俺たち四人の中で裏切ったのは誰だ!?

冴木さとし@低浮上

第1話 世界樹ラシキル

「世界樹ラシキルの宝珠はどこにあるのか!?」

 と行きつけの店、ススラン亭の料理を食べつつ俺は息をまく。

「そのお宝はニセ情報も出回って、どれがホントかすら分からなかったんじゃないですかい? あっしたちには無理ですよ」

 とシーフで雑用ならなんでも来いのヤフコイヌの反応はいまいちだ。


「一攫千金、もうみんな夢を捨てちまったのか!?」

「リーダー、あたしらもいい年なんだから、冒険者稼業を続けるのも、そろそろ潮時なんじゃないですか? 今さらお宝が~って言われても、ねぇ?」

 と、やる気がなさそうに喋っちゃいるがヒーラーのシルリアートは商家のお嬢様だ。小麦色の肌をした健康的で綺麗な女性で、笑うと八重歯が見えて可愛らしい。


 お嬢の発言に頷いてムキムキナイトのドルガトンも便乗してきた。

「シルリアートの言う通りだ。高い金を払って本やら地図やら買い漁ったあげく、世界樹ラシキルはガセネタだって言いだしたのはリーダーのダントリト、お前自身じゃないか」

「まぁ、そうなんだけどな、俺は考えを改めたんだ。これを見てもさっきみたいなことが言えるのか?」

 と、俺はニヤリと笑って宝珠の欠片を見せたのだった。


 みんなが俺の手ひらの上のお宝を見つめる。

「こ、これは……! こんなものがどこにあったって言うんですかい!?」

「これってそんなに価値があるものなの?」


 鑑定するときに使う眼鏡をかけてヤフコイヌは

「価値があるなんてもんじゃねぇ。これだけの魔力純度の高い宝珠があるなんて……。欠片ですら大発見じゃないですかい!?」

 と声を張り上げて驚いている。


「だろう? 俺もこれを見つけたときには目を疑った。だから夢を諦めたのか? って聞いたんだ。徹底的に探索する価値がある!」

 と俺は期待を込めて宣言した。


 ◇


 翌朝、俺たちは宝珠の欠片を見つけたダンジョンに移動していた。ヒカリゴケの淡い光のおかげで、真っ暗で何も見えないということもない。お嬢が唱えた魔法の灯りで周囲はさらに明るくなった。ヤフコイヌが罠を警戒しながら奥へ進んでいき、そのあとを慎重について行く。マッピングは俺がする。


 世界樹ラシキルとは、このルビリシア大陸に遥か昔から言い伝えられている伝説の大樹だ。年月をかけて宝珠の魔力の純度があがっていくと言われている。それに耐えられなかった宝珠は樹から自然に落ちて、蓄えた魔力で大地を浄化すると言う話だ。


「なぁ、ダントリト。どこでその欠片を拾ったんだ?」

 とドルガトンは聞いてくる。 

「前回の探索中にたどり着いたモンスターファームの中にあったんだよ。見つけたときは土まみれでよく分からなかったんだが、宿に戻ってしっかり洗ってみたら宝珠じゃねぇか? って感じでな」


 話していたら

「前方からミノタウロス5体が来やすよ」

 と、前方を警戒していたヤフコイヌからの報告だ。


「いくぞ!」と自らの手を叩き、問答無用でアイスランスをぶち込んだ。

「手加減はしてくださいよい。ダンジョンが崩れかねないんでやすから」

「当たり前だ。ダンジョンが崩壊したら世界樹ラシキルもなくなっちまうからな!」

 と言って、俺は敵に斬りかかる。


 ミノタウロスは力任せにドルガトンを棍棒で攻撃して、動きが止まったところを俺とヤフコイヌが倒していく。ダメージを受けたドルガトンをお嬢が回復する。いつも通りの戦法だ。2体をあっという間に蹴散らした。


 ミノタウロスが棍棒を振り回すのをみて、ヤフコイヌは近寄り瞬時に棍棒自体をミノタウロスから盗んでみせる。

「盗むのはあっしの特技でしてね」

「武器のないミノタウロスは後回しだ! 他をつぶせ!」


 俺の指示通り敵を次々と倒していく。そして三分後には五体のミノタウロスを討伐し終えた。勢いにのる俺たちは現れるモンスターをなぎ倒し奥へどんどん進んでいった。


 そして中層のモンスターファームへ進んだ。ここでもし仮に敵に見つかったら全滅してもおかしくない。

「宝珠の欠片を見つけたのはここだ」

 と地面を指さす。水が流れているのに樹木どころか草すら1本も生えていない。


「ここじゃないんでやすかねぇ?」

「魔力が濃い階層にあるんじゃないか、とは俺も思うんだけどな」

 宝珠が1個あれば死ぬまで豪遊できると言われている。


 遠くを見つめていたドルガトンは

「これだけの数の敵に一斉に襲われたらマズいな」

 と言いだした。

「あの、光ってるのってなんだろう?」

 と、ドルガトンと同じ方向を見ていたお嬢が首を傾げる。ヤフコイヌが

「ちょっと見てきやすよい」

 といって斥候役を買ってでてくれたので任せた。


 ヤフコイヌが敵に見つかるなら、誰がやってもダメだろう。その時は全力で戦うしかない。と考えていたらヤフコイヌが無事に戻ってきた。


「これがありやしたぜ」

 それは一枚の光る葉っぱだった。みんなが息をのむ。

「噂に聞いていた光る葉だ……。世界樹ラシキルは存在する、間違いない!」

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