第94話 くいだおれ
「「「っっっらっしゃい!!!」」」
「4人様お越しでーす!」
「「「ようこそお越し下さいましたぁ!」」」
男性店員の野太い掛け声で向かえられると、すぐに可愛いウエイトレスさんが俺たちを席へと案内してくれた。
ここはセディールが来たがった『くいだおれ』と言う店だ。もちろん俺は初来店。なんだか体育会系のノリって、文系?(帰宅部)の俺には多少のアレルギー反応を感じる勢いなんだよね。
「カイ、この店、飯もつまみも美味いからな!とりあえず『今日のオススメ』と『新商品』を頼んでもいいか?」
「ああ、セディールに任せるよ。………因みに量も多いのか?」
「うん。セディールの店の次に良い盛りだね。調子乗って注文し過ぎると食べ切れないよ?」
ソルスから注文時の注意が即レスされた。そうか……『まんぷく亭』に続く盛りの良さとは。やっぱりこの街は、ダンジョン産の食料が豊富だからこう言う店が立ち行くんだろうな。
セディールが注文を頼むと、ものの5分と掛からずに、可愛いウエイトレスさんが片手で軽々と熱した鉄板に乗った焼き物を運んで来てくれた。いや……その鉄板マウンテン持ったら、俺は手首痛めそう……。
「お待たせいたしました〜!『本日のオススメ』クレセントボアの焼肉盛りです!」
「わぁ!今日も美味そうだな!」「クレセントボア久しぶりだな!」「食べよ!食べよ!!」
「…………重っ!!!」
可愛いウエイトレスさんが置いた鉄板焼肉盛りを試しに持ち上げてみたら、超重かった!!俺、片手で持てないよ!
これはきっとあれだ。ドイツでビールを運ぶお姉さん達がなみなみとビールの入った特大ジョッキを片手で何個も持って、平然としているのと同じだ!あれって何かしらの技術で持ってるんだよね?!決して上腕二頭筋が物を申すカチカチ系の筋肉のせいじゃないよね?!
俺の困惑を他所に、3人はクレセントボアの焼肉を皿に取って既に食い始めていた。
あれ?お酒は??乾杯しないの?!
とりあえず俺も食うか……ん?ピー助も食いたいのか?じゃあ俺の取り皿から摘むんだぞ?
「お待たせしました〜!こちら新商品の『サワサーモンのフリット』でーす!」
メ……メガ盛りフリット……………。幸いディップが3種付いていた。味変しながらお召し上がり下さい的なやつ。
「ん!美味しい!!」
「そうだな……」
ただこのフリット、少しもっさりしてカリッとフワッと感が少ない。確か生地にビールとかメレンゲとかベーキングパウダー入れたら良かったはずだ。これは後でセディールに作り方を教えて、より美味いフリットを作ってもらおう。
「そうだ、カイ。今日はピー助の飛行訓練どうだった?だいぶ上手くなったんじゃない?」
「あ〜〜〜…実はセグさんに捕まって出来なかっんだよ。ドメンタに行く途中でさ……」
盗賊に遭遇した報告で、ほぼ1日拘束されてた事を小声で話した。
「うわ〜…カイって本当にトラブルの引きが良いな?」
「そんな事ない!」
「でもドメンタに行く途中で1回、ダンジョン中でアレと遭遇してもう1回だろ?多いと思うぞ?」
「…………実はダンジョンの中で、強盗紛いの探索者にも絡まれた……」
「マジか?!大丈夫……だったからここに居るのか。無事で良かったな!」
俺もそう思う。もう少し平穏な生活を送るには、街から出ない方がいいのか?でもそれは違うよな……15歳からそんなじゃ枯れ過ぎだ。
まあ、自分のペースで気ままに行くしか無いよな。とりあえずは、仕切り直しでドメンタのダンジョン潜って寒冷装備を整えたら、また魔導ダンジョンに行こう。6階層で氷と美味しい水、それに魚を手に入れるぞ!
その後もセディールが食いたい物をどんどん頼んで、4人揃って文字通り食い倒れた。
帰りの道は腹がキツくて、真っ直ぐ立てなかった……。前世・今世合わせてもこれは初めての体験だった。
そんな『くいだおれ』では、動けなくなった客の為にお休み処を用意し、胃薬まで出してくれるそうだ。
意味が分からないサービスだ。
それよりこの店には別の問題があると思う。食い物とつまみがあるのに、なんで酒を置いてないんだよ!おかしいだろ?!
飲み物を腹に入れるなら飯を食えって事なのか?!酒には食欲増進の効果もあるんだぞ!
胃薬より酒を用意して欲しい!頼むよ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます