第2話 未踏破領域のガーディアン

 世界樹ラシキルがある。そう確信した俺はモンスターファームをもっと調べてみたかったが

「ここから早く離れよう。これだけのモンスターに襲われたら、みんなを守りきれる自信がない」

 とドルガトンが渋った。

「……」

「行きやしょう、こんなとこ、あっしも長居したくないですよい」

 みんなの言うことも分かる。俺たちはモンスターファームを離れ、下層へとたどり着いた。


 最深部にはダンジョンコアがあると言われている。

「気を付けてくだせぇ。ここを踏んだら転移しちまいます。この罠にかかって壁の中へ飛ばされたら即死ですよい」

 とヤフコイヌがみんなに注意する。


 みんなごくりと息を飲み、ヤフコイヌの後ろに続き罠にかからないように移動する。襲いかかってくる魔物はいたが俺たちの敵じゃなかった。


 そして怪しげな模様が書いてある赤い扉にたどり着く。


「ここみたいだな」

「ですねい、あっしの勘もここだといってやすぜ」

 と言ってみんな頷く。


「じゃぁ、決戦に備えてしっかり準備をして挑もう。ここで今日はキャンプだ」

 俺は指示をだし、みんなアイテムや装備品の調整をしている。その様子を見ながら

「翡翠晶はみんな持ってるよな? 勝てないと判断したら即使ってこのダンジョンから脱出すること。」

 と話をする。


「でも、これ高いんだよな。2回のダンジョン探索の稼ぎで1個をなんとか買えるかどうかだろ?」

 というドルガトンは翡翠晶を使うことに不満がありそうだ。


「死んだらなんの意味もないからな。経験は生きていてこそ役に立つ。翡翠晶は買えば補充できるが、死んだらそこまで、二度目はないんだ」

 と俺は話をする。金か命かで悩むのなら命をとるべきだと俺は思うからだ。


「金はダントリトが見つけた宝珠の欠片でお釣りがきやすよ。命あっての物種ですぜ」

「そうよ。あたしも死んだ人を生き返らせるのはさすがに無理だもの」

「ってことでやんす。さぁ、寝やしょう。明日はガーディアンとの戦いなんでやすから」

 とヤフコイヌとお嬢も同意してくれた。適当な木材に火をつけ、俺とお嬢がまずは見張りをした。そのあと仮眠をとったドルガトンとヤフコイヌに見張りをしてもらった。


 ◇


 体調は万全だ。ガーディアンがいると思われる模様の描かれた扉の前に立つ。過去の経験上ガーディアンに敵と認識されると、入口が閉じられてしまうことがある。


 そこで俺たちは鉄製の板を組み上げて大きな箱を作って置いておく。閉じ込められる事態を防ぐために翡翠晶とダブルで保険をかけている訳だ。翡翠晶は高いしな。金にうるさいドルガトンに文句をいわれないために考えた訳だ。実際問題、翡翠晶を使わないですむなら、それに越したことはないもんな。


「それじゃぁ、行こう」

 扉を開いた先で待ち構えていたのはアイアンゴーレムだった。赤い色をしたダンジョンコアがアイアンゴーレムの後ろに見える。ダンジョンコアの守り人という訳か。世界樹ラシキルがないか、と周りを見回しても樹木は見えない。


「来るぞ!」

 とドルガトンが叫ぶ。アイアンゴーレムが右手を振り下ろす。ドルガトンは盾で受け止めるが体勢を崩してしまう。ドルガトンが攻撃を受けるのも危ういレベルか!


「時間が勝負だ。長期戦は難しい、みんな攻めるぞ!」

 と攻撃を仕掛ける俺たちだったが、そのあともドルガトンは攻撃を受け止められず吹っ飛ばされた。その度に俺とヤフコイヌでフォローに回ったが、手痛い一撃をヤフコイヌが受けてしまう。


 それを見たお嬢は、即座に回復魔法をヤフコイヌに唱えた。今度はお嬢が狙われる。回復魔法の使い手であるお嬢は俺たちの生命線だ。


「お嬢を守れ!」

 と発破をかける。いつも安定しているドルガトンに疲労が見える。さすが未踏破領域のガーディアンってことか!


「ドルガトン! いつも通り頼むぞ!」

 と俺は劣勢を跳ね返すように叫び、ドルガトンは頷く。

「さぁ、ここからだ! もう一度、戦闘を立て直すぞ!」

 と俺はみんなを鼓舞し気合を入れた。

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