29話目 しゃべり初め


 まだ残りの階層が6層。


 牛乳をゲットする為に4階層でもう少し粘りたいけど、この先、異なる牛ゾウ君(別品種)がいるかもしれない。


 やはり一度は最下層まで行って、粘るのはそれからにしよう。ヤバそうなら、そこで戻るのも一つの手だ。

 

 魔法だってまだまだ育成中。無理はしない方が絶対にいい。俺は、なんてったってビギナー…なんだから。



「今日は、5階層に行くぞ。道々、範囲内の牛ゾウ君を討伐して、適度に小麦も刈るか…」

「イクゾ!」

「そう、行くぞー!」

「ソウ、イクゾー!」


 おしゃべりの成長が早いピー助は、俺が良く言う言葉を覚え出した。


 今のところは『メシ』、『クウ』、『ウマッ』、『オイ』、『サア』、『イクゾ』、『ヤバ』あたりかな?


 俺の語彙力が伺い知れるラインナップ。


 ちゃんと、よそ行きの言葉も教えなきゃな。


 そして朝一の4階層。


 まだ誰も居ない。

 気兼ねもない。

 鳥が直ぐ様、俺を狙う。


「よし!ガンガン行くぞー!」

「イクゾー!」


 『水玉』展開!からの〜ドーーン!!続けてドーーン!!

 鳥共め!俺がボッ………ソロ探索者だと思って狙いやがって!



「ナメんじゃ……ねぇ……ぞ!!」

「ゾ!」

「……………………」



 ピー助……お前その内、韻を踏んで来そうで、俺ちょっと怖いYO!


 そして現在地(8時の方角)は、昨日、人目を避けて移動していたせいもあり、5階層への階段からしっかり離れていた。


 5階の様子も見たいし、ここは直線ルートにいる魔物だけ倒そう。そう決めて進んで行く。


 元々、魔物の密度が高く無い階層だから、そんなに面倒はない(鳥が急襲しなければ)。


 前の麦を刈り、ザクザク進んで行くと索敵に反応があった。鳥……じゃ無い、って事はバッタだな。


 バッタは『魔弾』で爆裂コース。爆ぜよ!!



「え……?色が違う………」



 麦畑のバッタは、黄金色と言えば聞こえが良いけど、ぶっちゃけ輝きは無いただの黄色いバッタだ。デカい上に馴染みの無い色が本当キモい。


 それなのに、麦の穂に食い付いてるソレは、更に悪趣味な紫色をしていた。



「キモっ!!」

「…キモッ!」



 ピー助ぇぇ。脱力するから止めてくれ……。


 最近は足元がしっかりして来たから、ピー助を入れているミニショルダーの蓋を半分開けて外が見える様にしていた。


 羽根がまだ生え揃って無い両翼をバタつかせ、キョロキョロする姿を見ていると、好奇心が強いのが分かる。



「あんまり乗り出して落ちるなよ」

「ぴぇ!」



 身を乗り出して来たピー助を少し戻し、バッタのドロップを拾いに行く。


 すると、そこには魔石と魔導書が落ちていた!

 


「マジか!魔導書久々だな!」

「…マジカ!」



 鑑定をすれば、何の魔導書かは分かるけど、自力で取った魔導書だ。少しはドキドキも楽しみたい。



「さて〜何が出るか…な?!!」

「ナ!」



 ピー助に合いの手を貰いつつ、魔導書を開くと、輝きと共に手にあった魔導書が消え、新たな魔法を習得出来た事が分かった。



「…『跳躍』か。まあ、バックだもんな……」

「ぴ?」



 どれくらい飛べんだろ?9m超えで飛んだら世界新だな!

 前方に魔物も探索者もいない事を確認し、いざ!初跳躍!!



「行くぞ!」

「イクゾ!」



 助走もなく、軽く一歩だけピョンと飛ぶ。

 フワッと、約5mほど先に着地。勢いよく飛ぶと10m以上の飛距離が出た。



「……結構飛ぶな。これ、育てたら飛距離が更に伸びるかな?」

「ぴぃぴぃぴぃ〜〜!!」

「ん?お前も飛んでるみたいで楽しかったのか?」

「ぴぃ〜〜!!」


 ピー助の嬉しそうな様子に、ピョンピョンとバッタの如く『跳躍』を繰り返していたら、あっという間に5階層の階段近くまで来てしまった。



「…ま、いいか。それじゃ、このまま5階層へゴー!」

「ゴー!」



 ピー助の合いの手を受け、次とボチボチ行くとしますかね。次はどんな階層かな?





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ギフトありがとうございますm(_ _)m!



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