第91話 結果報告 ところによりほぼ説教

 探索者組合はコンビニみたいにいつでも開いている。


 職員は交代で勤務しているけど、俺が用のあるメガネは役職付きらしいし、まだ出勤してないだろうな……と、思いつつも受付嬢に在籍確認をしてみた。



「ボイド副組合長なら在籍されていますよ。」

「え…?もう組合に居るんですか?」

「まあ、大きな声では言えませんが、どうやら昨日は帰られていない様ですね……。お時間が取れるか聞いてみましょうか?」

「………はい。可能であればお願いします。無理なら日を改めて伺います。」



 アウチ!これ、俺の報告のせいで帰れなかったパターンの気がする。


 差し入れでも渡すか?何かあるかな〜…俺なら仕事で疲れた時はエナドリか甘い物だけど。んで、次の日が休みなら酒だな。



「カイさん、お待たせしました。ボイド副組合長がお会いになるそうです。どうぞこちらへ、ご案内します」

「ありがとうございます」



 お、会ってくれるのか。向こうも俺が来た用件が分かってるだろうしな。


 案内された部屋にはソファに座ったメガネがおり、メガネを取ってその目頭を指で揉んでいる最中だった。


 大分お疲れのご様子で………。



「失礼しま〜〜…す。」

「…ああ。入ってそこに掛けてくれ。」



 メガネを掛け直したメガネ……ボイドがソファで居住いを正したので、その向かい側に俺も腰掛ける。



「お疲れ様です……。」

「ああ、お陰様でな。」



 やっぱりそうですよね〜!知らなかったとは言え、すいませんっした!どうぞこちらをお納め下さいメガネ様!



「…ん?これは何だ??」

「俺が作った甘味です。疲労回復にどうぞ。嫌いじゃ無かったら、ですが。」



 ナッツ類を沢山ダンジョンで手に入れた時に、カロリーバーみたいな物が作れないかな…と思って作ったお菓子です。


 出来上がりは、どちらかと言えばフロランタンになっちゃったけど、色々な種類のナッツで作ったんだ。洋酒で漬け込んだドライフルーツ入りで3人組にも高評価を頂いた一品です。


 メガネは甘い物がイケる口らしく、早速一つ手に取り口にした。お茶がいるか?いるよな?


 こっちの店で購入した酒甕にストックしてあったアイスティー(美味しい氷入り)を柄杓でカップに注いでメガネに差し出す。


 フレーバーで、お話聞きたい下心も入ってます。



「気が利くな、ありがとう。………美味い…これは紅茶か?こんな高級な物をどうして……しかもなんで酒甕に入れてるんだ?」

「え?高級??……あ〜…これはですね……ドメンタへの道すがら出会った商人さん(架空)と仲良くなった時にお裾分けで頂きました。高級品だったんですか……知りませんでした。容れ物は、冷やすのに丁度良いと思ったんで使ってます…はい。」



 だって、普通のティーパックの紅茶だよ?!


 異世界には東インド会社がまだ貿易に来てないのか?



「………無知故なのか?………まあいい。それで、お前は昨日の件で話を聞きにきたのか?」

「はい。それと黒金剛石ブラックダイヤモンドの小さい物をお見せしてなかったなと思い出したので………これです。」



 既に見せていた大きな黒金剛石ブラックダイヤモンドを一つと小さいサイズを複数個、バラリとテーブルの上に置いた。


 メガネは直ぐ様、白い手袋を出すと手に嵌めて、黒金剛石ブラックダイヤモンドを見る。



「………確かに小粒だがこれも同じ黒金剛石ブラックダイヤモンドだな。なる程……お前は意図せずして卵も討伐していた可能性があるな。」

「卵も一緒に?……あ!この小さい黒金剛石ブラックダイヤモンドはもしかして!」

「ああ、卵からのドロップ品だろう。……昨日あれからドメンタの組合と連絡を取った。即座にお前が地図で示したダンジョンの場所を確認しに行って貰ったよ。だが、既存の地図に無かった空洞の発見以外は、何も無かったと返事が来たところだ。」

「良かった……じゃあ、卵は無かったんですね?」



 俺はメガネにそうすっと惚けた返事を返した。この大役…演じきってみせる!今年の異世界アカデミー賞新人賞は俺のもの!



「ああ、何も無かった。道中で他の探索者にも聞き取りをしたが通常の魔物以外の発見、遭遇共に異常は認められなかったが……代わりに3人の探索者が負傷した状態でダンジョン内にいるのが発見された。」

「そうですか……。で?」

「………お前がやったのか?」

「その3人組を見ない事には、何ともはっきりした事は言えませんが、俺を付け回して途中で襲って来たヤツ等ならいましたが……?」



 危ねえ!急な話題の切り替えで、危うく仮面が剥がれてしまう所だった!


 それにしても、この聞き方……。まさかあのハイエナ先輩達、自分の都合良く話して被害者面してんじゃないだろうな?



「それなら何でドメンタの組合に通報しなかった?!」

「え?だって、探索者同士のいざこざは組合不介入って手引き書に書いてありましたよ?」

「不介入であっても、その報告を一切しない馬鹿がいるか!!しかもお前の様な新人が被害を受けた側なら尚更だ!」



 ええ〜?それって言えば介入するって事なのか?意味が分からん!とりあえずは聞かれたらから答えるけどさ…。



「………はぁ。カイいいか?探索者同士の揉め事は確かに組合は不介入だ。だが、その話の内容であれば、どう聞いてもそいつ等はダンジョン内で犯罪行為を働いていた事になる。それを知って放置する組合では無いぞ?お前はまだ成人したばかりの年齢なんだ、少しは頼れ、そして今後は必ずや報告と相談をしろ!分かったか?!」

「……はい(涙目)。その時は……相手が3人もいて……近くには他に探索者もいなかったし…荷物もピー助も取られそうだったから、魔法で追って来れない様に応戦して、そのままダンジョンの奥へ逃げるのが精一杯だったんです。ある程度、時間が経てば諦めていなくなるかと思って…。ダンジョンから出ても、見付かったらまた何かして来そうで怖かった……だからチャスに急いで戻ってしまいました………。」



 渾身の涙目で俯く俺氏。プルプル震えてしまうのは我慢の弊害です。笑わずに演じ切るぞ!



「……ボイド、もうその辺でいいだろ?」

「セグか、戻ったのか?」

「ああ、今さっきな。報告は組合長にしてあるから後で聞いてくれ。そこでコイツカイの事を耳にしてな…。ドメンタに行ったばかりなのに直ぐに戻って来て、何があったかと思えば……本当に騒動の渦中に良くいるヤツだなお前は?」



 俺のせいじゃ無いよ?これはきっと異世界の神様が、大介を健やかに大きく育てる為、仕掛けたサプライズ的な強制イベントなんだ!



「………セグさん。昨日戻りました……。」

「おお、おかえり。不在にしてて悪かったな」

「これ……お土産です。途中で手に入れました。強盗が馬車を襲ってる所に遭遇して、運悪く見付かってしまって……セグさんの教え通り盗賊は倒しましたけど、持って帰るのはこれが精一杯でした。首は無理です首は!」



 倒した盗賊が身に付けていた物を出した。そいつ等、仲間の印なのか同じタグ付きネックレスをしていたから。嫌だったけど首よりはマシだと思い持って帰って来た。首は普通にマジで無理。



「は?!このしるし……ラスタ盗賊団の物か?!」

「何ぃー?!」



 モチツケメガネ。また杵つき芸人さんが憑依しているぞ?


 それからセグさんにもナッツバーを渡して、ドメンタの結果を聞けたから帰ろうとしたけど、何故か帰してもらえず、結局ピー助の飛行訓練も出来ずに組合でその日の夕方を迎えた。


 

 あっれれ〜?おっかしいな〜?





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ギフトをありがとうございます✨




甥っ子が遊びに来ていたので、ゾイドで一緒に戯れていたら、メガネの事を度々表記間違いしている事に気付いた。


ゾイド ✕ → ボイド ◯



今後も間違えそう……

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