35話目 解決?

 3つの新たな魔導書と既出の『跳躍』を手に、俺は悩んでいた。


 半ベソメロス君を見送ったあと魔物の討伐を再開したら、麻痺した2人がとても良い囮になってくれて、効率良く討伐数を稼ぐ事が出来て助かった。


 お陰で魔導書を4つも手に入れられた!


 軍鶏しゃもからは『飛蹴』。言うなれば、烈火○陽脚の如き飛び蹴りが出来る様になれるぞ!君も今日からラーメ○マン!


 スズメからは『特攻』。コレって捨て身のカミカゼ攻撃だよな?突っ込んだ後の保証は無し。まさかレベルを上げたら、外角ストレート以外にもカーブとかフォークとか出来る様になるんか?


 羊からは『突進』。え〜〜〜…コレもなの?どうして似たような魔導書ばかり……。

 俺はヘタレなんで、肉弾戦は誠に残念ながら不向きなんですけどねぇ。


 魔物とやり合うにしても、遠くから魔法をチクチク撃ったり、少なくとも剣のリーチは必要なんだ!


 そしてダブりの『跳躍』は、試しに『等価交換』で金に替えたら35万ゼルになった!やったね!!ミフ爺さんの所より高く売れたぜ!


 後の3つの魔導書は保留にしておく。使うにしても売るにしても今じゃ無い。

 今後、もしかしたら武闘系の仲間が出来て、この魔導書が役に立つかもしれないからな!



 時刻はそろそろ夕方。


 他の探索者達がどんどん帰って行く。


 まだメロスはゴールしていない。この2人は見捨てられたのか?


 男の友情って儚いな…淀みに浮かぶ泡沫よ。



「戻って来ないか……残念だね?アイツ1人で逃げちゃったみたいだよ?」

「「…………」」



 項垂れた2人は、メソメソして最初の覇気も無くなっていた。ちゃんと魔物に襲われない様に守ってやったのに。

 本当、泣くくらいなら最初からやるなってんだよ。



「ぴぃ!メシー!」

「オッケー。用意するから待ってろ」

「ウマ!メシ、クウ!」

「そうだな〜いっぱい食えよ〜」



 途中アホ共に付き纏われたけど、結果的には必要討伐数を稼ぐ役立ったてくれたしな。

 ここの階層はもう1日回る予定だったけど、これなら前倒し出来る。


 ピー助に飯を食わせたら、この2人に用は無いからダンジョンから追い出そう。そのあとは知らねえ。


 俺は今晩、コロッケを食うって決めてんだ!


 どうせなら作り置きも兼ねて、なんか変わり種も作りたいな。チーズ入り、枝豆コロッケ、肉じゃがコロッケ、ポテサラコロッケも美味かったな。そうだ!栗も買ってあったから南瓜コロッケに刻んで入れよう!ホックホク〜!


 ピー助に飯を食わせながらコロッケに思いを馳せていると、索敵に近付いて来る複数人の反応があった。


 残された2人組も気付いたんだろう。走って戻って来たメロス君の姿を見て号泣し始めた。


 おお〜…!俺の脳内でロッ○ーのテーマソング“Going The Dista○ce”が流れ出した!


 それに再び現れたメロス君は、心做しかやり切った感と共に、若干自信を付けた様な面構えになっている。


 よし!お前がこのままリングに上がるってんなら俺はその挑戦、受けて立つぞ!


 お前の虎の目を見せてみろ!カモン!


 飯の食い終わったピー助をポーチに戻し、迎え撃つ態勢を整えた。


 すると、メロス君は走った勢いのままスライディング土下座をして目の前で止まった。



「遅くなってすみませんでしたぁぁぁ!!!」

「………………」



 そのあまりに滑らか過ぎる土下座に、俺も号泣2人組も、一緒に付いて来たセグさん(アホジョンの放火時に仲立ちしてくれた組合員)も一様に驚き、一瞬固まってしまった。



「……あ、それは別に良いんだけど…ちゃんと説明してくれたのかな?」

「はい!全部話して来ました!未遂とは言え、大変申し訳ありませんでしたぁ!!」

「そう……なら、そんなに頭を下げなくても良いよ?俺だって一番悪いのは逆恨みでそんな依頼をしたクソジョンだって分ってるからさ」



 メロス君は俺の言葉に顔を上げ、仲間の2人を見遣ると手にした探索者タグを掛けて戻した。


 驚いて止まっていた2人のうるうるが、そこでまた決壊し、“すみません”と“ありがとう”を繰り返し口にして顔をビショビショさせる。


 前回に続き、居合わせた為に付き添ったっぽいジグさんもそれを見て一息付き、俺達に声を掛けた。



「ふぅ…今回はお互いに事が起こる前に留まってくれて良かったよ。いいか?おまえ達は既に成人して探索者として働いているんだ。ジョンが依頼した事が不法行為だと判断出来て当たり前の年齢になっている。それを知って尚、行動に移すのなら、誰の依頼であろうとやった本人自らの過ちとなるぞ。分かったな?」

「「「はい!」」」

「それとカイ、ジョンには再度の注意勧告と、次に探索者組合員の不利益となる様な行為や強要があった場合、犯罪者として告発する旨を伝えた。ただ、アイツの性格からして、それだけ言っても懲りない可能性がある……済まないが気を付けてくれ」

「そうでしょうね…。分かりました」



 クソジョンは、一生、何をやっても“俺は悪くない”を貫きそうだ。

 理解は出来ないけど、居るよな。そう言うヤツって。


 まあ、ここで防具を買う為の目標額50万ゼルを超えた。


 明日からは『魔導ダンジョン』に潜る準備を整え次第、ダンジョンに向かおう。


 魔導書を『等価交換』して稼ぐぞ〜!


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