第4話 これだからエリート高と麗美は嫌いだ

「ちょっと疲れたからここら辺で休憩しましょうか」


「え、ああ、そうですね」


 ここは俺がこないだ麗美と会った場所だ。


 前は一人でベンチに座っていたが、今回は里音先輩と二人で座ることになるのかな。


「ちょっと私ジュース買ってくるわ」


「え? あ、はい」


 ひとまず、一人で座ることになったのか。


「はあ」


 ベンチに座った俺は空を見上げていた。


 思えば、いろんなことがありすぎるくらいであるが、これからどうなってしまうのだろうか。


「春樹君?」


「麗美!」


 黒髪ロングの正統派な綺麗さ、間違いなくクラスの中心人物のオーラで俺に話しかけてくるこの人物は、麗美であった。


「またこんなところで、何やってるの?」


「何って、お前に関係ないだろ?」


「関係ないって言い方ないでしょ。私はこう見えて春樹君が学校でうまくやれているか心配してるのよ?」


「どうせ今日も連れがいるんだろ? 確か智蔵っていったっけ? はやくそいつの所に戻れよ」


「智蔵君かあ……今は特に一緒にいないわよ」


「はあ? じゃあ一人なの?」


「いや、今は安雪と一緒に帰ってるの」


「そう」


 また違う男を連れてんのかよ。


「麗美ちゃん!」


 次の瞬間、爽やかな声が聞こえた。


「あ、安雪!こっちこっち!」


 その時金髪のチャラ男というイメージのイケメンが現れた。


 チャラそうな見た目なのに、エリート校に通ういわゆる天才タイプか。


 俺の嫌いな要素が一瞬で揃った。


「どうしたの麗美ちゃん! てかこの人誰?」


「紹介するね。私の中学の頃の同級生の春樹君だよ」


「ふーん、あんまり興味がわかないな」


 こいつ態度悪いな。


「そんなこと言わないで、ほらほら、春樹君も困ってるから」


 麗美は俺の目の前に来るように安雪という人物を引っ張った。


「うーん、もしかしてその制服、君、あの低偏差値校に通ってんの?」


「は?」


「嫌なんだよね。低偏差値のやつと絡むの、俺の格が下がるっていうかさ」


「ちょっと、安雪~、春樹君になんて失礼なこというの?」


「いやだって、こいつ、雰囲気が辛気臭いっていうか、嫌いなんだよねえこういう奴」


「だったら! とっとと失せろよ!」


 もとよりエリート校のやつらと絡むつもりもなかったし、これは好都合である。


「はあ? 雑魚の癖に俺にそんな態度取っていいのかよ」


「ちょっと、ちょっと! 安雪落ち着いて! 春樹君は不器用なんだよ。これも初対面の相手への彼なりのコミュニケーションってやつ?」


「はあ? 誰がそんなコミュニケーションなんか! うわっ」


 次の瞬間俺は安雪に胸倉をつかまれた。


「雑魚が俺に喧嘩を売るとどうなるかってことを教えてやるよ」


「痛っ」


 安雪は更に胸倉をつかむ力を強めると、拳を振りかざそうとしていた。


「あなたたちやめなさい!」


「里音先輩!」


 ジュースを2つ手元にもっている里音先輩が戻ってきたようだ。


「はあ? 誰だお前……うん?」


 安雪は里音先輩を見ると俺の胸倉をつかんだ手を緩めた。


「君、こいつと同じ学校に通ってんの? 勿体ないな、ダイヤの原石じゃん。どう俺と一緒にお茶でもしない? いい店知ってんだよ」


 なんだこいつ、いきなり里音先輩をナンパしやがった。


「あいにく今はこちらの方と、予定がありますのでお断りします」


「ガーン……」


 安雪は、ショックを受けたのか下を向いて動かなくなった。


「へえ、春樹君にこーんな可愛い女の子が友達でいたんだ」


「いや、里音先輩とはつい最近知り合った仲なだけで」


「私嬉しいよ! 春樹君が学校で楽しんでくれているようでよかった! またね!」


 そういって麗美は里音先輩にも軽く頭を下げると、安雪を連れてその場を立ち去った。


「はあ、助かりました里音先輩、一時はどうなることかと」


「あの子、麗美といったかしら? 一体どういった関係なの?」


「麗美とは中学の同級生ですよ、特にそれだけです」


「同級生ねえ、フフ」


「どうかしたんですか?」


「いや、なんでもないわ。ただあの子から私と似た一面を感じ取っただけ」


「里音先輩と麗美が似てる?」


 確かに2人とも顔が整っているが、性格は闇と光ともいえる違いがある。


「はいこれ」


「ありがとうございます!」


 とはいえ特に気にせずに里音先輩が買ってきたジュースをもらった。


「……」


「猛将先輩の襲撃は次いつになりますかね」


「さあね、気にする必要はないでしょ。だって春樹がいるもの」


「え?」


「気づいてないの? おそらくあなたに勝てるプレイヤーはうちのギルドではいないわ。おそらくギルドのボスですらね」


「そんなに俺は強かったんですか!」


「ええ! そうだわ、おそらく相当強いわね」


「実感ないですって、そんな」


 とはいいつつ、薄々勘づいていた。最初にプレイヤーを倒した時から、負ける気がしなかった。


「今日の仮想領域でのあなたとの戦いは、私からの試験だったのよ。実力を見て合格を出したわ。私のそばに置く実力として申し分ない」


「でも、里音先輩も十分強いですよね」


「そうね、でも私の力は本来戦闘で使うものじゃないのよ」


「そうなんですか」


「ウイルスプログラムを殲滅するためといった方が正しいかしらね」


「なるほど、確かに領域の根幹に干渉してる感じありますものね。今は出来ないんですか?」


「ええ、まだ私の力は発展途上だわ」


 里音先輩の能力が発展途上とは驚きある。


「流石に冷えてきたわね、そろそろ帰りましょうか」


「そうですね」


 季節は10月で秋、外は冷え込む季節である。


 こんな気温が続くと冷え込んでしょうがない。

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