一足先にトレイを受け取った私は、友人に合図してから二階へと上った。


 一足先にトレイを受け取った私は、友人に合図してから二階へと上った。

 木製の高いテーブルが並んでいる。席数は多いものの、やはり日曜日、ほとんど埋まっていた。

 走り回る子供や突き出た老人の背を避けながら、暇そうな椅子を探し回った。皿の上でホットサンドが冷めていく。ジンジャーエールが薄れていく。

 ──テラスへと続くガラス戸があった。

 淡い期待から肘で押して、外へ出る。

 風。そして、公園の景色が広がった。平坦な芝生が海のようにどこまでも続く。午後の陽を浴びて燦々と立つ。木々の影が人々を乗せて揺れている。

 テラスの奥に一つだけ、椅子が黙ってそこにいた。

 光景を我が物とする優越。誘うように笑いかけてきた。

「席あった?」

 友人がドアから顔を出す。

「こっち空いてたよ」

 私は少しがっかりした表情を浮かべながら屋内へ戻った。

 友人は「なんだよ」と頰を膨らませた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る