18話目 探索者組合

 初日はミフ爺さんと長く話し込んでしまい、慌てて宿屋に行ってみたが全て満室だった。



 ……………………おかしいな……。



 こんな時は最後のひと部屋が空いてて、そこに女の子の探索者がバッティング。紳士的に部屋を譲った俺と後日再会なんてイベントが……無いのか………?……無いんだ……そうか……とても残念だ……。



 起こり得ない虚しい妄想を強制終了し、俺は止む無く街の外に出て、少し離れた場所に『大介』を出し、翌日改めて街に入る事にした。


 しかも、昼飯の影響が夜まで残っていて腹も減らなかったから、出店で買ったマンゴーっぽいフルーツを夕食代わりに食った。


 結果、やっぱりマンゴーだった。美味美味!




□ □ □ □




 明けて翌日。その日は朝も早くから街に入った。


 今日は『探索者組合』に行って、探索者の登録をしようと思う。だって、ダンジョンへ入るのには、探索者の資格が必要だって言われたからさ。


 攻撃魔法は、生活魔法と違ってホイホイ使えないから、効率良く魔法のレベルアップをする為には、リポップもあるダンジョンに勝るものは無いでしょ?


 それに、これから何処へ行くにしても、自衛手段が無いんじゃ話にならないだろうし、それにもう仕事はしたくない……。


 将来的には『等価交換』で上手く稼いで、生活しようと思ってる。


 なんせ、試しにミフ爺さんから『魔弾』の魔導書をもう一冊購入して『等価交換』をしてみたら500ゼルになったからな。


 この価格の違いは、何が原因なのかはまだ検証中だ。圧倒的に比較サンプルが少な過ぎる。




 そして、やって来ました『探索者組合』。


 ミフ爺さんに教えて貰ったところでは、探索者には成人していれば誰でもなれるらしい。


 その役目と言うか目的は、呼び名の通りダンジョンを探索する事だ。


 依頼を受けて地上の魔物を狩る事もあるそうだけど、基本的にはダンジョンに潜って様々な物を持ち帰る事を生業にしている。


 その産物の最たる物が魔導書だろう。


 俺の“引き”がいくら悪くても初期の魔導書なら多少はゲットできる……はず。


 ついでに魔物の素材も手に入れて、チリツモ作戦で地道に集めて換金しよう。



 到着した探索者組合は、早朝だと言うのにワチャワチャ賑わっていた。


 みんな朝も早うから真面目だね〜。


 俺なんか、ピー助に起こされなかったら確実に二度寝決めてたよ。



 中に入りキョロキョロ見回すと『新規登録の方はこの用紙にご記入下さい』と、張り紙された場所に申込用紙らしき物が置かれていた。


 必要事項を記入して、列に並び大人しく順番を待つ。ただ、その列の長さに失敗した気分になった…。



「(あ〜〜もっと空いてる時に来るんだった。ただの登録だけでこんなに待つなら、朝飯でもゆっくり食って来れば良かったなぁ。)」



 入る時に気づいたが、組合の近くには探索者目当ての屋台が数件出ており、とてもいい匂いをさせていた。


 この登録が終わったら一通り巡ってみよう。


 そう心に決め暫く待っていると、やっと俺の番が回って来た。


「おはようございます!お待たせしました…あなたは……新規登録ですね?」

「はい!用紙には記入しておしました。お願いします」


 速攻、用紙を受付に出して話を進める。さっさと手続きしてくれ〜!


「………記入漏れは無いですね!では、カイさん、このプレート2枚それぞれにあなたの血を1滴垂らして下さい」

「はい……………これで良いですか?」

「大丈夫です!では、このプレートがカイさんの探索者証明となります。1枚は組合預かりとして提出頂き、不測の事態が起こった際の本人確認に利用させて貰います。あとの詳しいことは、この『探索者心得』をしっかりお読みください。読まずに“知らなかった”は通用しませんので、ご注意くださいね!」

「了解しました〜」 


 マニュアル通りの手続きだな〜。無駄がなくて良い事だ。

 ついでに受付に置かれた『簡易ダンジョンマップ』を貰い組合を出た。


 ここでも特段絡まれる事もなく、すんなり登録が終わった。………とりあえず屋台行こ。


 組合の入口を出て、街の門へ向かう道沿いには食べ物を売ってる屋台が営業をしていた。


 組合で手続きを終えた人達が思い思いに立ち寄り、商品を購入してから街の外へと向かっている。


 パッと見た所、『サンドイッチ屋』、『燻製屋』、『お菓子屋』、『フルーツ屋』と言ったところかな?ちゃんと商品が被らない様になってて良いな。


 『サンドイッチ屋』は、厚切りパンの中をくり抜き、その中に具材を詰めて、蓋をすると言う斬新な挟み方をしたサンドイッチだった。具の種類もいくつかあり美味そうだ。


『燻製屋』は、お馴染み肉の燻製や川魚の燻製が売っていた。肉も魚も何種類かある。


『お菓子屋』は、棒状のクッキーらしき物が売ってる。カロリーバーと思った方が良さそうだな。


『フルーツ屋』は、生のフルーツから、ドライフルーツまで何種類も置いてある。昨日食べたマンゴーもあるぞ。


 これなら、朝飯は屋台で決まりだ。一通り買って食ってみよ。


 買い物を済ませ、貰ったダンジョンマップを見てみると、街の周りに3箇所の印がされており、どうやらそこがダンジョンの場所らしい。


 さっき買った燻製を齧りながら、門を出て近場のダンジョンを目指す。そこで、ある程度は攻撃魔法の使い方と育成をしよう。


 人の流れに乗ってタラタラとダンジョンへ向かう。『探索者心得』を読んでみると、書いてあることは、大体俺の知っている通りだった。


 そして、ダンジョンで入手した品物の納品を組合にして行くと、組合への貢献度が上がり、それによって提供されるサービスが増えて行く。


 サービスの一部としては、宿屋や移動時の馬車が優先されたり、無料になったり、新しいダンジョンが発見された際は、いち早く入場させて貰えたり、受付嬢を指名出来たりと色々あった。


 ただ、貢献度は使うと失くなるポイントみたいなもんで、宿屋にしてもそのグレードによって必要ポイントが違った。それと、組合がある街の立地によっては、その場所独自のサービスもあるらしい。


 これは『等価交換』とどっちがお得か、確かめる必要ありだな。




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