27話目 麦畑は食品庫〜4層目

「あ〜〜〜え〜………4階層………草原?」



 眼前に広がるは、黄金色の畑。これは草原じゃないよね?


 一面の麦畑。鑑定しても小麦だった。


 そして、所々にその麦を食んでいるこげ茶色の牛がいる。……象みたいにデカいけどアレは牛……だよな?


 麦畑は、種類が違うのか、同じ黄金色でも、異なる色味がパッチワークの様に混じっていた。小麦以外だと、大麦と燕麦……ライ麦か?



「異世界の小麦粉ってダンジョン産だったんだな……だとすれば、これが俺の抱えていた不良債権(食い切れなかったパン)の原材料……」



 遥か先には、探索者らしき集団が小麦を刈っている姿が見えた。


 あ……収納っぽいのに入れた!よーしよし…収納持ちが他にも居るなら、俺も心置きなく使えるな!


 暫く様子を見ていると、飛び跳ねるバッタや空から探索者を急襲している鳥(鷹?)もいた。



「またバッタか……。それと、初見の牛とあの鳥は要注意だな。他の探索者達も牛からは一定の距離を置いて近寄ってないし、鳥はどう見ても探索者を捕食対象として狙ってる…」



 狙った獲物を狩るとき特有の急降下をして、探索者に襲いかかっている鳥。


 その様子を見れば、広げた両翼で、人がすっぽり覆われる程の大きさをしていた。



「ん〜〜怖い!頭上に『水玉』を作って少しでも防御しよう。そして〜〜この小麦はお幾らですか?」



 他の探索者が刈ってるって事は、組合の依頼で動いてる可能性が高い。


 なら俺は『等価交換』で交換しよう。


 試しに一本折って交換してみると…『1ゼル』になった。うん、雀が泣きそう。

 剣で適当に切って、無造作に束を一掴みして交換……『76ゼル』……やっぱ渋い。


 魔物(主にバッタ)は、時々跳ねる程度で、今は索敵の範囲にも反応が無い。あとの魔物はデカい牛と高速で飛来する鳥。

 割に合わないな。ここもさっさと抜けよう。


 でも、牛一頭は倒したい。牛肉確保の為に!


 焼肉食うぞ!おーーーーっ!!!


 ある程度は牛と距離を詰める為に近付く。その道々、小麦を刈って今度は小麦粉に替えた。



「金を使わずに小麦粉が手に入ったと思えば御の字か。あって困る物でも無いし、節約するには現地調達はアリだな」



 金を入れれば小麦粉と交換は可能だが、444万ゼルを使った身としては、自炊時の食材くらいは賄わなきゃと気持ちを切り替えた。


 進む方向の麦を刈りつつ収納。そして、途中でもう一つ試したくて、まとめて麦を狩り『等価交換』でパンに交換してみた。



「おお!テーブルロールみたいな丸パンになった!小麦粉以外の必要な材料は、刈った小麦から相殺されてるのか?………味も良い感じ!」



 不良債権(食い切れなかったパン)も大量には無いし、街に行く頻度が下がるのであれば、このパンは今後大事な主食に変わる。


 よし、俺も小麦収獲しよ。


 剣の正しい使い方とは程遠いが、他に刃物も無いので、迷わず剣で小麦刈りをして行く。


 次は、パスタに替えてみた。特に指定をせず交換したら、生パスタ風の麺になった。



「やべー!凄くいいじゃないか!小麦粉から作られる物は、ここで替えれば俺の労力だけで、あとはタダ!しかも刈り取るだけ!」



 さっさと抜けようと思ったが、交換食品が思ったより多かったので、速やかに食料確保にチェンジ。


 パンとパスタそれと饂飩うどんに交換しつつ、他の小麦粉メニューを考えていると、違う小麦?の場所まで到着していた。


 鑑定したら【大麦】と表示された。


 大麦若葉だったら青汁だけど、もう収獲出来る麦の状態だったら………ビール?ビール!!


 試しに交換してみたけど駄目だった…。クソ!何かが足りないらしい。金以外だと、ホップとか他にも必要な物は………分かんないな。


 あれ?醤油とか味噌も原料は麦じゃ……ない大豆だ……。でもいつかホップが手に入ったら、ビールに替えられるかもしれない!


 よし、決まった!大麦は刈り取って、然るべき時まで収納しておこう。ビールのために!!


 

 そうして順調に小麦と大麦の刈り取り作業をしていると、索敵に反応があった。


 どうやら鳥が俺に狙いを定めた様で、真上を旋回してグルグルと飛んでいる。そして『水玉』がある上方は避け、背後から水平に向かって近付いて来た。



「『水玉』どーーーーん!!」



 横から突っ込んで来たところを『水玉』の水圧で叩き落とし、剣で止めを刺した。

 水跳ねで俺もビシャビシャになるけど、これが一番手堅く倒す方法だと思う。


 自分にクリーンを掛けてから、鳥のドロップを拾った。


 綺麗で大きな風切羽、鋭利な鉤爪、魔石の3点がドロップされた。これは、全て交換だな。


 








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