第3話

 ベッドの上。彼が寝かせられている。その部屋に、彼女が招き入れられた。


「あとは、あなた次第です」


 ひととおりの説明があった。街を守るために、存在の半分を食われた彼。増援に救出され、彼を食った敵も既に彼から負った致命傷で消滅済み。しかし、彼の存在は消えなかった。


「最後まであなたが、彼のことを覚えていたからです」


「いえ」


 首を振る彼女。


「わたしは。彼の名前を忘れました。思い出せないんです。だから、もう」


「そうですか。こちらのアーカイブにも彼の情報はもう残っていません」


 ベッド。

 優しい風が流れていって。

 彼の存在が。ゆっくりと。

 消えた。

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