第82話 虫と鉱石はセットです

 ハイエナ先輩達を置き去りにして、俺はダンジョンの先に進み採掘を続けていた。

 やっぱり異世界でもお金稼ぐのは楽じゃない

ね。


 しかも以前はほぼデスクワークだったのに、今やバリバリの肉体労働者に転身だ。


 まあ、幸い肉体も若返ってるから、3日後に筋肉痛に襲われる現象は無事に回避している。穴掘りの単純作業にも大分慣れて、ちょいちょい出てくる大小様々な鉱石と魔物に一喜一憂しております。



「おっ!デカい紅水晶来た!」

「デカ!ぴぇ!」



 一抱えもありそうな特大の紅水晶ローズクオーツを発掘したぜ!こうやって成果物が得られるとテンション上がるよな!掘り当てた分だけ俺の時給も上がって行くってもんだ。



「ただ、水晶の換金率はそこまで高く無かったんだよ。早く黄金ゴールド来ないかな〜?」



 一応、探索者組合で換金率は確認した。紫水晶アメシストが水晶の中では一番高値が付けられていたよ。でも残念な事に、今の所は等価交換した方が高いんだな。なので、この街の探索者組合には貢献出来そうもない。ごめんね〜。


 取得した紅水晶ローズクオーツをさっさと交換して次に行こう。この紅水晶ローズクオーツも装飾品として人気らしく、組合で換金してもまあまあの値段にはなる。


 こうして出て来た鉱石は、その都度鑑定してから収納・交換している。ただの石ころだと思って鑑定したら蛍石だったり、割った岩の中に水晶群が出て来たりで、俺なんか『鑑定』が無ければ石ころと水晶とダイヤモンドの違いも判らないポンコツだと良く分かった。本当に本当に鑑定さんありがとう!あなた無しではもう生きて行けません!



「まだかな?まだかな〜?黄金の〜鉱脈まだかな〜〜🎵」

「ま〜だ〜ま〜だ〜ぴぃ〜〜🎵」



 そうか〜まだかぁ〜〜〜…。あまり鉱脈探しが続き過ぎると、探索者じゃなくて一攫千金を夢見る開拓者になっちゃいそうだよ。


 だが、それがいい!

 カモーン!ゴールドラーーーッシュ!!

 俺ラッシュ大好き!駆け抜けは禁止よ?


 でももっと効率良い採掘方法は無いのか?若しくは何処にお宝が眠ってるかが分かれば、ピンポイントに掘れるんだけど。



「んん〜〜〜?何だこいつ………。」

「んんん〜〜〜〜なんんんん〜〜〜!ぴぃ!」


 

 掘り進んでいたら、バレーボールサイズのメタリックなだんご虫が出て来た。こいつ……何か抱え込んで丸まってるぞ。



だんご虫キミは、何を持っているのかな〜?怖くないからお兄さんに見せてご覧〜!」

「ごらん!ぴ!」



 だんご虫自体も今までの黒色と違ってメタル色。レアの予感に魅せられる俺!


 直ぐ様、だんご虫をたたっ斬るべく剣を振り下ろした。


 だが、だんご虫は切れる事なく、振り下ろした剣が弾かれ、カンッ!!と硬質な音がダンジョン内に響き渡った。



「………何故……何故?!だんご虫アナタは〜切れてくれないのぉーーー!!??」

「な〜〜ぜ〜〜ぴぃ〜〜?」



 カンッてなんだよ?カンッって!全く傷も付いてないじゃないか!!

 姿からして、ただのだんご虫じゃないとは思ってたけどさ!


 教えて!鑑定さん!!



【鋼虫】 希少種

特徴 とても硬い

行動 仲間を呼ぶ



 硬いのはもう知ってる!!それより、最後の不穏な行動って…………?


 恐る恐るメタルだんご虫を見ると、キシッ…キシッと音を鳴らし、触覚が激しく揺れ動いている。


 そして眼の前の壁内からは、ガツガツザクザクと岩を砕く音が伝わって足元に響いていた。



「ファッ?!だ、大地が怒りに満ちている?!まさか……………◯蟲オウ◯?!」

「オーム?ぴぇ?」



 その音が近付いて来ると、更に激しくメタルだんご虫がキシッキシッと音を鳴らし『俺はココだ!』とでも言うかの如く仲間を呼び続けていた。



「クソっ!ヤメロよ!!仲間を呼ぶんじゃない!こっちはボッチなんだぞ?!」

「ボッチ!ぴ〜〜え〜〜ん!」

「ピー助!黙っらっしゃい!!」

「ぴ〜ぷ〜〜〜…。」



 ピー助の相手より先に、メタルだんご虫を黙らせなければ!


 俺は触覚が蠢く箇所に『腐滅(ピンポン玉)』を発射!続いてメタルだんご虫を丸ごと『水玉』で覆い音漏れ防止をした。


 暫く様子を見ていると、壁内の破砕音が目標を見失った様に分散し、メタルだんご虫は『水玉』の中で徐々に動きを弱めて行った。



「…………よし音が止んだな。セーフ!」

「セーフ!ぴ!」



 良かった……だんご虫の団体様なんか相手に出来るかよ!一息ついてメタルだんご虫を見ると、水玉の中でダランと弛緩し、抱えていた岩を離していた。


 メタルだんご虫コイツも『鋼虫』って名前の通り、倒れた後は鉱物と魔石に変化した。


 そして残った岩の塊を両足で固定してタガネをあてがい、少しずつハンマーで叩く。


 すると、パキッと音を立てて岩が真っ二つに割れ、中から鮮やかな青色の青瑪瑙ブルーアゲートが姿を現した。



「うわぁ……コレ磨かなくてもメッチャ綺麗じゃん!」

「ぴぇ?」

「ん?お前と同じ色の鉱石が出て来たんだよ。これは交換せずに半分取っておくか………。」



 なんか、龍泉洞の地底湖みたいな鉱石だな。青のグラデーションの濃淡も善き哉。


 ホクホクして青瑪瑙ブルーアゲートを鞄に仕舞い、更にダンジョンの先へと進んで行った。



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