第71話 無理はしない
5階層のボス部屋に入ると、ピンクスストライプのハチが10匹と女王ハチらしいデカい個体が1匹、田舎の族の如くブンブンブンと喧しく羽音を鳴らしていた。
それを見て俺は自然と笑みが溢れた。
「ねえ、ソルスさん?これ普通のボスだよね?間違いないよね?ねっ!!」
「あっれ〜〜?そうだよ……普通だ……おかしいな。絶対に変なのが混じったボス戦だろうと思ってたのに…」
よしっ!これで俺への疑いは晴れたな!
そうそうイレギュラーに出て来られたら、たまったもんじゃないよ!一昨日いらっしゃいませだ!
では予定通り、魔法で倒して行きますか!
連射で魔弾を放ちつつ、近づいて来たら牽制代わりに剣を振る。前よりはマシだけど、まだこの長い刃物をブン回すと腰が引けてしまう。
俺は酒瓶より長い物は持ち慣れないんだよ。
この『転生者の剣』は両刃の剣で、柄の部分を含めれば約1mの長さがある。
自爆事故ったら目も当てられない。ソルスとも適切な距離を保ち、ハチを討伐して行った。
「いや〜〜普通のボスって倒すの簡単?」
「まあ、まだ5階層だしね。度々、強いボスが来たら、中には逆に倒されてしまう探索者が出て大変だよ。」
「だよね〜〜。所でソルス、あのデカい女王も魔法で攻撃して良いんだよな?」
「そうだよ。動きが鈍いけど代わりに体力は多いから、少しずつ削って行こう。」
通常のピンクストライプを倒し切り、女王ハチへ攻撃を集中させる。魔弾が当たると『ギュッ』とか『ギギッ』と鳴き、反撃して来ようとするが、ソルスと俺で間隔が開かない様に魔法を続けて放っていたので、手も足も針も?出ない状況に持ち込めた。
「………なあ、ソルス。このデカハチは後どのくらいで倒れると思う?結構な魔法を当ててるとんだけど。俺、まだ大丈夫だけど、このまま行くと魔力量がちょっと心配。」
「見た目が同じだから大丈夫かと思いきや……やっぱりだよ!コイツはカイ仕様のボスだったんだ!!その証拠に何時もなら倒れてもおかしく無いのに、まだピンピンしてる!このボス、体力オバケなんじゃないの?」
何がやっぱりで、何処が俺仕様なんだよ?意味が全く分らないが、どうやら長期戦を覚悟しなきゃならないボスみたいだ。近寄りたくは無いけど、物理攻撃は出来ないのか?
「カイ!ダンジョン入ってからずっと思ってたけど、なんで魔物に『鑑定』使わないのさ!ちょっと見てよ!!」
「あ!忘れてた……。ダンジョンには強い魔物が(魔の森に比べて)居なかったしさ。じゃあ、ちょっと見てみるな『鑑定』!」
ソルスに指摘されて、ハッとした。そう言えば、魔の森を抜けてからは、魔物の鑑定を怠っていたな。
軒並み魔の森よりもスケールダウンした魔物ばかりで、正直、見た目だけで判断してた。
「…………あ、あの……ソルス?」
「なに?どうだったのか早く僕にも鑑定結果を教えてよ!」
「ボス戦って、途中退場出来たっけ?」
「え?!出来ないよ!!何で?そんなにヤバいボスなの?!」
「う、うん。見たらさ、最大体力が99,999あってさ、今は残り92,215なんだよ。まだタップリ残ってるんだ。……どうする?」
「ウソでしょ?!巫山戯てないよね??」
俺の鑑定結果を聞いて青ざめるソルス。
駄目だコレ。ムシャムシャ食われてしまう想像をしてしまった。エマージェンシーですよ、大介さん!
「ソルス!緊急事態に付き、俺のハウスを出す。コレも内緒でお願いします!」
「え?なに、ハウス?良く分らないけど黙ってればいいんだろ?!助かるなら勿論内緒にするよ!」
御座なりにそれだけ聞いて、大介を出すと即座にソルスの腕を取って、その一歩を駆けた。
緊張も重なり2人共息も絶え絶えで、その場に座り込む。まだ9万以上の体力を残したボス女王ハチは、俺達の後を追って大介の前に陣取り、怒ってブンブンいわしてる。
「……………紹介します。これは俺の家で名前が『大介』です。仲良くしてね?因みに認識障害付きのセイフティエリアになってるよ。」
「……もう、カイには言いたい事が沢山あるけど、セイフティエリアの『大介』様にはお世話になります。真面目に最高神と同じ位に拝み倒したい。マジで神……助かったよ……。」
大介の床に頭を付けて拝む様にソルスがつぶやいた。俺にも五体投地礼して良いんだぜ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます