第81話 ハイエナお断り!

 ニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべながら、ハイエナ探索者達は俺に近付いて来た。古今東西を跨いで、異世界でも悪人面って共通だな。


 念の為に鑑定したけど、俺よりレベルも低いし、魔法も大して育ってない。へなちょこ確定しました。


 でも、避けられそうもないか……。

 ま、それなら今まで遭遇しなかったテンプレの台詞を希望しまーす!


 そう思って出方を見ていると、悪趣味な笑みを絶やさずにジリジリ距離を詰めて来た。



「よお、新人の僕ちゃ〜ん!一人ぼっちじゃ危ないぞぉ〜?優しい先輩がダンジョン探索を教えてやるよ!」

「所持品全部と引き換えにな!」

「「「ギャハハハッーー!!」」」



 うわっ!本当に言われた!!


 こ、これがあのテンプレ…強請集ゆすりたかりなのか!お約束とは言えヤバいな!いざリアルで聞くと笑うタイミングじゃないのに、笑いが込み上げて来る。


 俺は口元をグッと引き締め、口角が上がらない様に必死に自制した。


 そんな俺を見てハイエナ先輩達は、ビビって声も出せない臆病者とでも思ったのか、躊躇い無くドンドン近付いて来る。


 

 3対1なのを良い事に、幼気な15歳からむしる気だ。ボク怖いよ〜。



「おいおい、何か言えよ?怖くて口も利けないのかなぁ?」

「……人の取り零しを狙って楽をしようとする様なせこいヤツ等に教えて貰う事は無いから。他を当たれば?」

「なんだと?!」



 とりあえず、押し売りはノーサンキューの旨を伝え、様子を見るとしますか。念の為、ほぼ熱湯水玉もヤツ等の頭上にスタンバイ。


 だいぶ近付いて来たハイエナ先輩を注視していたら、不意にピー助が起きてしまった!



「……ぴぇ?」

「あ!ピー助!出て来るな!」



 くそ!何てタイミングで起きて来るんだよお前は!


 そしてポーチから顔を出して辺りをキョロキョロと見回し、何の危機感も無くそのまま俺の肩へ飛び移って来た。


 ハイエナ共は、最初ピー助が何か分からず警戒したが、それがおしゃべりインコだと気付くと、更に嫌な笑みを深めていった。



「なんだ驚かすなよ!ただの『おしゃべりインコ』じゃねぇか。……でもあの羽色は珍しい。お前ら、アイツもちゃんと捕まえろよ?」

「ああ!分かってるって!」

「それにしてもあの新人バカだな!何の役にも立たない『おしゃべりインコ』を連れてダンジョンに入るとか笑える!ボッチの僕ちゃんは、仲間が居なくて一人で寂しかったのかなぁ?」

「「「ギャハハハッーー!!!」」」



 おい……お前ら!


 俺はなぁ、異世界に来たばかりだから様子見してるだけなんだよ!勘違いするな!


 それにたとえボッチの自覚があって自虐しても、他人に『ボッチ』だとイジられるのは嫌いだ!しかもアホ面晒して笑いやがって!


 おまけにピー助も捕まえて売り飛ばそうと画策するとは言語道断、遠慮も無用!


 もう、ムカついたから水玉(ほぼ熱湯)落とそう。待ってやる優しさはコイツ等には不要だ。



「おい、大人しく荷物をわた…ギャアー!!」

「あ?!熱っ!!熱い!!」

「うわぁぁぁぁ!!」



 頭から水玉(ほぼ熱湯)を浴びて騒ぎ回るハイエナ先輩達は熱が籠もらない様、着ていた防具や服を慌てて脱ぎ、小さい水玉(1リットル位)を何度も出しては、自分の頭から掛けて身体を冷やしている。


 ええ〜?!コイツ等、回復薬も持って無いのかよ……。


 暫く様子を見ていると、熱で赤かった顔が今度は青白く変わり、一人また一人とその場に膝を付いて苦しそうに喘ぎ始めた。



「………は?しかもあの程度の水玉で魔力枯渇してんの?!うわ〜〜…しょぼ!」



 俺も経験者だから、その状態が魔力枯渇だと直ぐにわかった。魔力枯渇って、貧血みたいに視界が暗くなって立ってられなくなる。


 アイツ等の調子だと、直ぐ復活するには魔力回復薬でも飲まなきゃ無理だなろう。ただ、こんな浅い層では使う機会が無いし、回復薬さえ持って無いなら尚更、望みは無さそうだけどねぇ。



「それじゃ、ハイエナ泥先輩さようなら〜。アリンコには気を付けて!」

「ぐっ……ま、待て!」

「こ…のガキっ!」

「くそっ!絶対殺す!!」



 ………うわ…殺すって…。まあ、やっぱり人の物を盗る様なヤツ等だもんな。他人の命も大して重くないか………。

 街道で遭遇した盗賊共よりかは、まだマシな気がしてたから放置しようと思ってたんだけど。


 それに自分達が結構な火傷を負っても、大人しく引き下がれないなら、引き下がらずを得ない様にするしか無いな。


 じゃあ、引き際の判断も出来ない先輩探索者には、お灸じゃなくて『腐滅』灸をすえます。


 前回の盗賊の時の教訓を活かし、出力を絞って当てるのはビー玉サイズの『腐滅』灸。


 追い駆けられない様に、足の膝やくるぶしを狙って放つ。


 そして靴もズボンも脱いでたから、ちゃんと狙いを外す事なく3人に魔法を当てられた。


 今回は『腐滅』が飛散しない様に、ピンポイントで、且つ直ぐに魔法の腐敗効果が終わる出力に抑えたから大丈夫だよな?



「ぐぁっ!!」

「痛ぇ!な、なんで?!」

「足が……俺の足!!」



 あ、俺に『殺す!』と言って来たヤツには、特別に両膝にお灸をプレゼントしておいたよ。



「じゃあ、今度こそサヨウナラ〜!回復薬を持ってないなら早くダンジョン出た方が良いですよ?」



 その場でのたうち回るハイエナ先輩達を残し、俺はダンジョンの更に奥へと進んで行った。


 アイツ等が無事に地上へ帰れるかは知らんけど、お達者で〜!




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