26話目 麻痺も使いどころ

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛〜〜休みたい!!寒い朝によく起こる発作が!!……けど今日こそは3層目を突破しなきゃ……」



 昨日は色々疲れて、早めに探索を止めてしまった。でも、正直この不毛地帯はさっさと通過したい。


 あと、黒○号のドロップは馬肉と皮だった。馬肉はともかく、皮だよ皮!


 特に皮のダイヤモンドと言われている『コードバン(お尻の皮)』が鑑定したらあったんた!


 しかも、一頭分でもかなりの量。

 ダンジョンの過酷な環境に鍛えられたであろうその身体を覆う外皮は、艷やかでかつ滑らか。


 ドロップ品と言う性質上、損なう事なく綺麗に剥ぎ取った様な状態だった。


 きっと財布や、名刺入れにしたら最高だよな……。



「財布を作って貰っても、紙幣が無いこの無常よ………。なら鞄……は…そもそも柔らかい皮だし、収納鞄を外す訳にはいかないしなぁ…」



 以前ショップで見た、職人さん手作りコードバンの長財布(75,000円)を思い出した。


 落ち着いた馬革ばかくの光沢、そして柔らかな手触り。


 欲しい欲求はあったが、購入はしなかった。その代わり、40歳になったら買おうと思っていたんだ。その位の年齢になれば、お高い財布を持っても良いんじゃないかと考えて。


 ……まあ、その前に死んじゃったけど。



「……愚図ってないで行くか………。出たら、全然育ってないけど『麻痺』が効かないか試さないとな。もし効いたら、一気に討伐がし易くなるし」



 事前にピー助の防寒対策をして、外へ出る。


 相変わらず木枯らしピューピューの環境で、顔に当たる風が痛い。それなのに、俺はシャツ1枚でも寒くない。そう!首から上と手首以外は寒くなかったんだ。原因はこの、なんの特徴も無いシャツ。



【シャツ(転生者特典)………環境適応仕様(耐久、耐水、耐熱、耐寒、耐震)】



「ズボンとブーツも同じ仕様が付いてたけど、本当に意味が分からないよ。最初の4つは分かる。けど、何なんだよ『耐震』って。アースクエイク系の魔法対策なのか?」

 


 一部、意味の分からない仕様が付いてたが、とりあえず今は無視。


 露出している部分は、2層目で手に入れていた羊の皮を急遽マットからマフラー代わりに転用してマチコ巻き。

 これで、顔面(目元)以外はモコモコ温か〜い。



「魔法を試したい…。どこかに一頭単独でいないかな〜?」



 『麻痺』の効果を試すのに、単独行動している個体を探した。サイズ的には、鹿で試したいけどアイツ等は群れてるから難しそう。



「……………いた。」



 他の個体と離れている馬に狙いを定め『麻痺』を放つ。どうせ一回で掛かる訳が無いと見越して、胴体目掛けて5発発射。


 魔法が当たると馬はピクッと反応を示すが、攻撃魔法じゃないせいか『ん?』と、当たった側の身体に目を向けキョロキョロとしている。


 そして、4発目の『麻痺』が効いたの

か、それとも4回分の蓄積なのかは不明だが、一瞬、痙攣したかと思ったらそのままバタッと横倒しに倒れた。



「効いたか…。4〜5回で麻痺が掛けられるなら、とどめに剣を使えば最初の討伐よりは、魔力的に安上がりだ」



 直ぐに気付かれないって事もあり、その後は『麻痺』を使用して行動制限をしてから討伐のスタイルが確立出来た。


 因みに鹿のドロップは、鹿肉、皮、角だった。


 角がメッチャ立派。何に使えるんだ?何となく、漢方とかで生薬にされていそうな……。

 他は工芸品しか思い浮かばない。


 加えて予想していた通り『3時』の方角に4階層へと続く階段があった。



「良かった……。ここはあんまウロウロしたく無かったからな」



 無事、4階層の階段を発見したので、迷うことなく次の階層へと進んで行く。 


 

5階層は過ごしやすい気候を希望!

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