第80話 巣穴ラッシュ
黒く硬質な魔物達が次々と掘った穴から這い出て来る。それを見て、何度目かになる愚痴をこぼしながら魔法を放った。
「俺がっ、探しているのはっ、お前等の巣じゃねーんだよ!金鉱脈だ!失せろーー!!」
「ギギっ!」
そりゃ魔物出るよね。ダンジョンだもの。
鉱石探しの最中、矢鱈とアリンコやモグラ、ミミズの巣を掘り当ててしまい、まともにお宝がゲット出来ない。
俺のゴールド・ラッシュは何処へ?アリラッシュは要らんのよ。あと、モグラッシュとミミズラッシュもマジでノーサンキューだからね?
「あーもー疲れる!腰が痛い15の俺!」
「アーーモーーツカーーぴぇ!」
「水攻めだ!アリンコ共め!等しく滅せよ!」
「メツ!ぴぃ!」
地上に出て来たアリンコを剣で倒しつつ、巣穴にはしっかり加熱した水玉を落として巣ごと駆除をする。ただ、アリンコ共もダンジョンにいる魔物だ。ここで倒したからと言って殲滅は
出来ない。湧くのを暫くの間、抑えるだけだ。
「強くはないけど、アリンコは数が多くて面倒いんだよ。『収集』」
そして持ってて良かった『収集』魔法。お陰で巣穴の魔石もちゃんと拾える。
お?ついでに鉱石もあったらしい。
『銀(良)』
銀の塊が一緒に採れた。
ここで採れる鉱石は品質がまちまちで、今回の様な『良』と出ることもあれば、『可』の時もあった。まだ手に入らないけど、一番良いのは『優』だろうか?逆に悪いのは『屑』だろう。屑鉄と表示された塊は、石や砂が入った混ざりもんで、素人目にも粗悪なのが分かった。
それでも、交換単価としては以前の食材よりは高い事が多く、その意味では満足してる。その代わり、萌は全く無い。鉄に萌を感じられるなんてドワーフぐらいじゃないのか(イメージ)?
更にここの所、怪しい動きをする探索者達に付き纏われているんだよね。
今も物陰からこっちの様子を伺い、俺が移動した後の採掘箇所を物色中だ。これは
彼奴等は俺が『収集』魔法で魔石やら鉱石をそのまま鞄に入れているのを知らない。それを見て、禄に拾いもせずに採掘場所を離れるアホな新人鴨だと思われていた可能性があった。
だが何度か空振りする内に、勝手に俺へのヘイトを溜め込んだのか、今では親の仇でも見る様な目をして睨んでいる。
そんな事をしている暇があるなら、自分たちで掘れば良いのにバカだね〜。
そしてまた空振り三振の徒労に終わった所で、雁首揃えて騒いでいる。『舐めやがってあのクソガキ!』とか『どうせ大した物は持って無いだろうが、俺達の労働代に持ってる物は全部奪っちまおうぜ』と聞こえてくる。
俺一人程度ならどうとでもなると思って、隠す気が無いんだろう。
本当にここのダンジョンや街は、悪い意味で俺のイメージしてた通りの異世界だよ。物騒で雑然として、盗みも殺しもある無法な世界。
こうして改めて比べてみると、最初に到着した街って、日本人ビギナー向けの優しい所だったんだな。
もう帰りたくなって来たよー。
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