第12話 周辺調査
「よっ! 春樹い!」
「友都! いきなりなんだよ今日も部活はいかんぞ」
「いいよ別に、道安先輩がさあ、いつでも待ってるぞ! っていってたぜ。それと里音先輩を幸せにしてやれよ! だってさ」
「なんで俺が里音先輩と結婚してるみたくなってんだよ」
「だってお前最近毎日一緒に通学してるらしいじゃねえかよ! 噂では一緒に里音先輩の家から出てきたとか」
「どこから漏れたんだその情報!」
「おいおいおい、うちには瑠美ちゃんがいるんだぞ。彼女の人脈ネットワークをお前はなめ過ぎだ」
「あ、そういえば瑠美ちゃんがいたわ……うっ」
瑠美ちゃんの人脈ネットワークと聞いた瞬間に真紀ちゃんのことを思い出した。
「大丈夫か春樹、いきなり頭を抱えだして」
「大丈夫だよ! 心配すんな」
「まあ、なんか言えない事情ってもんがあるんだろし、俺からは聞かないでおくぜ。ただ俺たちはいつでもお前の力になる! 困ったときは俺たちゲーム部の所にこいよ!」
「おう!」
はあ、これだ。ゲーム部に行くと、記憶のことで頭にノイズが走る。だから俺は部活に行けなくなったんだ。
俺は今日も里音先輩の家に向かった。
「αの本名? どうしてそんな重要なこともっと早く言わなかったのよ」
「いや、里音先輩もあの場にいたじゃないですか」
「おそらくαはメッセージスキルで貴方にしか聞こえなくしてたんでしょうね。一連のやり取りの一部は聞こえてなかったもの。それでその本名は何なの?」
「そんなことが……内村礼、そういってました」
「内村礼……こっちで調べてみるわ」
「あ、それと、麗美の名前を出してました。彼女に興味があるって」
「麗美? ああ、あの春樹の同級生のね」
「ええ、実は元カノみたいな存在だったんですよ彼女」
「元カノに近い……ふん」
次の瞬間、里音先輩は手にもっていた紙コップを突然潰した。
「ど、どうしたんですか里音先輩いきなり」
「も、問題ないわ、飲み物は全て飲んだもの。ちょうど潰そうと思ってたの」
「そうですか」
「それじゃあ、今度はその麗美って子の周辺調査と行きましょうか」
「え? あの学校行くんですか……」
「そうよ? 何か不都合があるの?」
「エリート校嫌いなんですよ。近づきたくないといいますか」
「はあ、あなたそんなに神経質だったのね。分かったわ。私一人で調査してみる」
「お願いします」
こうして俺は里音先輩の家で一人過ごすことになった。
俺の部屋から持ち出したゲームを使用してよいことになっている。
「ふう、まさか里音先輩に全て調査を任せることになるとはね。でもそれだけあの学校に近づくのはごめんなんだ」
「ブルルルル」
「うん? 電話か? あれ夏菜からだ」
まさか夏菜からこんなに早く連絡を取ってくるとは驚きである。
「もしもし春樹? 今から私と買い物に行かない?」
「え? どうしたんだよいきなり」
「だってアンタ、この前私を買い物に誘っていたじゃないの! 早速だけどその提案に乗るわ」
「本当にいいのか! じゃあ、今から行くわ」
「オッケー、じゃあこないだ合った場所で待ってるわ」
里音先輩にはちょっと申し訳ないけど、こういう気休めも大事だとも思う。
「きたわね春樹」
「こないだぶり夏菜、それでどこ行く?」
「いい感じの喫茶店を知ってるのよ。そこでお茶でもしない?」
「いいね分かった」
俺は歩いていると、嫌な予感を感じて、それは的中した。
「ってここって麗美の学校のほぼとなりにある喫茶店じゃねえかよ!」
「引っかかったー! アンタこないだかたくなに学校に来たくなさそうだったから、こうでもしないと来ないと思ってね」
「なんで学校の場所分かったのに俺が必要なんだよ」
「私がいきなり、話しかけても不自然すぎるもの。元カレ候補のアンタを連れて自然と麗美の腹の中を探るって作戦よ」
「俺は通訳係かよ!」
「そういうこと!」
はあ、まんまとはめられたものだ。しかしこの喫茶店は見事に窓から学校の校門の様子が見える。随分いい場所を夏菜は見つけたものだ。
「ふふ、凄いでしょ。私はここで麗美の奴をよく監視してるのよ」
「いや、怪しすぎるでしょ」
「大丈夫よ、私ほど自然に監視ができる女子はいないわ」
「確かにお嬢様な雰囲気が出ていて、喫茶店にぴったりだと思ったわ」
「ふふふ、褒められっちゃった」
「はあ、凄い執念だな……」
「人の恋人に手を出したらどうなるか……その代償は大きいわよ」
「おお、怖い怖い」
夏菜の目が鋭くなって本当に怖かった。これは一緒に行くしかないようだ。
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