22話目 草原ダンジョン〜1層目
「へえ……マジで草原だ。……しかも草のせいで小さい敵が目視しにくいなぁ…」
丁度、俺の膝下辺りまで繁った草が、視界一面に生えてる。
ここには他の探索者の姿もあるから、つまらんトラブルにならない様に気を付けよ〜っと。
出て来る魔物は、スライム、ウサギ、バッタ、蝶、ハチ、鳥、鹿、豚、羊、牛、馬、ボスが大猪らしい。
前回と違い、ドンと広いオープンフィールド。攻略済で全12フロアから成るダンジョンだ。
中間地点の6階層にはセイフティエリアがあって安全に休憩が取れる。ま、俺は『大介』があるから関係無いな。
さて……既に点在する探索者達の姿が見えるから、空いてる方に行こうか……。
「想像以上に広いな……。そのお陰で、獲物の取り合いにはならなさそうだけど」
索敵を使い、敵の反応がある方へ向かう。
少し行くと、空中に黒いボールが浮いてる様に見えて来た。…なんじゃあれは……?
不快なブーンという羽音……ハチの集団か。
「……あれは今持ってる魔法だと、倒し切れずにバラけて反撃されそう…。んじゃ、使い慣れた『水玉』で包囲しますか」
四方から囲う様に『水玉』を出して、ハチ玉の所で合体させて丸ごと包み込む。
何匹か逃げたヤツは、『火弾』で先に撃ち落とした。
『水玉』包囲中にも、単独でバッタが跳ねて来たり、ウサギが跳ねて来たり、スライムもボヨンボヨン跳ねて来る。
「狙い……にくいし、忙しい!あっちこっちで飛び跳ねるな!」
文句を言いつつ、向かって来る魔物を討伐し、ハチ玉も消滅した。初っ端から魔物ラッシュどうもです……さ、ドロップ拾いしよ。
「魔石…魔石…魔石…ハチの……針?…魔石…ゼリー…魔石…ウサギの毛皮…魔石…ウサギ肉……壺?へ?何の壺よ?」
【ハチミツ】……ハチの集団を全て倒した時にのみ得られる
「ハチミツか!へーー…取得条件のクリアによって得られる物があるのか……これはボス戦でも色々試してみたいな」
ハチの魔石も大量に拾い、次の獲物を求めて索敵をしていると、前方に男1人、女4人のハーレムパーティーがいた。
「……おお、リアルハーレムパーティーだ。大変そうだな〜俺はやっぱ無理だわ。あんなに一々全員を労ってらんねえし……考えただけで面倒くさい。寧ろ『お疲れ様です♡』って労われたい……」
ああ言うヤツは、きっと産まれながらに天然物の『いいとこメガネ』みたいな視覚フィルターが装着されてて、良い所を見つけて褒めるのが上手なんだろう。
因みに俺説として、もう一つ養殖物の『偽善メガネ』ってのもある。その場合も労ったり褒めたり一見良さげな感じだが、そこには必ず『褒めてやってる』って含みがある。
そして、謙遜をしたりして本人の満足が得られなかった場合は『褒めてやったのに…』ムーブを出しつつ他へ行く。ここまでがセットだな。
そんなヤツには下っ端感と共に、謙遜+褒め返しをすると、大体はご機嫌麗しくなってくれる。
「そう言えば、探索者との交流って全然無いな。飲み屋が併設されてもないし、みんな受注して直ぐに現地へGOって感じなんだよね…」
それにしても俺の様な、ボッ………ソロの探索者はどうしてるんだろう?
街に戻ったら、クエストボードの辺りを良く見てみるか。もしかしたらメンバー募集をしてるかもしれないしな。
そこからは、暫くサーチ&デストロイを繰り返し、ピー助の食事を挟みつつ(俺は腹がまだ減らなかった)、2層目に移動して行った。
「ふ〜ん…草原といっても今度は秋の枯れ草だな。良く燃えそうだから火気厳禁………あれ?普通に『火弾』使ってる?……そして魔物に当たらず枯れ草に引火すると………それってもう火事だろ??何してくれてんだよ!!!」
2層目に来て早々、先行していた頭悪そうなガキが放った『火弾』が枯れ草に落ち、そこから火の手が上がった。
慌て消そうと『水弾』を飛ばしていたが、火の燃え広がる方が早く、延焼範囲がドンドン拡大して行く。
「逃げた!マジかよ?!この火災で魔物が死んだら、あのクソガキに全部経験値が行くんじゃ……」
それは許せん!!断固として阻止すべし!!
風向きを見て、少し離れた風下の草を剣と『風弾』で刈り倒し、『水玉(特大)』でビッシャビシャに濡らす。
続けて『水玉(特大)』を延焼箇所に上から勢いよくドンドン落として行った。
「……手伝う。……これは君がやったのか?」
「はぁ?!この火事は、あそこでこっちをチラチラ見ながら逃げてくクソガキ共がやったんですよ!」
「……そうか。とりあえずはこの火災を鎮めようか」
「やって!ますよ!!」
途中参加して来た見知らぬおっさんと消火活動を続け、なんとか枯れ草の延焼は収まってくれた。
あのクソガキ……余計な魔力を使わせやがって……!マジ許せん!!
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