第57話 2度目のキノコ

 ダンジョンにおいて、イレギュラーボスとの遭遇率の統計や出現傾向を組合は把握しているのだろうか?そして、それを探索者達にキチンと知らしめているのだろうか?


 イレギュラーとの遭遇を念頭にボス部屋に入るのと、無警戒のまま通常ボスのつもりで入った場合では、その準備や被害想定など、様々な面で通常とは異なる対策が求められるはずだ。


 前の階層でセディール達と一緒に遭遇したボス等は当にそれに該当するだろう。無事に倒せたから良い物の、万一の事だってあったんだ。



「俺はさ、聞いてたのと違うボスが出たとしても最悪ハウスに逃げられるから別に良いんだよ?俺はね?でもさ、他の人は違うじゃん?だからさ、念の為に聞かせて欲しいんだよ。大きなイチモツ前回のボスと今、俺の眼の前にいるスーパ◯キノコ今回のボス、どちらが通常のボスなのかな?!」

「もえ〜もえ〜ぴぃーー!」

「!!!……ああ、そうだったなピー助。燃やしちまえば、みーんな一緒。俺とした事がイレギュラー臭いボスに少し日和ったみたいだ……教えてくれてありがとよ!相棒!行くぜ!!」

「イクゼーーぴーーーー!」



 酒も抜けて、本日はスッキリ爽快!天まで焦がすぜ!バーーーーーーーン(BURRRRRRN)!

 


「ばーーーーーん!ぴぇ!」

「も〜えろよもえろ〜よ〜キノコよも〜え〜ろ〜!例の薬をたっぷり頼むぜ!」

「も〜えろ〜もえ〜ぴぃーーーー!」

「フハハハー!俺のSBSを味わうがいい!」


 

(注)俺のSBS………火弾と火矢を滅多打ちした後、風弾・風矢を上方へ打ち上げる事によって、擬似的に起こした『なんちゃってプチファイアーストーム』正式名称…スーパー・バーニング・ストームの略。病に罹患した周防海君にて命名された。



「もえあがーれー!もえあがーれーー!」

「もえあーかーぴー!」

「う〜〜ー、惜しい!ピー助はたまに濁点の発音をミスるな。君なら出来る!練習あるのみ!リピートアフターミー!」



 俺とピー助が歌の練習をしている間に、SBSを食らったスーパ◯キノコ今回のボス達は、モコッとした厚ぼったい水玉模様の傘の下から、一所懸命何かの胞子を蒔き散らしている。


 だが、それ等は上昇気流に乗って爆ぜながら消えていく。


 また例の薬出ないかな?そうしたら、もう1坪増やして居室を1畳分広くして、トイレを新設したい。



 ん?何やら炎の中でスーパ◯キノコ今回のボス達がキューキューと音を出している。キノコに声帯は無いから摩擦音か何かかな?


 暫く炎を維持していると、ついに体長80cm位のキノコ達は、そのまま俺のSBSに燃やし尽くされて灰となって消えて行った。後に残るのは、宝箱に詰まった例のアレですよね?ね?


「よしっ!やっぱりキノコは燃やすに限るな!実際焼いたキノコは美味いし。今回もウマウマだと良いなぁ…」

「もや〜〜もえ〜〜もふ〜〜ぴぇ!」

「おい!何だよピー助、その三段活用もどきは?!もふ〜〜って、確かに昨日酔っぱらってお前をモフモフしたけどさ!」



 今や羽の生え揃ったピー助は、羽毛もしっかりあって、かなり艶モフの福々ボディをしている。


 それがまた、触り心地が良いのだ。昨晩は酔った勢いでつい、しつこくモフモフと撫で回して、その上頬擦りしてしまった。


 ただ、あまりに俺がしつこかったせいで、きっちり制裁(印堂啄き)をされたが。



「あれ……ボスの魔石の色が前回と違う……前のは黄色っぽかったのに、今回はピンクっぽいぞ。」

「ぴぃ〜?」

「………とりあえず、宝箱を開けてみよう。俺にはキミ例の薬が必要なんだ!カモン!」

「カモン!ぴぇ!」



 大量に薬入りらしき袋が入ってた………けど、これ絶対違うやつだ。鑑定してみよ。



【トロマッシュの粉末……服用すると、作用時に初めて見た相手へ好意・好感を持たせる事が出来る。但し、薬の効果は1時間程度で2度目の服用時には効果が出無い】



「すげぇ微妙な………。だが!等価交換の価格次第では前回を上回られるはず…だって25袋も出たんだから!」

「ぴぇ?」



【トロマッシュの粉末 1袋(1kg) 8万ゼル】



「うわーーー!ゼロが!ゼロが1つ足り無いよぉぉぉぉぉ!!これじゃ25袋出ても……200万ゼルにしかならない!他より確かに高いよ?!だけどさぁ…1袋85万の交換価格を見ちゃったからさ…」

「ぴぃ〜?」



 俺のタヌキの皮算用が…シクシクシク……。

 他は…何が入ってたんだろ?ショックが大きくてまだ見てなかったや。



【精力剤(中)】…数時間精力を増強させる薬】



 チッ!またお前か!売却だ売却!!



【連射の魔導書……魔法等を一度の詠唱で多数が放てる様になる魔導書。放てる数はレベルに比例する】



 またって………本当に魔法以外に、何を連射させようってんだよ?!これでも俺はヒト属だぞ?!魔法以外の具体例を示しやがれ!



「……ピー助さんや、テンション下がったけど次の階層に行こうか?『発酵』と『乾燥』の魔導書を頂いたら、お前のシードも大分残りが少なくなったし一度街に帰ろう。」

「メシ!ぴぇ!」



 そうだ。言っても200万ゼルだ。お風呂入ってビール飲もう。

 

 その内、酒代で増坪分の金を消費しそうだけど、それは気にしたらダメなんだ。


 でも、飲酒以外の趣味を見付けないと、異世界のアルチュウーに変身しそうだ。明日から気を付けよう。うん。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る