4話目 次元扉 (命名 大介)
アイテムバックから『次元扉』を出してみる。
………………………何も起こらないんだが?
このままではオモチャの扉を出して遊んでる、ただの痛い大人だ。
先ずは、定番の魔力を通してみる方法を試すか……感覚的に身体を巡る『魔力』は……分かるな。
早速『次元扉』に触れ、魔力を注いでみる。
すると、ズドンっ!!と大きな音と共に、草の上に縦横3mは有りそうな両開きの扉が屹立した。
「でっか………倒れないよ……な?」
そっと扉のノブに手を掛け回し、中の様子を伺う。ドアの横に窓が1つ。そこからは、今いる草原が見えた。そして、入口ドアの対面には色違いの扉がもう一つあり、その横には同じ様に窓がついている。
「あれ?こっちの窓は何も見えないぞ?」
塗り潰された様に真っ白な壁が見えるだけ。そして、扉を開けた先も何も無く、白い壁で遮られていた。
次元扉の中は、3畳ほどの何も無い殺風景な空間。寝る事は出来るだろうけど、床に直寝状態だ。ベッドも無ければ布団も無い。
唯一、入口左手の壁にタッチパネルの様な画面があった。
「……大介。お前はもっと使えるヤツだと思ってたぞ?まさかこんなもんじゃないよな??」
『次元扉』を『大介』と命名し、タッチパネルに触れる。起動すると、そこには『MENU』と表示され、沢山の項目が並んでんな…。
【MENU】
空間拡張 990万ゼル/坪
水洗トイレ新設 30万ゼル〜/1か所
シャワー室新設 30万ゼル〜/1か所
浴室新設 80万ゼル〜/1か所
システムキッチン新設 60万ゼル〜/1か所
木製テーブル新設(4人掛け) 3万ゼル/1式
木製椅子新設 5千ゼル/1脚
木製ベッド新設(シングル) 5万ゼル/1式
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「おおいぃぃ!!ふざけんな!バカ高いよ!ここは港区の坪単価を空間拡張の為に求めて来るのか?!どこの異世界悪徳不動産屋だよ?!頼むからせめて稲毛市(66万/坪)価格にしてくれぇ!」
俺の嘆きも虚しく、『大介』は変わらぬ数値をディスプレイに表示していた。
マジふざけんなよ……あんな金額、どうやって貯めろってんだ。俺、庶民よ?貴族かなんかと勘違いしてんじゃね?
そして、力無く手を付いた画面の右手には、セルフレジにある様な幅広のコイン投入口が備わっている。
ここに金を入れろってか?
試しに銀貨を1枚投入。
すると、画面の右上に【1000ゼル】と表示された。続けて金貨も1枚投入。表示は【11000ゼル】に変わった。
「……なるほど…これなら金貨は1万円、銀貨は千円の認識でいいか。じゃあ……この『シングル寝具3点セット(敷き・掛け・枕)』を購入してみるか……クソ…1万2千ゼルかよ。」
銀貨をもう1枚投入し、画面の数量を『1』にして『購入』をタッチする。
出て来たのは、旅館に有りそうな布団だ。幸い白色無地の布団セット。変な柄が入ってなくて良かった。
これでキャンプ装備無しのガチ野宿は回避出来るな。それに『次元扉』内はセイフティーエリアになっており、魔物を含めた他者の侵入は出来ない造りらしい。
とりあえず、安眠場所は確保出来た。
はぁ〜……なんか疲れた……もう寝よかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
因みに、我が街の坪単価は約43万円。
東京は高いね。
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