6話目 生きたもん勝ち

 『大介』に匿われること1日。まあ、引き込もっているとも言うな。


 鑑定MAXの俺の目には、窓から見えた魔物の情報が次から次へと入って来ていた。


 別にジャイアントキリングとか狙ってないんだけど…軒並み魔物のレベルが3桁超えててマジで笑えない。本当にこの森は鬼畜が過ぎるぞ?!


 ただ、いつまでもこうしていたらジリ貧で餓死する未来しか残らないのも確か。



「生き残る為には、出来る事で工夫するしか無いな」



 生活魔法で一番使えそうなのは『水玉』。俺が狙っているのは、前方の木に張り巡らされている蜘蛛の巣だ。


 それに掛かった魔物たちは、身動とれず蜘蛛の餌食となっていた。ちなみに蜘蛛のレベルは238。


 俺は、その巣に掛かった魔物を狙っていた。魔物は倒せなくても良い。ただ、ダメージ判定を貰って少しでも経験値を得たかった。


 レベル1の俺なら、おこぼれ経験値でも十分レベルアップに繋がるはず。


 兎に角、少しでもレベルを上げないと、この森を抜ける事なんて絶対に不可能だ。



「窓を少しだけ開けて……行くぞ!」



 複数の『水玉』を造り、蜘蛛の巣に掛かった蝶(124レベル)に向けて放った。ゆっくりコントロールし、蝶の頭部を『水玉』で覆う。それを見届けたら窓を閉めて、セイフティーエリア内で魔法を維持した。


 蜘蛛の巣から逃れようと藻掻いていた蝶は、既に糸に絡まり、まともに身動きが取れなくなっている。



「……よーし…蜘蛛さん邪魔しないでね〜」



 出来れば俺の魔法であの蝶を仕留めたい。幸い蜘蛛は、その前に掛かった魔物を食うのに夢中になっていて、まだ蝶には見向きもしていないから。


 この隙に決着をつけるぞ!気合いを入れて『水玉』を維持し、蝶が息絶えるのを待つ。


 それなのに………く…くそ……!あの蝶は、息止めの異世界記録保持者かよ?!さっさとくたばれ!!



 どのくらいの時間が経過したかは分からない。3分か、5分か、10分か…?俺がとても長く感じただけで、実際はあっという間の事なのかもしれない。



 蝶の四肢が細かい痙攣を繰り返し、力無く蜘蛛の巣にもたれた。その瞬間、俺は意識を無くし、敷きっ放しの布団の上に倒れてしまった。




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