37話目 魔導ダンジョン 〜1階層 セイフティーエリアのグルメ

 事前情報通りに広い階層だった。


 組合でマップを買ってあったから知ってはいたさ。でもね、気を付けて!地図で見るのと実際のダンジョンはやっぱりスケール感が違うから。


 いや…もうマジで広くて疲れたんだ。勿論、魔導書は順調に集まりましたよ?主に『魔弾』稀に『魔矢』の2種のみだけど。

 それと、その上を行くゼリーの量に辟易したな……もう集めるの大変だった。これも出来るなら要改善の案件だ。


 しかし、ここのスライムは他のダンジョンと種類が違った様で、数を倒す内に違う魔導書が1冊手に入った。



【散弾……魔弾を一度に複数放てる。放てる数はレベルに比例する】



 これは育てれば広範囲攻撃が可能になるって事だな!



 それとこの大量ゼリー。売れば良いんだけど、せっかくなので何か使い道が無いか模索中。


 スライムゼリーは食用だって話だから、普通に考えればフルーツゼリーとかを作れは良いんだろうけど、俺はそんなにゼリー食わないし。


 コーヒーゼリーだったら食いたいな……って言うかコーヒー飲みたい。


 疲れたのに何でこんな余計な事をツラツラと考えているのか……それは1階層のセイフティーエリアの賑やかな集まりに、言い知れぬロンリネスを感じたからよ……。


 そこで俺は、この孤独を紛らわすべく、グルメに走る事にした。


 キャッキャッと騒がしい異世界のパリピ共め………見ておれ、これから俺が飯テロを起こしてやる!


 飯テロ必須アイテムと言えば、香り豊かな『ニンニク』でしょう。これを使わない手はない!


 牛象くんをサイコロカットして、ぶち込んだがっつりガーリックチャーハンを作ろう!


 少い身銭を切って『等価交換』で手に入れた大切な米を惜しげもなく投入だ。


 匂いは凶器。

 音は暴力。

 仕上げに、これ見よがしのガチ盛りを披露するぜ!


 お前等の聴覚、嗅覚、視覚に訴えてやる!

 満たされぬ腹を抱えて眠るがいい!


 そう決めた俺は、先にピー助に飯を食わせ、クリーンを掛けてから、調理を始めた。


 この際だミルクとマンゴーのゼリーも作ってみよう!映えも大事よな。


 裏漉ししたマンゴーと温煎して緩くなったスライムゼリーを混ぜ、スープ皿に流し入れて粗熱を取る。ミルクゼリーも同じく用意。


 このスライムゼリーの良い所。冷めればすぐに固まるんだ。なので冷やす必要なし。


 ただ、冷した方が美味いだろうけどな。


 そして砂糖は高価なので使わない。仕上げにハチミツを掛ければオッケーさ!だって俺には『集蜜』があるから!


 次に葱とニンニクをたっぷり刻んで〜〜炒める!すると、加熱と共に香りがブワッと立ち上った。


 そこに塩・胡椒したサイコロステーキの如きゴロゴロ肉を投入し、ニンニクの薫りを纏わせる。

 フォ〜〜!


 肉にある程度の火が通ったら、予熱で程よく火を入れ、次は米の出番だ。

 

 フライパンに、予め卵を絡めた米を用意し炒める。

 全体の味付けは塩・胡椒、本当はウェ○パーも入れたいが無いので、軍鶏しゃものガラで取ったスープを煮詰めた物を投入し、余分な水分を飛ばした。


 そこに肉と追い卵を入れて、軽く炒めれば完成!自画自賛だけど、美味そ〜〜!


 そうだ!ゼリーにはココナッツをパラッと振り掛けて、よりトロピカル風味を演出して盛り付けよう。


 よし!出来たぞーーー!スープは作り置きの玉子スープでいいな!


 それに…目論見通り、皆様にもご注目頂いております。さあ、実食だ!いただきまーす!



 ………ふぁ…至福じゃ…旨味がジワるこの肉と焼飯が合うわ〜!あ!コロッケもトッピングしよ!……ふふふふ…カリサク美味。


 揚げ立てコロッケには敵わんな〜。本当に時間停止の収納があって良かった!

 チャーハンも量が多かったけど、残してもまた美味しく食えるし。



「……あの……少し良いですか?」

「んあ?」



 俺がチャーハンをガツガツ貪り食っていると、キッズ3人組が近付いて来た。しかも野郎ばかり……。


 まあキッズと言っても、今の俺と同じくらいだろうな。それにしても顔面偏差値が高いヤツ等だ……………もしやお前ら敵か?!


 俺がモグモグしながら考えを巡らせていると、最初に声を掛けて来た短髪のハ○ル風ボーイが話を続けた。



「食事中にすいません。」

「………別に良いよ。何の用?」

「もし良かったら、俺達が作った料理と、その料理を少し交換してもらえませんか?」

「……これと?」

「はい!俺たちは家が料理店で、今はダンジョンで材料を採りながら調理の修行をしてるんです!」



 そう言って出された料理は、野菜炒めとサンドイッチ、燻製肉だった。


 被りが無いな………チャーハンもコロッケも量はあるし、料理の修行してるってだけにちゃんとした物を出している。

 それにただのクレクレじゃないなら良いか。



「分かった。………はい、どうぞ。コロッケは見た目が同じで中身が分からないけど、旨いと思うよ」

「「「ありがとうございます!!」」」



 そう。コロッケは調子に乗って、揚げては収納を繰り返してたら、何が何味か分からなくなっちゃったんだ。因みに今食ってるのはじゃがバターコロッケだ。


 俺も、今日作った飯に野菜が無いな〜とは思ってたから丁度良かったよ。


 せっかくなんで、3人組に貰ったのを食ってみるか。……………あれ?この野菜炒め…俺の知ってる味だぞ?



「……なあ、この野菜炒め『まんぷく亭』の味に似てるな?もしかして……」

「本当ですか?!俺んちその『まんぷく亭』なんですよ!作ってるのは俺の親父です!」

「おお!やっぱりそうか!」

「お客様にそう言って貰えるなんて……俺も親父の味に近付いてるんだ!」



 嬉しそうに笑う短髪ハウ○君。よく見れば、確かに元気っ子と顔立ちが似てる。


 どおりで交換って割には量の多い野菜炒めだと思った。これで合点がいったよ。もう、お前は『まんぷく亭』の跡取りとして必要な要素を開花させているぞ。



「良かったな!セディール!修行の成果がしっかり身に付いて来たんだ!」

「そうだな!俺達も頑張らないと!」

「スコット、ソルス、ありがとう!おまえ達だってきっと腕が上がってるはずだ!今度、街に戻ったら親父に見てもらおう!」


 

 そう語り合って盛り上がる3人組は、見た目だけが若くなった俺には無い、混ぜるな危険の青い春オーラを纏っていた。


 頑張れよ若人共!

 俺は食って応戦してやるよ!


 あ、サンドイッチと燻製も美味いや。



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