第77話 ぱりピー助

「ぴっぴぇ!ぴぴっぴぇー!メシウマ!イクゼ!ぴぃ〜〜!」

「………………………………………。」

「ヒル〜メシ〜イクゼ!ぴぇ!」

 「あーーー!!もう分かったよ!!飯にすりゃ良いんだろ?!ちょっと大人しく待ってろ!」



 俺が馬車を使わない理由たるピー助は、呑気に俺の肩に乗って飯の催促に忙しい。


 お前も鳥なら少しは飛べ!


  

「アーーーーモウ!メシ!ぴぇぇ!」

「今、用意してるの!少しは黙らっしゃい!」


  

 道中、こんな調子でずーーっとピー助がうるさい。


 何でこんなにテンション上がってるのか教えてくれて。


 街から離れる程に、意味不明なノリノリ爆上げ歌唱を始め、たまに飛んで、しょっちゅう飯の催促。これを繰り返してる。それで疲れると頭の上で寝る。



「……ほら、食ったら少しは静かにしろよ?お前が騒ぐから、余計に魔物が寄って来るんだぞ?」

「……ぴぇー?ネル?」

「そうそう、寝ろ、昼寝しろ。」

「ヒル〜メシ〜ネロ〜ぴぃーーーーーー!!」

「だから!騒ぐなっ!アホーーー!!」

「アホーーぴぇーーーーー!!!」



 グッ!これ俺のせいなのか?!


 あ!騒いだからまた犬っころが来たじゃないか!



「魔弾!」

「ギャウン!!」

「もういっちょ!」

「キャィン!」



 クソ〜〜何度も何度も面倒くさい!街道を歩くつもりだったのにこれじゃ戻るのは無理だ。


 こうも魔物が寄って来てはと他の人や馬車にも迷惑を掛けそうで、今は泣く泣く少し街道を外れて歩いてる。お陰で、魔物との遭遇率が予想外に高かい。


 大して強い魔物じゃないけど、しょっちゅう来るからウザいんだよ!



「ピー助さんや、君がおしゃべりインコなのは十分理解してます。だけどね、ちょっと騒ぎ過ぎだよ?もう少し静かにしようよ?」

「ぴぇ!」

「分かったら大人しくね?」

「ぴぃーーぇーーーーー!!!」

「返事も元気過ぎ!」



 あ〜あ〜〜今度はウサギとスライムが来ちゃった……。この負のループを断ち切りたい。


 次々と倒してそのまま等価交換する。


 ドメンタに着く迄に1万ゼルぐらいにはなるかな……。 


 所々生えてる立木の間を抜け、下草を分け進む。何か気を引く様な物でもあれば良いけど、生憎と遭遇するのはスライム、うさぎ、野犬ばかり。


 次の街まであと半分くらいだが、天気とピー助の調子は上々だ。


 ただ俺は、単調で飽きてきた。生まれてこの方こんなに歩いた事は無いってくらいは歩き続けてるからしょうが無い。


 歩くの大好き!どんどん行こうって、段階はもう過ぎ去ってしまったんだ。


 気分的にはドメンタ行きのバスに乗りたい。


 俺を迎えに来てくれないかな……ネ◯バス。



「ぴ……ぴ………ぴ…………………」

「……やっと寝た。よし、今のうちに進もう!」



 眠ったピー助をポーチに入れ、半分フタをして暗くする。その隙に街道へ進路を戻しつつ全速前進した。





□□□□□□□□





 俺の横をまた1台、馬車が通り過ぎて行く。


 今度は商人の馬車だった様で、荷台を引く馬が重そうにゆっくりとしたペースで横切って行った。



「このノロマ!しっかり進め!!」

「ヒヒンっ!」



 そう言いながら何度も馬の尻を御者が叩いた。おい…叩きすぎだろ?動物虐待反対ー!と心の中で叫んだら、去り際に『邪魔だどけ!馬車にも乗れない貧乏人が!』と捨て台詞を残して行きやがった。


 何だとクソ商人?!馬車に乗るぐらいの金ならあるわ!お前なんか馬に蹴られてケツでも腫らして座れなくなってしまえ!!


 そう詛呪の念を送っておいた。まったく…失礼なヤツだ。あいつの店がドメンタにあっても利用しない様にしよう。


 他の馬車の御者さんなんか、ほぼスルーの人が多かったけど、中には心配して『ボウズ大丈夫か?』って声を掛けてくれた人だっていたのにさ。


 こんな時、せめてチャリ……路面が悪いから無理か?でもワンチャンマウンテンバイクなら悪路も走行出来ないかな?何か徒歩以外の方法があればなぁ。


 転移扉を開放するまでの繋ぎでさ〜。


 色々と考えながら暫く歩いていると、前方に人集りが出来ている。何だろ……魔物でも出たのかな?随分と騒がしいぞ。ピー助が起きちゃうから迂回しようっと。


 再び街道から少し離れて騒がしい一団を横目に歩いていると、野太い悲鳴が聞こえて来た。


 あ、さっきのクソ商人だ。……あれって泥棒?野盗?に襲われてる真っ最中なのか?


 異世界物あるあるのイベントか?!


 でも俺が助ける義理は無いよね?…って言うかもう本人倒されてるっぽいし。


 そう言えば、他の馬車にいた様な護衛があの商人の馬車には付いて無かった。ケチったのかね?その代償が自分の命とか、高く付いたもんだ。


 そのまま通り過ぎようとしたら、野盗らしき奴等に見つかってしまい、こちらを指差して何人か走ってくる。



「もーーーー!こっち来るなよ!大介カモン!」



 次元扉『大介』を出して、サッと中へ入ると扉を閉めた。認識阻害はオンになってるな。


 辿りついた野盗達は、俺を見失いギャアギャア悪態を付きながら探し回っている。


 それにしても全員人相悪いなぁ。俺、今は中坊なんだからそんなにオラオラしないでくれよ。殺る気満々で魔物より怖いぞ?



「おい!さっきのガキはどこ行った?!」

「いません!確かにこの辺を歩いてたのに!」

「探せ!さっきの襲撃を見ていたはずだ!探し出して始末しろ!」

「へい!分かりやした!」



 年嵩の男が手下達に俺を探す様に指示を出して商人の馬車へと戻って行く。



 う〜〜〜〜ん…。コレどうしよう。



 放って置いても大丈夫……じゃないよな。


 遠目だけど顔を見られてたし。今はピー助が寝てるからそこまで目立たないけど、あいつが肩に止まってたら、分かり易い目印を置いてる標的になるだろうなぁ。


 怯えて暮らすのは嫌だけど、マジでどうしよ。






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