花香……覚悟してね。大丈夫、仲良くパンツを晒そうよ
「りんごちゃん? 不穏なことを考えてない?」
「気のせい。私のことを信じてくれないの?」
いや、自分でもわかってるよ? 白々しいって。
「信じてるからこそよ……あんた、開き直ってとんでもない行動に出るときあるじゃない?」
あからさまに警戒した様子の花香が睨んでくる。流石によくわかってる。
「花香の勘違いだと思うよ」
「絶対に嘘! あと近づかないで」
……2歩しか進めなかった。さてどうしよう……なんて思っていたところでボールが飛んでくる。真っ直ぐ、顔面に。しかも、速い! 完全に手加減が消えていた。あんなの当たりたくないよ!? 絶対に痛いもん! 反射的に頭を下げたところで――
「きゃっ!?」
――右足が滑った。そのままバランスを崩して後ろに傾いていくのがわかる。咄嗟に手を着こうとしてしまったけど、それが更に悪い方向に働いてしまう。
勢いが中途半端に弱まって、お尻がボールに埋まらず残ってしまった。当然スカートを気にしている余裕があるハズもなく。
「おー。パンモロ」
慌ててスカートの裾を直すけど……うぅ……モロに見られた……尻もちをついた直後に転がってきたボールが隠してくれたから、角度的にも花香以外には見られてないよね?
「りんごちゃんにしては珍しいくらい薄いピンク。他に持ってるピンクはもう少し濃いから新鮮かも。ワンポイントのリボンの真ん中がリンゴなのは自己紹介?」
「~~っ!? わ、わざわざ言わなくてもいいじゃん!」
花香の言葉で、ボールプールの外を歩いていた数人の視線が私に突き刺さる。最悪!
「おっと、危ない」
立ち上がってボールを全力で投げるけど、手で防がれてしまった。避けようとしなかったのは、恐らく私が滑ったのを見たからだよね?
「花香……覚悟してね。大丈夫、仲良くパンツを晒そうよ」
もう意地でも花香も同じ目に遭わせてあげるんだから。もつれるようにして押し倒すのが理想かな。私が下になれば埋もれて外から見られないはず。重なれずに隣り合って倒れると痛み分けだけど……この際、死なば諸共。
ただ、失敗して私が上になっちゃうと悲惨なことになってしまうからそれだけは避けないと。
「…………」
「花香、逃げるの?」
静かにボールプールの出口に向かおうとしていた花香が動きを止める。ズルい言い方してるよなぁ……私。負けず嫌いの花香が乗ってこないはずがないってわかってるのに。サンドバッグの通路で私が勝ってるから尚更だ。
「……いいわ。今度は周りに見られても知らないから」
悲しいことに、見られる恥ずかしさよりも花香に対する怒りのほうが大きい。
「花香こそ」
「あ……確かにクラスで晒しまくってる痴女のりんごちゃんと違って、あたしは最悪泣いちゃうかも」
よく言うよ……。
「花香がスカート捲ってくるからじゃん! 私が変態みたいな――」
「――隙あり!」
「――んな!?」
花香がいきなり前に出てきたせいで反応ができなかった。
「はい、勝負あり」
花香が体当たりするようにぶつかってくる。私は衝撃に耐えられず、体勢を崩したところでまた足を滑らせた。しかも花香はバランスを崩していない。
「このっ」
せめて巻き込まないと! その一心で手を伸ばした先には、花香の手首があった。
「な!? こういうときだけ反応良いんだから!」
私に覆いかぶさるように倒れてくる花香。ボールがクッションになり痛みはなかった。ただ、一瞬とはいえ、花香の体重を受けて押し潰された胸が苦しい。すぐに花香が手をついて体重をかからないようにしてくれて助かった。
「えへへ、花香のスカート大丈夫?」
「……馬鹿、自分の心配しなさいよ」
「私は花香の下だから陰で見えないと思うよ?」
「……はぁ……だといいわね」
「え?」
呆れた口調に、つい目の前にある花香の顔を見てしまう。真っ赤になってるから、彼女のスカートは想像通りなんだと思う。しかも直そうにも、両手は私に体重が掛かるのを避けるためにボールプールの中についたままだ。こういうとこは優しいよね……。
優しさと同時に、彼女の柔らかさと匂いを意識してしまう……もうちょっとだけこのまま――
「あのお姉ちゃんたちパンツ丸見え! ピンクと水色!」
――やっぱなし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます