15話目 街に到着〜ようこそ!まんぷく亭へ!
「……次の者!」
「!はい!!」
え〜…只今は異世界のどこかにある街の城門前です。は?街の名前?知らんわ!!
他の人達の様子を見ていると、最初に無色透明な『判定水晶』に手を置き、犯罪履歴を見られる様だ。
悪い事をしてなくてもドキドキさせられるのは、海外旅行に行った時の入国審査でも感じたあの気分……ヘタレですみませんね。
そして何か聞かれたら、使われまくった言い訳ナンバーワン『村から出て来たばかりで何も分かりませーん』を発動する予定だ。
ソっと『判定水晶』に手を置くと、水晶が青く光り、離すと元の透明に戻った。
さあ!続いて第2関門だな?どんと来いや!
俺のイメトレは、既にばっちりスタンバイ済だ!
「よし!次の者!」
「(へ?!これだけ?!おい!俺のドキドキ返せよ!)」
……とも言えず、あっさり城門をくぐって街の中へ入った。通行税もいらないんだ……そっか……それともここを治めているのが良い領主なのか?
………と、とりあえず腹が減ったから飯屋に行こう。
少し進むと、露店でフルーツを売っている出店があった。甘い良い匂いがする…。見た目はマンゴーだぞ!
その商人に『この街でオススメの飯屋』を教えて欲しいと買物がてら聞いてみたら、この先の『まんぷく亭』が良いぞ!とあっさり教えてくれた。
しかも、本日のオススメがオススメだとも言ってたな。
よし…初の異世界メシは君に決めた!
「それにしても、イベントがなんも起こらないな……まあ、トラブルは無いに越した事ないけどさ。でもやっぱり種族は色々だ……あの犬族っポイファミリーとか凄え可愛いし」
向かい側を歩いていた四人家族は、身長が1mぐらいで、目がパッチリと大きく、頭髪が白のクリンクリンカールだった。
ビションフリーゼかよ?!しかもパパでも可愛いとかやべぇだろ。拐われない様に気を付けろよ!
他にも色々気にはなったが、あんまりガン見したら失礼だろう。強制的に飯屋の方へ視線を向け歩く。
そう言えば、今更ながら会話も文字もなんの問題もなかったな……不思議と大丈夫だと疑いを持ってなかった。
こんな安心感を最初から持つのって、ラノベ読み過ぎの弊害じゃないのか?
きっとラノベも、アニメや漫画と同じく日本人の遺伝子にしっかりと刷り込まれてんだろう。だから、死んだ後にもこうして恩恵とし反映されてんだ。……もう手遅れってヤツだな。
そんなくだらない事を考えながら、寄り道と街の探索は飯の後にしようと決め、真っ直ぐ『まんぷく亭』を目指した。
「……あった『まんぷく亭』。ここまでいい匂いが漂って来てる!」
肉を焼く匂いとスパイスの香り…。ん〜〜!実に芳しきかほりだ…。
おお〜腹が鳴るなり東○寺……ん?違うな。金○寺……も違う。あれ、何だっけ??
「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
「…はい!」
「只今混み合ってまして、カウンターのお席でも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫で〜す!」
やた!看板娘は可愛い元気っ子だ!制服も可愛いデザインだな…こう言うお約束はいつでもウェルカム!
カウンターの端に座り辺りを見回すと、歓談しながら思い思いに食事を楽しんでいる人達で賑わっていた。
少しして先程案内してくれた元気っ子がオーダーを取りに来た。
「お待たせ致しました!ご注文はお決まりですか?」
「あ、はい。ここに来る途中で屋台の人に『本日のオススメ』を勧められたんで、それをお願いします」
「『本日のオススメ』ですね?盛りはどうされますか?」
「盛り??」
「はい!普通盛りですと……あの位になりますね!」
そう言って彼女が示した方を見ると、大食いチャレンジメニューとしか思えない量の皿が運ばれて来るところだった。
「…あ、あれで『普通盛り』なの??」
「はい!当店では皆様に『まんぷく』になってもらいたい!をコンセプトに、通常のお店より盛りを良くしてお食事をご提供しているんですよ!」
いやいやいやいや……ちょっと待とうか?
あれは『まんぷく』を平気で通り越すよ?俺に喉元まで食えって言ってるのかな??
「私も食べるの大好きなんで、このお店で働いているんです!沢山のお食事を美味しく食べている姿って……素敵ですよね!」
「………………そうだ……ね?……でも、俺は料理人の方の作ってくれた料理を残すのは良しとしない主義なんだ。自分の食べられる量は分かっているからね。出来れば、普通盛りの1/3でお願いします!」
「そうですか……お客様、少食なんですね…」
「(んなことねぇよ!!)」
恐ろしい刺客の存在に俺はやっと気付いた。
愚かな男共よ……元気っ子の言葉を聞いて食うスピードを上げたのを俺は見たぞ?!
俺はその手には掛からん!!
そして運ばれて来た普通盛り1/3の料理は、肉野菜炒め(俺的大盛り)+パン(4枚切り食パン相当✕3枚)+具沢山スープ(丼サイズ)。
味はとても良かった。また食べたい。
ただ、次は1/4の盛りにしようと、そう誓って店を出た。
因みに値段は800ゼル。パンのお代わりは自由。
………この店…よく潰れないな?
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