第13話 いざ開幕、田植え勝負!
一番鳥が鳴り、朝になった——
村人と泥田坊たちが一斉に出てきたのだ。そういえば泥の野郎、朝になっても活発じゃないか。日の出が弱いじゃなかったのかよ。
クロワは準備万全で服装も村人から借りたであろう麦わら帽子と茶色の長ズボンを履いていて村人同様な格好で気合いを入れていた。
いつの間に村人たちと仲良くなっているんだか。恨んでんだか。楽しんでいるのかよく分からないものだ。
フンドシはというと相変わらず仁王立ちのままで立っていた。違い所と言えば頭に白い鉢巻を巻いていた。フンドシも村人たちからもらったのか。
唐突に村長が私に向かって声をかけられた。
「わしはギンジと申します。わしの勝手な提案でこのようなことに巻き込んでしまって。」
「いえいえ、私たちの仲間が勝手に参加したいと言ってきたもんですから、それにこれに懲りて泥田坊たちと仲良く…。」
すると村長は目を血走って。
「それはいかん!奴らに謝ってやるよりかはわしらから田んぼを奪ってやった方がいい。それにわしらにはあの機械があるから勝ったも同然だ。」
「さっき言っていた。あの機械か。」
「お、噂をすれば、あの機械が来た。」
朝日のせいでまぶしくって見にくかったがある影が見えていたのだ。四輪の細いタイヤで走り後ろには田んぼに植える稲がどっさり積んでいる。もう一つの機械は殺気の機械とは重装備で前には無数の刃がついている。田植え勝負とは命がけなのかと私は思った。
二つの機械には運転していたのは最初に田んぼに入っていた牛と馬の一頭ずつがいたのだ。えっ。
「あいつらが運転するんですか。」
「わしらでは腰と肩が上がらなくて、それにわしらではあの機械操れないし。牛や馬たちには仕事を奪ってかわいそうだと思ったからあの機械の運転を任せたものだから。」
「それであんなにうまくなっているのかよ。」
だから田んぼの一坪に牛や馬一頭ずついるわけなのかよ。そりゃ泥田坊が怒るわけだ。
全員がそろって村長ギンジがみんなの前まで来て挨拶を始めた。
「ではルールを説明する、まずわしらと、泥野郎、そこの旅人のタームとして今いる田んぼの列を植える、超えた場合は、ほかの田んぼを使って構わぬ。それを多くの米ができたものが勝者とする。」
「望むところ、あんなボロ機械に負けてたまるか。」
「わたしだって米をたらふく食うため、もらうために負けてたまるか。」
泥田坊とクロワは目的は違えどお互い目が燃えていたのだ。私はどっちでもいいが。
ギンジは手を上げ大声で言ったのだ。
「これにより第一回、田植え勝負を開始する! 準備はいいか。」
おおー。と皆が一斉に田んぼに入っていったのだ。イヤ、村のジジ、ババたちはお茶を飲みながら田植え勝負を見学していた。
こいつらもう勝ち誇っているのかよ。まぁ、確かに私たちが植えるのに苦戦しているのに、あの機械、もう田植えの一坪が終わってしまってもう一坪に入っていたのだ。手慣れているのがすごいもんだ。
私たちのほうがクロワが稲を丁寧に入れて、一つ一つの稲の隙間もきれいになっていて速かった。目がコメのことしか考えてなくて私を見ていなかった。
だが意外にもフンドシも一つ一つ稲を丁寧に入れていて、クロワ並みに速かったのだ。
「フンドシ速いもんだね。」
「コツさえつかめは誰でもできるものだ!」
誰でもってわけではないでしょ。わたしは思った。
そんな中
「おい、ここを、こうするんだよ!」
泥田坊たちは無造作に稲を入れていた。他にくらべるとへたくそでへなへなになっていたのだ。
他の泥たちも連携ができていなく一坪もできていない。
結果が見えてきたものだな。
開始して二時間ぐらいになったのだろう。私たちはクロワとフンドシのおかげで5坪くらいできていて、あの機械に乗った村人代表の牛は12坪、泥田坊たちはようやく二坪まできたのだ。
「来れて勝負があったものだな、おい、泥野郎降参するなら今のうちだぞ。」
村人たちが笑いながら言って泥田坊の一人が村人に向かって反論したのだ。
「まだ終わってねーよ。秋になって稲刈りをして米にしたときこそ勝ちだろうが。」
「そうよ、稲を植えることだけじゃ勝負にならない。お米を作ってこそ権利がもらえるんだよ。」
それを聞いたクロワが泥田坊の隣まで来て村人に向かって一緒に反論し始めたのだ。
まったく何言っているんだよ。とふとあることでクロワに聞いたのだ。
「え、それじゃ、この村に半年以上いなきゃならないってわけなの。それはダメだよ。私たち、魔王やほかの村の魔物たちを倒さなきゃならないだよ。」
「ぐっ…。」
クロワは私の意見に反論できずだんまりして、思い出したか私に向かって言った。
「だったら私はここに残るわ!これで文句ないでしょ」
クロワは地面に座って微動だに動かなくなった。こっちも頑固だ。
私たちとのやり取りを泥田坊が割って入ってきた。
「大丈夫だす。私たちの先生を呼んで、今日早く、稲刈りできるようにしてくれますから。」
せんせい? 私は嫌な予感を察した。
「せんせいー。ひでり神先生ー。おねげーします。」
泥田坊は大声で呼んだのだ。なにやら音がしてきた。
その方向に振り向くと何やら影が見えてきたのだ。
空に浮かぶ謎の機械が突如として出てきた。私たちと村人は驚愕したのだった。
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その機械の中———。
「そろそろ俺の出番でわけだな。この魔王の四天王の一人、ひでり神がこの村を占領してがっぽり稼がせてもらうぞ。」
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