32話目 再び、草原ダンジョン1層目
「ウ〜サギ〜〜ウ〜サ〜ギ〜〜♪」
「ウ〜ぴぃぴぃ〜〜ウ〜ぴ〜ぴ〜〜〜♪」
ピー助が俺の後に続いて鳴いている。音程も合わせて来る所がニクいね。そして、例え音痴でもそれをそのまま覚えてしまう。
怖いですね〜恐ろしいですね〜。
もし
ピー助には道々、言葉を選んで教えている。ただ、俺の独り言を拾っては、それを繰り返して覚えてしまっており、先行きが不安な状況だ。
そして今は、予定通り草原ダンジョンの1層目で地道な魔物狩り中。
数を討たなきゃならないから、剣ときどき魔法で討伐している。
ハチの時だけは魔法一択。
ハチミツが欲しいからな。腐らない以上、食える物は買わないで済む様に出来るだけ確保している。
貧乏な俺の贅沢は、当分のあいだはメガ盛り飯屋『まんぷく亭』でテイクアウトした飯だ。
ここのダンジョンに来る前、街に行ったついでにお持ち帰りが出来ないか尋ねたら、元気っ子が『はい!勿論お持ち帰りも出来ますよ!探索者さんはいっぱい動くんですから、たくさん食べて体力付けて頑張ってくださいね!!』と、即答してくれた。
なので、元気っ子オススメの一番人気メニュー『大盛りまんぷくセット』を試しに一つ頼んでみた。
内容は……肉増し増しの肉野菜炒め(約1.5kg)、4枚切り厚の食パン×8枚、ウサギ肉の串焼き×5本(長さ30cm)、特製スープ(ほぼ具)、デザートはマンゴーのタルト(1ホール)。
テイクアウト初回は、専用の容れ物の値段込みで2800ゼル。以降は、容れ物を持ってくれば2000ゼルで購入が可能だと言われた。
これきっと、グループでシェアして食うのが正解なんだよね?
まあ、俺はボ…………ソロ探索者だから何回かに分けて頂きます……適量を。
あとスープは、柔らかく煮込まれた大量の具を全て裏漉しして、作り置きの牛象くんテールスープで粘度を調整してから飲んだ。うん、これなら飲めるな……元のままじゃ“食う”だったからね?
「この階層で討伐してる探索者は俺みたいな成り立ての一年生だけだろうなぁ。良いなーみんな若いよね〜〜。あ!俺も今は若かった!!」
自分も、見た目だけは若返ったの忘れてた。
今は推定15歳のソロ探索者。中身はビールが恋しい27歳、彼女募集中。
俺、異世界ってさ、もっと出会いが多い場所だと思ってたんだよ。
でもかれこれ………1週間?
ぜんっぜん出会わねぇ!ハプニングは無いけど、ハブing?を感じている今日此の頃。
もしやあの街は、街じゃなくて村だったのか?俺、村八分っすか?
罪を擦り付けて来た野郎以外には至って普通に接してるつもりだけど、知らぬ間に何かマズい事でもしたか?公序良俗違反はして無いと思うけど……。
それとも人を寄せ付けないオーラ的な何かが転生者からは出ているとか……?……よく分かんねえけど。
まあ、他人の事なんか分からなくて当たり前だし、気にしたってしょうが無いか。
そうだな、面倒だし気にしない気にしない。
それに、本当に出会いが欲しけりゃ、自分からぶつかりに行かないと。丁度、咥えやすい食パンもあるから、次に街に行った時にでも試してみるか?
「………あ。真っ黒ウサギ発見!」
「ウ!ぴ!」
若人グループを横目に、討伐を繰り返していると、とうとうウサギのイレギュラーと御対面!1層目の白ウサギに混じって、真っ黒なウサギさんですよ。プレイボーイですかね?
「何が出るかな〜?」
「ナ〜?」
他のウサギと一緒に黒ウサギもサクッと討伐し、お待ちかねの魔導書を手に入れた。
俺はその前の『製糸』、『吸血』の時に学んだんだよ。ドキドキ感を味わうのも大切だけど、魔導書は確認してから使おうって。
って事で『鑑定』!
【多淫の魔導書………淫事が強く、盛んになれる】
「………だから!!!相手がいねぇつってんだよぉぉぉー!!!」
「ぴぇぇ?!」
どうしてこう……どうせなら、もっと日常使いが出来る魔導書を寄越せよ!
だが俺は、そっと今は使う予定の無い魔導書をしまった。
もしかしたらこの魔導書の出現は、今後、ハーレム展開が訪れるかもしれない伏線的な物かもしれない。念のため、お取り置きしておこう。
その考えに至った瞬間、俺は
脳内には、この先にある予定の胸熱・激アツ展開が繰り広げられている。
そして、ラフな格好をしたミサトさんとビールを飲んで祝杯を上げた。
不思議だな……何処からともなく『サービス、サービス!』と次回当確カモンな台詞まで聞こえて来る。
「……ふぅ、少し落ち着こう。ここでフィーバーしてもしょうが無い」
「フィ…ぴ?」
よしよし、お前はそんな言葉は覚えなくて良いんだよ?その言葉は土曜日の夜かパチ○カスしか使わないからな。
さて、ウサギのイレギュラーが来たってことは、そろそろハチも来るかな?ハチ玉を纏めて討伐しつつ索敵をしていると、ポヨンポヨンとスライムが一匹が跳ねて来た。
しかも黄緑色のスライム!
「へ?また違う色か??と、とにかく討伐だ!ここで逃げられたら、膝から崩れ落ちる自信があるぞ!」
「ぴぃ〜」
スライムの動きに合わせ剣を振れば、一撃でペショっと潰れてそのままドロップアイテムに変わった。魔法より剣の方がスライムは倒しやすいな。
そしてついに、スライムから念願の2冊目の魔導書が出現。途中までは討伐数を数えてたんだけど、500超えた辺で嫌になって止めてしまった。まあ、洞窟ダンジョンで1000近く倒してたから、そのくらいだろう多分。
「2度目は時間掛かったな〜。討伐し易いスライムだからなんとかなったけど、これは金額次第では狙う方が時間の無駄になるか…」
「ス、ぴ?」
黄緑色のスライムの正体も、『薄黄色のスライムに草原の色が透けて黄緑色に見えた』だけだったし、これで魔導書が『麻痺』だったらもう2度目を故意に狙うのは止めよう。
「……はい、麻痺の魔導書でーす。じゃあ、あとはハチを倒して魔導書ゲットしたら2階層へ行こうか」
「ハ…ぴ?」
『ハイ』だよ〜。これは覚えても良いからな。
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