第4話

 生きていた。

 なぜ。

 覚えている。何もかも。あのとき、半分ぐらい食われて。そして。街の景色を眺めながら。彼女のことを考えて。それで。


「おわっ」


 目の前に車がある。壊れている。


「あのときと」


 同じ。

 なぜか分からないけど、動かなくなる車。どこにも異常は見当たらなくて。そして。


「壊れたんですか。車」


 彼女が来る。


 覚えている。全て。これは、あのときと同じ。あのときは。彼女が車にさわったら、直った。理由は分からないけど。理由。


「そうか」


 彼女の記憶が、自分を、ほんのわずかに存在させているのか。だから、初めて会ったときと同じ。


「すいません」


 彼女に声をかける。


「手伝って、もらえますか?」


 彼女。

 困惑した、嬉しいような、かなしいような、そんな顔。


「ごめんなさい。手伝えません」


 えっ。


「むかし、同じような状況で。仲良くなった人と。別れちゃって」


「それは」


「だから、ご遠慮します」


「そうですか」


 覚えてないのか。

 じゃあ、仕方ないか。

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