いやぁあああ! せっかく記憶から消してたのに!

 私たちは屋内アスレチック場から逃げるように近くの公園に来ていた。あのとき、どういう状況だったのかイマイチ把握できていなかった私だったけど――


「――」


 絶句。まさか私と花香は仲良くスカートが捲れて、ふたりの身体で挟んでたとか……そりゃ私のパンツまで見えるに決まってる。いくら花香の陰だと言っても丸見えだ……想像するだけで顔に熱が戻ってくる。


 花香は更に悲惨だった。私に引っ張られた際に足を滑らせたらしい。それも左右に。その拍子に、パンツがお尻に食い込んだとか。要するに半ケツ披露だった訳だ。


「……どんまい」


「りんごだってM字開脚みたいな感じだったから……ご愁傷さま」


「いやぁあああ!?」


 私もさ……反射的に膝を曲げてたみたいでね? 花香の広がっていく脚に引っかかって、強制開脚だったんだって。


「……今回のことは忘れましょ」


「賛成」


 さっさと記憶から消すべき。


「花香、別の話題が欲しい」


「自分で考えなさいよ……」


 と言いつつ考えてくれる花香が好きだよ?


「そうね……あ、シャンプー変えた?」


 確かにリンゴの匂いがするシャンプーの試供品を貰ったから昨日使ってみたけど……。


「……キモ」


「さっき密着したときに香ってきたのよ。りんごのリンゴの香りが」


「その言い方って下ネタにしか聞こえないんだけど」


「りんごって頭ピンクよね」


「花香にだけは言われたくない!」


「その通り脳内ピンクだけど?」


 いきなり花香の顔が近づいてきたと思ったら――


「んっ!? ……ふ……ぅ、ふぁ……ん、ちゅっ」


 ――唇が重なってきた。驚いたのは一瞬だけ。いつもみたいに花香に任せて好きにさせる。数度、啄まられ離れていく。求めた側に身を任せるのが私たち流だった。


「――問題ある?」


 十数秒して離れていく唇をつい目で追ってしまう。


「……問題ないかも、私も同類だから」


 お互いにボールプールとは別の理由で頬を染めながら見つめ合う。


 勝負して、仲良くパンツを晒して、キスをして、今日のデートは終わるのだった。

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りんごと花香の屋内アスレチックデート 綾乃姫音真 @ayanohime

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