僕は超能力を持っている。
僕は超能力を持っている。
しかしこれは”借り物”で、今夜には没収されてしまう。
「とにかく悪用されてはならない。そこで君だ。君はいい人だ。ゴミを拾う、トイレのスリッパを整える、お年寄りに席を譲る……。それを見て選出した」
僕に超能力を与えた白衣の人はそう言っていた。
つまり、最近の僕は”いい人”ではないと判断されたというわけか。
どうしようかと悩みながら歩いていると、いつの間にか橋の上にいた。現在ここを渡っているのは、僕と、数メートル先を歩く親子のみ。若い母親が、一歳児ほどの女児を抱っこしつつベビーカーを押している。
お。
できるだけ自然に、超能力を使って母の胸元から女児を引き剥がす。不可視の糸に釣られて小さな身体が錆びれた欄干を越えていく。そして悲鳴を上げた母の手を置き去りに、憐れな女児は宙へ投げ出された。
「危ないッ!」そのタイミングに合わせて僕は叫んだ。地面を蹴って駆け出す。右手を突き出して超能力の使用をアピールする。慌てたそぶりで欄干から身を乗り出す。
ピタッと女児の落下は止まった。やがて甲高い泣き声と、感謝の言葉が耳を騒がせた。
僕は延長を確信した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます