第61話 剣の稽古(初心者用)
一心不乱に木刀を振るキッズ(俺も見た目は同年代)に混じり、汗を滲ませ頑張って木刀を振りかぶっていた。
中には実戦さながらの打ち合いをしているキッズもいる。みんな元気だね?そろそろ休憩にしない?
「おら!カイ!!しっかり腰を入れて振らんかい!それでは剣の道を極められんぞ!!」
「押忍!!」
初心者講習って聞いて気軽に来たのに、キャラが変わったセグ教官に俺っち若干引き気味。
聞いてないよ?こんな熱血指導するって。どこの世界にも松◯修造みたいな人って存在するんだな〜マジ不思議〜。
でもどうせ異世界なんだから、ここはビキニアーマー着たお姉さんに熱血指導をして貰いたかったよ。教官チェンジは出来ませんか?出来れば指名で……そうですか……出来ないんですか………分かりました、残念です。
「……カイは追加で素振り100回な!」
「何でだよ!男の子の切ない願望をちょっと言っただけじゃないか!横暴だぞ!職権乱用すんな鬼教官!」
俺はこの日初めて、二の腕にも『産まれたての子鹿現象』が起こると知った。
15歳ってこんなに疲れるもんだったっけ?
超疲れた!今日は、もう
「フフッ、お疲れ様でした!」
「……ほんにお疲れっしたぁ〜…え…誰?!」
普段はしない過酷な運動に疲れて寝転び休んでいたら、急に声をかけられた。閉じていた目を開くと、
え……俺の青春15切符が、やっと目的地に辿り着いたのか?!まるで
「兄さんに聞いていた通りですね。始めましてカイさん、私リエラって言います。組合で働いているんで、これからも宜しくお願いしますね?」
「……リエラ?……リエラ……あっ!ソルスの妹さんか?!」
そしてスコットの彼女だ。途端に『スンッ』とテンションが急降下したのが自分でも良く分かった。
どうやら俺の列車は、まだ当てもなく彷徨っている様だ。おかしいな……9◯9だってちゃんと銀河系でも駅があったのに。メ◯テルと出会っているのに。俺にはまだ来ないのか?!
それにしてもソルスに顔がそっくりだ。知らなかったよ、組合で働いてたんだ。
「初めて挨拶すると、皆さん同じ顔に驚かれるんですよ。私と兄は双子なんです。」
「なるほど……。」
顔は同じなのに、ちゃんと男女別だと認識出来るな。ただ、妹ちゃんの方が、仕事柄かしっかりとしてる。
「所で、ソルスは俺の何を喋ってくれちゃったのかな?」
「私が聞いたんですよ。カイさんに燻製の新しい可能性を教えて貰った!って、兄が話していたんです。だから、今度挨拶したいからどんな人か教えてって。そうしたら『カイには青い目印がくっ付いてるから直ぐに分かるよ!』って。」
そう言ってリエラは俺の胸元を指さした。
ああ…ピー助さんか。確かに最近は肩に乗ってる事が増えたから良い目印になってるな。
羽根が生え揃うと共に飛ぶ仕草を初め、今は約20mくらいは飛べる様になったし。
訓練の間は専用ポーチで待ってる様にって、壁際のベンチに置いておいたんだ。だけど俺が寝っ転がった途端、ポーチから飛んで胸の上に着地し『メシくうぴー!』と鳴いている。
「兄からダンジョンでは色々ご馳走になったと聞きました。新しいレシピを教えて頂いた事も含め、ありがとうございました。」
「良いんだよ〜。それは持ちつ持たれつで、ソルス達が作ってくれたら、俺は作る手間が省けるからね。」
ソルスには、沢山のおつまみ燻製を売って貰ったからな。そして『燻しの極みシリーズ』は、俺の酒のお供となった。
食材の種類によってチップを変え、燻製時間も試行錯誤を繰り返して作り上げた『燻しの極みシリーズ』は、今や酒場のおツマミとしても需要が増えたんだと、ソルスが嬉しそうに話してたな。
「兄さん達、普段はダンジョンに潜っている事が多いんです。でもここ最近は、試作品と売上傾向を見るのに街に留まってくれているから、私も両親も嬉しいんですよ。」
「なるほどなるほど…………。」
要は『スコットが街にいて私は嬉しい』って事かな?
俺は知ってるんだぞ!兄ちゃんが一緒だからって喜ぶ妹は、虐げられし兄と恵まれない男の幻想だって、リアルに妹がいるヤツから聞いてるんだからな。
そして、その妹ちゃんは
ああ、俺も酒以外に癒やされてみたいなぁ。
飯の催促でピー助にアゴを啄かれながら、どうして小さい秋は見つけられるのに、春は来ないんだろう?と切なくなる。
そして
しょうが無い……予定通り、帰って風呂入ったらビール飲もう。
運動で疲れた身体には水分チャージしなきゃだよ。ええ?ポ◯リ?何それ、ビールに決まってるでしょ?!
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