11話目 ボクサー・ウサ



 パシャパシャ! バシバシ! ドンドン!!




 只今、『大介』の窓越しには3m超えの巨大ウサギが、自らの頭の周りにまとわりついた水玉を振り切ろうとその腕をブンブン振るっていた。



 そのアグレッシブで切れっ切れのジャブを見れば、例えウサギと言えども『可愛い〜!』などと戯言を言うヤツはいないだろう。



 そして水が減ると、今度は『大介』に向かって腰を入れてパンチを繰り出す。



 どんだけ叩くんだよ………お前の師匠は段平か?!



 大丈夫だと信じている…だけど近距離ウサパンチ超怖え!壁もガラス窓も壊れはしないが、音と振動はしっかり伝わるし。



 それに俺のセイフティーエリア『大介』がもし、もしも壊れたら、生きてこの森を出る確率が一気に怪しくなって来るな…。



 なので、散らされた『水玉』を新たに生成してウサギを覆った。



「…………魔物って肺活量凄えよな……」



 虫の時もそうだったけど、このウサギは攻撃の為に激しく動いてもいるのに、中々息切れしないし。生命力あり過ぎだろ。それとも皮膚で呼吸を賄えるのか?!



 しかし、そのウサギもとうとう立って居られなくなった様で、耳が垂れ下がり、その場に四肢を付いてピクピクと痙攣を始めた。



 ………うっ……………見ていられない。


 殺らなきゃ自分が殺られると分かってる。だけど、これじゃまるで動物(魔物)を虐待しているみたいだ。虫はキモかったけど、なんとか大丈夫だった。


 ひと思いに討伐出来たら良かったけど、あれだけリーチに差があっては迂闊に近付けず、目を逸らして窓の下に座り込んだ。


「……これ、討伐しても食う以前に問題ありまくりだろ………もう絶対に解体とか無理。…大人しく交換しよ。……はぁ、耐性は無かったのかよ……つら



 ソっと窓から覗いて様子を見ると、動かなくなったウサギが横たわっていた。静かにドアを開け、剣先で脚を少し突いてみたけど、もう微動だにしない。


 恐る恐る触れると、ちゃんと収納出来た。



「あ〜〜数を熟せば普通に慣れんのか?……どうせなら、せめて少しは異世界仕様のメンタルにして欲しかった……」



 索敵で辺りを警戒し、次元扉『大介』を仕舞う。まだ、陽も高いから進まないとな……早く森を抜けたい!



「……魔物のせいで、余計に人里恋しくなった。街に可愛いが居るといいなぁ〜。…でも、俺、モテた事ねえけど………」



 ワンチャン来い!いや、来てください!




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