリガー君」

「元トリガー」

「そう元だ。今は別の子がトリガーとなって仮想領域を展開しているのさ。素晴らしいだろ? レア度SSS級の魔王城を見事に顕現させている。やはり僕の見立ては完璧だったね」

「もしかしてそのトリガーって麗美のことかよ!」

「さあ、自分で確かめてみたら?」

「そうさせてもらうよ!」

 俺はすかさずαに拳を入れようとした。

「何?」

 しかしノイズが走り拳はすり抜けた。

「なんで現実世界じゃないのにこの現象が起きるんだ」

「今の僕はβと戦闘中だからね。それ以外の人物との戦闘を無効化するルールを設けたんだよ」

「それはまたとんでもないルールだな」

「そういうわけ、ここは私に任せてあなたは麗美さんの元へ行きなさい」

「この先に麗美がいるんですか」

「ええ、αが言っていたわ」

「それは信用できないけど、今は進むしかない!」

 俺はαと里音先輩の先の道へ向かった。

「これはどういう状況だよ」

 学校に展開されたということは他の生徒達もたくさんいるはずだ。でもこの魔王城には生徒がほとんどいなかった。

「お前、そこを止まれ!」

「お前は安雪か!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る