第97話 説明会会場(大介)へご招待

 組合の出入り口でセグさんを待っていると、バタバタと複数の足音が近づいて来た。


「カイ、待たせてすまん!コイツも一緒にいいか?組合長に報告するには、ボイドにも事情を把握して貰ってた方が話が早いからさ」

「ええ、大丈夫ですよ」


 メガネも一緒か。セグさんに引っ張られて慌てて来たらしく、メガネがずれてる。いつものシュッとした風貌が崩れていた。

 ああ……メガネのメガネたるアイデンティティが……。


「………はぁはぁ、セグ!俺は!動くのが!嫌いなんだ!街の外には!お前1人で行け!!」

「いや、お前どれだけ動きたく無いんだよ?一緒に探索してた時は動いてただろ?どうしてそうなった?」


 メガネは己のアイデンティティをしっかりと掛け直し、息を整えると、いつものメガネに戻った。


「俺は!出来るだけ動かないで済む様に努力して今の地位に就いたんだ!仕事はほぼ組合の中!遠方に移動を必要とする時は必ず馬車で!これが俺の生活の大原則だ!」

「………お前。今度、剣の稽古付けてやる。その軟弱な心身を叩き直す!」


 うわぁ〜セグさんの稽古かよ……。

 ここまで来ただけで息を切らせるんだぞ?そんなメガネが稽古を受けたら最悪死ぬかも…。その時は俺がメガネを拾ってやるからな!


 その後も、諦めずにメガネが虚しい抗議をセグさんにしていたけど、結局、腕力では敵わない。そのまま街の外までメガネは引き摺られていった。

 しかも、門の近くではセグさんに『おんぶしろ!』と叫んでた。良い子は真似をしないで欲しい。こんな大人にはなっちゃいけん!


「………この辺で良いかな。」


 街から少し離れたいつもの森に3人連れ立って到着。因みに、メガネは地面で伸びてピク付いている。


「……カイ、異文化人の方はどこだ?ここで待ち合わせをしてるのか??」


 辺りをキョロキョロと見回し、誰か居ないかセグさんは探っていた。

 ふふふ………異文化人。それはワイやで!


「セグさん“百聞は一見にしかず”と言います。ここは聞くより自分の目で確かめて下さい。『大介』カモン!」


 俺は次元扉『大介』を目の前に出した。


 セグさんはまだ『大介』が見えない様だ。


 俺はいつも通り、ドアを開けて中に入って行く。するとセグさん達には俺も見えなくなる。


 途端に騒ぎ出すセグさんと、再起動したが、まだ座り込んでいるメガネ。このまま暫く放置したい欲求を抑え込み、セグさん達を招く為、ドアから出て姿が見える様に立った。


「……セグさん、メガ………ボイドさん、どうぞ入って下さい」

「カイ?!おま……今どこから?!」


 ハイハイ、説明は中でしますから入った入った!


 そろそろと様子を伺いつつ慎重にセグさんが入室。そして中の光景に驚き、引き摺って来たメガネを落とした。


 直後、硝子の割れる嫌な音が室内に響く。


 俺は知らないよ!

 弁償はセグさんにしてもらって!





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