39話目 1階層のフロアボス

 翌朝、早く起きて4人で1階層のボス部屋を目指して歩いていた。


 セイフティーエリアからそう遠くない場所に目指すボス部屋はあり、朝は混雑すると聞いていたので早目の出発!



「良かった!まだ誰もいないぞ」

「大分早いからだよ……ア〜〜フゥ〜ねむ…」

「ソルスは食べ過ぎなんだよ!いつも言ってるよね?苦しくなるまで食べるのはよせって!だから眠れなくなるんだよ?!」

「……だって美味しかったんだよ。それを食べちゃ駄目とか…………普通に無理だよね?」



 セディールのお説教はいつもの事なんだろう。言われたソルスには対して効いてない。


 だけど、言われて当たり前な量をソルスは食っていた。俺、いくら美味くてもコロッケ14個も食えないよ。普通に胸焼けするよね?


 寝不足以外の影響が無さそうなソルスに2人共呆れ顔だった。……いや、でも君達もそこそこ食ってたぞ?


 身体が若くなっても俺には無理です。



「カイ、ボス部屋のスライムは何時もと攻撃方法は同じだけど、より大きいから気を付けて。じゃあ部屋に入るぞ」

「「了解。」」

「分かった、良いぞー」



 ボス部屋の中は半円の空間になっていて、直径30mくらいの半円形。まるでスライムを模した様な造りだ。だが、話に聞いていた大きなスライムは見当たらず、辺りを見回すとお馴染みサイズのスライムがウヨウヨと一面に蠢いているのみだった。



「あれ?どうして……」

「いつものスライムしか居ない……こんなの初めて見た」

「………セディール、スコット…これまさか『特異種』が現れる前兆じゃない……よね?」



 ソルスの呟きに3人は顔を見合わせ、俺は聞き慣れない『特異種』と言う言葉を尋ねようとした。だが、床のスライム達が更に蠢きだし、集まっていくと一匹、また一匹とくっ付いて大きくなってく。



「………なあ、これがさっき言ってた『より大きいスライム』なのか?」

「……まさか!こんなの見た事ないよ!」

「くっ付いたスライムの数の分、核もゼリーの中に無数にあるぞ……しかもバラバラだ」

「ね、ねぇ、これ逃げた方が良くない?」



 え〜と、ボス部屋って逃げれる仕様になって………無いよな。ソルスが扉に手を掛けて、押して引いてと繰り返してもビクともしなかった。


 そして融合が終って落ち着いたのか、巨大スライムはどう見ても俺達の方へとにじり寄って来ている。


 天井高が6mほどしか無いから、ジャンプしないだけマシかもな。もう、10mの近さまで迫った巨大スライム。

 こいつに食われるなんて絶対に嫌だ!



「おい!これはもうやるしか無いぞ?!『散弾』」

「わ、分かった!『魔弾』」

「ソルス!魔法で応戦しよう!『魔弾』」

「マジかよ〜!『魔弾』」



 4人で下手な鉄砲の様に『魔弾』をスライムに撃ちまくり、ゼリーと散りばめられた核を少しずつ撃ち抜き、巨体の体積を削った。


 しかもこのスライム、ゼリーの触手を伸ばして鞭を打つ様にバシバシ物理攻撃までして来やがる。


 一定距離を保ちながら、本体は『散弾』で狙って、伸びた触手ゼリーを剣で受け刻んで行く。落ちた触手は、その度にゼリーのドロップに変わって床を埋めていった。



「うわっ!!」

「スコット!!」



 スライムが半分程に減ったあたりで、捌ききれずにスコットがゼリー触手に打たれてしまった。


 直ぐ様ソルスがカバーに入って、スコットの脚に絡んだ触手を切るが、ここが狙い目とばかりに触手ゼリーがスコットとソルスに集中している。



「セディール!2人の援護を!」

「分かった!!」



 俺の中で一番育ってる魔法『麻痺』を使ってみよう!マックスサイズの時よりは、掛かる可能性があるはずだ!



「『散弾』『麻痺』『麻痺』『麻痺』!」



 今は牛象くんと同じ大きさのスライムになってるんだ。

 これで麻痺れよ!くそデカスライム!!


 様子を見つつも攻撃の手は緩めず、ゼリーを削り麻痺も追加していると、触手ゼリーの動きが不意に変わった。


 ぷるんとコンニャクみたいに、空中でフルフル固まって揺れている。よし!麻痺が効いて来たな!


 追い込むぞーー!



「みんな!スライムに麻痺が効いた!今の内にたたみ掛けよう!」

「本当だ、動いてないぞ!魔力が大分減ったから切りに行く!」

「クソーー!俺もさっきの分を叩き返してやる!」

「刺しに行くにも床のゼリーが邪魔だなぁ…勿体無いけど踏んじゃえ!」



 俺も魔力を結構使ったんで、近付いて剣で切っては突き刺しと攻撃して、どんどんスライムを削って行った。


 3人も自身の得物でスライムにダメージを入れている。セディールは長剣、スコットはメイス、ソルスは短槍をそれぞれ装備していた。


 一心不乱に切り刻み、叩き、刺し続け、バランスボールにまで小さくなったスライム。


 核を潰そうと刺した剣が、スライムを深く抉る。


 その時、核を捉えた剣から抵抗がスッと失くなり、バランスボールが形を保てずにその場で崩れ落ちていった。



「………あ…倒せ…た?」

「そうみたい……良かった……」

「もーー!疲れたよーー!」



 いやーー朝一がコレとか……魔力がある時で助かったのかもしれないけど、行き成りイレギュラーとか本当勘弁してくれよ〜。


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