5話目 草原から森へ

 消滅のカウントダウンをされていたので、寝るのを諦めて再び草原を抜けるべく歩みを進めていく。安全確保は大事だよ。


 しかし……はぁ〜〜こんなに歩くの久しぶりだぁね〜。


 おかけで、目標にしていた森はだいぶ近くに見えて来た。そして振り返って驚いたのは、最初にいた場所にあった『木』が無くなっていた事。


 それに伴い、丘も黒く抉られたかの様に消失していた。


 音も無く飲み込まれそうな暗黒を背に、気持ちが急かされ、追い立てられる。


 悠長にあの場所で確認作業をしていたら、どうなっていたのか…。考えるだけで空恐ろしくなるな。常識通じない異世界マジやべぇ。



「鬼畜MOD仕様は、せめてノーマルクリアしてからにしてくれよ…。俺、異世界初心者だよ?」



 文句を垂れつつも、片手で生活魔法を発動させながら歩いている。幸い、生活魔法は『◯ボタンで発動』くらいの感覚で気軽に使えていた。


 1回の使用で、魔力は1減る。それは全ての生活魔法で共通していた。因みに詠唱はしていない。


 それと、魔力は時間で回復する。これ、試験に出るレベルにとても重要。でないと、まともに訓練も出来ないもんな。

 

 照明代わりの『ライト』、原始的な火起こし回避には不可欠の『火種』、飲用は元より洗顔・調理や様々な事に使える『水玉』、当分は風呂・シャワーが使えないので、その間の衛生管理に『クリーン』以上の4種だ。


 今は『水玉』を主に使っている。パチ玉からスイカサイズまで、すぐ自在にコントロール出来る様になった。それを維持しながら歩いていると、草原の切れ目か?薄っすらと境界の様なラインが見えて来た。



「良かった…やっと草原を抜けれそうだ…」



 愚図らず歩けば、1日と掛からない距離だったな。そう思いながら、森へ足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。



 厚く、重く、濃厚な、自然と木々と………あとは、これがきっと…魔物の気配。未熟な索敵を使い、魔物の位置を探る。



 ………おいおい…この森やべぇだろ。



 絶対にレベル1のピヨ子が入っていい森じゃねえぞ?!そこら中に魔物の……しかも勝てそうもない強烈な気配がひしめき合っている。



 俺は出来る限り静かに、アイテムバックから次元扉『大介』を出し、そっと地面に置いて魔力を通した。



 ここは逃げるが勝ちだ。最小限に扉を開け、中へ滑り込む。



 中に入って扉を閉めた時、初めて自分が息を止めていたのに気付いた。……いや、魔物の気配に当てられて、知らずに息を殺してたんだな………。



「……ぐっ、ハァハァ…ゴホッ!!……ふぅ〜〜。これ、どうしろって…言うんだよ………」




 いきなりバットエンドの瀬戸際なんだけど……。



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