第98話 顔の一部ですもの

 忙しなく室内を見ているセグさんに座ってもらい、お茶の用意をした。

 そう、お茶だ。酒ではない。


 これからまだ真面目な話があるからな。酒など飲んでウッカリ余計な話を俺がポロリしてしまったら目も当てられない。


 アールグレイが飲みたくて等価交換した時に、フォ◯ョン様のお紅茶が出て来た。今日はこの茶葉を使おう。


 アールグレイの香り付けで使用されてるベルガモット。実はリキュールもあるんだな。

 本来ならそちらをチョイスしたかったが、まだ日も高い。ハイボールに入れるとお洒落な感じを演出出来るし、バニラアイスにチョイ掛けしても美味いんだけどな……。ダメダメ、今はお茶だ。


「セグさんお茶をどうぞ〜」

「おお、ありがとう。……これは紅茶か?しかも良い香りがするな」


 お茶請け何にしよう。なんちゃってフロランタンでいいか。

 はいはい、ピー助も食べたいのね。

 あ!こら!!これはメガネの硝子だから危ないぞ!こっちに寄越しなさい!


「……………ボイド。いい加減お前もこっち来て座れ。紅茶が美味いぞ?」

「……………………………………………」


 未だにorz状態で固まってるメガネ。そりゃそうだよ……メガネは顔の一部だもんな。それが粉々だよ。見るも無惨に砕け散って。


「……さっきも謝ったろ?街に帰ってから弁償する。だから今は席に着いて一緒に話を聞いてくれ」


 セグさんは謝ってたけど、メガネのフリーズは解除出来なかった。余程ショックだったんだろうけど、そろそろ回復してくれないかな?


 等価交換でメガネっていくらするんだろう?ん〜〜〜……ピンキリだな。メガネって買った事が無いから相場が今ひとつ分からないんだよね。ゴキ卵ひとつ分もしないし、ここは賄賂として贈っておくか。


「メガ………ボイドさん、良かったらこのメガネを使って下さい」

「…………?」


 俺は等価交換した新しいメガネをメガネに掛けてやった。出来れば次はメガネっ娘に掛けてあげたい。男じゃ全く萌えん。


「………………み………」

「「み??」」


 やっと顔を上げたメガネは、その目を見開いてワナワナと震えていた。まるでヤバい薬でもやってるみたいだ。

 見開くと結構大きな目をしている。充血具合もよく分かった。


 でもそろそろ瞬きしろよ……乾燥するぞ?


「見える!!!良く見えるんだ!!!何だこのメガネは?!」

「そうですか、それは良かったですね。じゃあ、メガ……ネを掛けた所で、こちらにお掛け下さい」


 激しく興奮したメガネを宥め着席させる。セグさんにも『見える!見える!』とうざ絡みしていたが無視してお茶の用意をした。


 メガネの硝子が割れたせいで全然話が進まないんだけど……?

 もう勝手に話をするぞ?!




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