第16話 麗美の学校がゲームの世界に包まれた

 翌日俺と里音先輩は学校を欠席して、病院にいる夏菜を訪ねた。


「アンタたち、見舞いにきてくれたの?」


「当たり前だろ? あんなことがあって、無視できるわけない」


「流石春樹といったところね。でそちらの方はどうして一緒に?」


「私は同行者に過ぎないわ。何か困ったことがあったら話でも聞いてあげる。春樹の大切な友人だもの」


「ふーん、これはずいぶんと頼もしいわね」


「なあ、いったい何があったか聞かせてくれよ夏菜」


「麗美に襲われたのよ!」


「え?」


_


 私の元カレは優戸っていうの。同じ高校に通っているわ。


 優戸はいつも私に優しくしてくれた。私が困っているといつも手を指し述べてくれたわ。


 でもある日優戸は私の元に来なくなったの。


 違和感を感じて、優戸がいつもいるバーに行ってみたわ。


 そしたら麗美と優戸がいたの。


 とても楽しそうで私は許せない気持ちになった。


 でもそれだけじゃない、優戸は麗美に彼女はいないかと聞かれていたら、いるけどつなぎで本命は麗美って言っていた会話を聞いてしまったのよ。


 これは何か間違い、きっと優戸は麗美に洗脳されてしまった、そう思った私は彼女への復讐を企てたの。


_


「私の復讐は貴方たちに出会って、麗美の連絡先を手に入れた瞬間から実行に移されたわ」


「麗美と彼氏の優戸さんが一緒にいきつけのバーに行っている時に同時に連絡をするって奴か」


「ええ、そうよ。スマホ2つ使ってやったわ。実際にそれをやってやったら2人とも驚いていたわ。麗美はまさか私が優戸の彼女だとは思わなかったのでしょうね」


「で、麗美になんて言ってやったんだ?」


「このくず女、私の優戸から離れなさいと言ったのよ」


「随分ハッキリと言ってやったんだな」


「優戸の奴はびっくりして、言葉も放つことが出来なかったようね。あいつが腰を引かせて、身動きが取れずに倒れている姿が容易に想像できたわ」


「麗美はその時どうしたんだよ」


「あいつは結構冷静だった。中学校で話そうって私に提案してきたの。謝罪がしたいって」


「それで中学で麗美と対面したのか?」


「それが、よく覚えてないのよ。体育館に来てと麗美の声が聞こえたから向かったら、麗美の姿はなくて背後から薬物を注入された間隔になったわ。おそらくこの時に毒をもられたのかしらね」


「だからあんなに焦燥しきっていたのか」


「私は麗美の声が聞こえてから嫌な予感がしてアンタに連絡しながら、体育館に向かったわ。でもそのおかげでアンタにこうやって助けてもらえた。そのことに感謝しかないのよ」


「間に合ってよかったよ」


「ここまで話を聞いたところもう一度麗美さんの元を訪ねた方がよさそうね」


「麗美の奴一体何考えてんだよ! 夏菜にこんなことして許さねえ!」


「それを直接確かめに行くわよ」


「待って、私も連れてってよ」


「おい夏菜、お前は病み上がりで満身創痍だからここで待ってろよ」


「そうね、春樹の言う通り、それが賢明な判断だわ」


「私はだいぶ体調が回復したわ。それにこのままやられっぱなしというのも性に合わないのよ」


「分かった、それじゃあ一緒に行こう」


 俺たちは麗美の通う高校を訪れた。





「なんだあれは」


 人だかりが出来ている。この光景はどこかで見たことがあるような。


「里音先輩これは」


「ええ、おそらく仮想領域、私たちが体験したものと同等の広さね。遂にαの奴が動き出したわ」


「これはもう行くしかないわね。夏菜さんはここで待機を」


「いやだ! 私も行く!」


「夏菜! ここから先はマジで危険なんだよ。命の危険もあるかもしれないからついてくるなよ」


「嫌だったら嫌だ。私も行くんだ!」


「ちょっ、おい!」


 夏菜は仮想領域の中に一人で走っていった。


「君、危ないから離れた方が」


「うるさい!」


「ガサガサガサ」


 そして人込みをかき分け一人仮想領域に入ってしまったのである。


「夏菜……なんていうことを」


「私たちも彼女を追うわよ」


「は、はい」


 俺は里音先輩に続き仮想領域の中に入っていった。


 この時俺は違和感があった。なんで麗美は、中学校にしたのか。


 今の状況は全て彼女が想定していることなのではないか。


 αと麗美の繋がり、これは麗美と俺に何かしらの因縁があるのではないか。


 いずれにしてもすべての答えはこの仮想領域の中にある。


「全部突き止めにいく!」


「GAME START」

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