第83話 新ルート?

 今いるこのダンジョンは、まるでアリの巣の様な構造をしている。そして現時点では階層守護のボスは確認されていないって聞いた。


 階層に分かれていない代わりに、ダンジョンには縦横無尽に無数の枝道が迷路の様に張り巡らされている。


 そして、何処かにある『鉱石』と『先へと続く道』は、壁を掘らない限り出現しない。ここでは全て採掘して手に入れる必要があった。


 しかし欲望のままに採掘をすると、漏れなく魔物も付いて来るアンハッピーセットが提供される仕組み。良く出来てるね〜。


 その上、ダンジョンに潜る為には、組合で販売されている魔法地図(70万ゼル!)が必須だった。その地図には既存の経路だけでなく、凡その魔物と鉱石の出現情報も示されており、更に魔力を込めれば自分の現在地もちゃんと分かる仕様になっているからだ。


 但し、その地図はまだ未完成で、未到達の場所の情報は組合で買い取ってくれるそう。因みに魔法地図の更新費用は、一回10万ゼルと言う素晴らしきボッタクリ具合である。


 しかも更新は任意なので、ウッカリ更新せずに古い地図を使い続けると、最悪の事態もあり得るから要注意だとよ。


 また、俺の様にこのダンジョンで稼いでやろう!とやって来た新人達は、魔法地図自体が高価で買えない場合がほとんどで、その為ダンジョンの浅い所だけを地道に回って稼ぎ、金が貯まったら地図を購入して先へと進むって話だ。


 そうでなければ、このダンジョンで遭難者が多数出ただろうな。


 しかも、討伐した魔物のドロップに食える物は一切無いと来た。地図の読めない者と食事の配分が出来ない無計画な者は飢死必至。容赦なくてマジで怖い。


 だから、このダンジョンに潜る探索者達は、持って行ける食料の分だけ潜る。


 ま、俺は『大介』があれば住まいに困らないし、魔物のドロップや鉱石さえ入手出来れば食料を等価交換して手に入れられるんで、ノープロブレムですが何か?



「………だけどさ、植物が一切無い上に、疑似太陽も風も無いとやっぱり滅入るんだよな。探索3日目でもう地上が恋しい〜〜。」

「こ〜い〜し〜ピョ!」

「お前は大丈夫なのかよ?ピー助??」

「ぴぃ〜?」



 ………どうやらピー助は鉱石ダンジョンでも特に問題なさそうだな。寒暖差には気を付ける必要があるだろうけどね。


 それに、あれ以後は変なヤツに絡まれる事もなく順調に掘り進めているお陰で、目標額には到達していないがチリツモでゼルも貯まって来た。


 鉱石の交換額もあるが、魔物のドロップも侮れない換金率で嬉しい誤算だ。


 やっぱり、食料がメインで出るダンジョンとは比べられないな。普通の鉱石でこれなら、レア鉱石はいったい何の位になるんだ?!


 俺の皮算用が止まらない!


 仲間を呼ばれるリスクはあるけど、一度だけ遭遇した『鋼虫』のドロップが今の所は一番の高値で交換が出来たからね。



「またメタルだんご虫来ないかな〜?」

「たんこ〜〜ぴぉ?」

「だ・ん・ご、だよ?だ・ん・ご〜〜…8兄弟くらい纏めて来いやー!」

「たーんーご!ぴ!!やーー!!」



 相変わらず濁音が上手く発音出来ないピー助は、訂正したけど踊り出しそうな言い間違いになってた。それにしても語彙が増えるのが早い。たぶん意味は理解してないんだろうけど。


 傍から見たら俺が鉱石掘りながら独り言を言ってる様にしか見えないが、ピー助と会話(?)をしつつ掘っていると、不意に魔導スコップ(魔力を込めると掘る力が増す魔道具 30万ゼル)が空を切った様に抵抗が無くなった。



「へ?」

「へ!ぴぃー!」

「いや、ピー助!静かに!しーーーっ!!」

「しーーーーっ!ぴぇ!!」

 


 うぉぉーーー!!やめてーーー!!!

 何があるか分からないんだから、ちょっと静かにしてぇぇーー!!


 ピー助のくちばしを軽く指で押さえて、再度『しーーっ!』と黙る様に伝えてから、スコップの先に出来た小さな空洞をそっと覗き込んだ。


 ………何かが複数蠢いているね?暗くて中は良く見えない。何だろう??



「(……これ新ルート?!)」

「(ぴぇ?)」



 ピー助はヒソヒソ鳴きを習得した!



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