第87話 納期とゼルは守ります

「うわぁ……キモぉ………。さすがに怖気が走るレベルの量だよぉぉ………。」

「うわ〜きも〜ぴぉ〜!」



 メガネに聞いた話を確認するべく、ドメンタのダンジョンへ舞い戻って来ました。


 そして、件のゴキルームの天井に、隙間なくヤツ等の卵が張り付いるのが確認出来た。本当にみっちりと付いている。


 あの時は、ドロップ品しか目に入らなかった上に、『転移扉』の設置をしたくてさっさとダンジョンを出てしまったからな……。


 試しに卵へ『腐滅』を当てたら直ぐに潰せたんで、殲滅は容易と判断。


 たださ…ドロップ品がさぁ………孵化前だからか親指サイズの小さい黒金剛石ブラックダイヤモンドでさ……。


 大きくなってから倒したら、ガチで俺の『どこで◯ドア』が作れる稼ぎになったはずなのに!と、ゴキの不快さよりも臍を噛む程の悔しさで胸がいっぱいになった。


 悲しみが止まらないけど、既に組合員の人がここへ向かっているはずだ。


 この悔しさをバネに、時間との勝負に勝ってみせる!


 “ここにゴキの卵は無かった”組合員の人にそう思って帰還して頂ける様、俺頑張るよ!


 それにこれは俺のものだ!黒金剛石ブラックダイヤモンドは誰にも渡さんぞ!(私欲塗れ)



 そこから俺は害虫駆除員の如く、黙々とゴキの卵を潰していった。


 1つ1つ丁寧に、且つ素早く、撃ち漏らす事の無い様、ゴキの卵を潰していった。


 『腐滅』の魔法は消費魔力も多いので、途中エナドリ(魔力回復薬)でチャージし、只管潰していった。久しぶりのエナドリ効く〜!



「はぁ…はぁ……やったぞ!全クリだ!『収集』!よっしゃーー!勝った!俺はやったんだ!納期(?)を死守したぞ!帰って勝利の祝杯を上げようじゃないか!速攻帰還するぞぉ!」

「よっひゃー!ぴぇ!!」



 喜びを噛み締めていると、組合員なのか索敵の範囲に反応が掛かった。


 そして俺は再度、撃ち漏らしが無いか周りを確認し、転移扉でチャスへと帰還した。



「ミッションコンプリート!納期(?)がある仕事も久しぶりだったなー!たまには良いかも?」

「リート!ぴぇ!」



 ソルス達と飲みに行く約束してたから、早く街へ戻ろう!仕事終わりの酒は美味いぞー!


 待ち合わせの場所に着くと、既に3人組が待っていた。飲み会に遅れてしまうなんて!俺としたことが!!



「お待たせ!遅くなってごめんね!」

「カイ!何処に行ってたんだよ?!組合に行ったら帰ったって言われたし、探したんだよ!」

「ごめんよー!セグさんに会えなかったんだけど、代わりにメガネに捕まってさ〜。報告してから野暮用片付けてたの。」

「そうか〜…また何かやったのか?やったんだな?そうなんだろ?」

「え?この短期間で?!今度はいったい何をしでかしたの?ドメンタでもしでかしたの?!」



 君等もたいがい酷いな?!今までも今回のも、全部俺のせいじゃ無いだろが!!



「ちょっと、セディール、スコット止めなよ。カイを責めてもしょうがないんだよ?」



 そうだ!そうだ!!そいつ等にもっと言ってやれソルス!



「僕は一緒にダンジョンを周ってる時に気付いたんだ。カイのトラブル体質は、きっと持って生まれた物なんだって。彼にはどうする事も出来ないんだよ。考えてみて?2人は、ハゲてる人にハゲるな!って無理を言ってる様なものなんだ。好き好んでハゲてる訳じゃないのに、それで本人を責めるのは酷ってものだよ。」

「……あ、そう言う事なのか。良く分かったよ。ごめんなカイ。」

「俺もすまん!ソルスの話でちゃんと理解したし、禿しく同意した!」

「俺はハゲてねぇーー!!!」

「はげ!ぴぇん!」



 セディールとスコットの視線が俺の頭部に集まっていた。


 ソルス!お前はなんて例えを出すんじゃボケ!!要らぬ疑念を増やしやがって!!



「はは!まあまあ、本当の所はカイから話を聞こうよ!飲みながらね!」

「そうだな!どこに行く?」

「俺は飯もちゃんと食える所が良いな!」



 う〜〜ん…。あの話をそこらでペラペラ喋って良いのか…?


 それなら良い機会だ。更に広くなった俺の『大介』様に招待しようか。


 今日は宅飲みで!



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