めがっさみじか小説

2023年11月21日は75歳の誕生日でした。

　2023年11月21日は75歳の誕生日でした。

　私はお祝いにピザを3枚頼みました。

「だけどコーラがない」

　孫がそう言いました。彼は今年から小学校に入りました。飲めるようになったばかりの炭酸飲料が愛しくて仕方ないようで、しかし、1日1缶だけと母親から厳しく躾けられています。

　息子夫婦はピザの切り方で喧嘩していました。

　だから私はこっそりと家を出て、近くの自動販売機へ向かうことにしたのです。

　布の財布を握って夜道を歩く。

　すると自動販売機の前に、何やら大きな人影があることに気がつきました。

　近づくと、白々と照らされたそれは、フラダンサーの人形であると分かりました。陶器のような硬い質感の上に笑顔とレイが描かれています。足がバネになっていて、左右に揺れていました──ふらふらと。

　私はさらに歩いた先にある別の自動販売機へ行き、喧嘩から逃げた自分を恥じつつ、がこん、と買いました。

　そして家へ戻るとき……どういうわけかフラダンサーはふらふら揺れ続けていました。

　ふらふら。　

　私は気がつきました。

　──取り出し口の奥で、コーラが1缶詰まっているのです。

「取れないの？」

　私は腰を屈め、苦労してそれを引っ張り出すと、フラダンサーの頭の上に乗せました。

　ぴたり。