第6話 目の前の彼より他所の人
近くのファミレスに来た。
私の目の前には山盛りのフライドポテト、大盛り炒飯。
食後に食べるデザートはパフェにしている。
私はチョコバナナ、渉君は苺。
逆なイメージだが、渉君の方がちょっぴり乙女な部分があるようだ。
見た目はボサッとしているのにね。
ちゃんと決めれば、それなりになるのにと思うことはあるが、あえて言わない。
そういうことは好きな子から言った方が効果抜群なのだから。
私はただの友達、言っても無駄だから言わない。
「食べなよ」
「わたっちもね」
「だな」
「「いただきます」」
いざ、食べよう。
※
フライドポテトをシェアしつつ、パフェを堪能する私と渉君。
渉君と話しながらも、私は気を抜いてはいなかった。
山盛りのデカいパフェを1つを、カップルや女子3人組がシェアしていた。
カップルなんかは、“あーん”を他の人に見せつけるかのようにしていた。
私はあの“あーん”に関して、何故やるのか考えている。
恥ずかしくはないのか。
付き合いたてが出来ることなのか。
デートが楽しいからなのか。
はたまた、シェアしているからこそなのか。
難しい話題である。
そしてもう1つは、スプーンで掬いそれを他者の口へやるのが間接キスだということを、自覚しているのか。
無自覚でついとか言って、別れた後の帰りに叫んでいるのかな。
そうだとしたら、それは面白いと思う。
おおいに叫べ、そして悶えて。
うん、そっちを見る方が面白そうだな。
「あのさ、聞いてる?」
「え?」
不思議そうな顔で私を見る渉君。
おお、そうだった。
「何の話だっけ?」
「また観察かい」
「ごめんごめん」
他所を見るとついつい夢中になってしまう。
困ったものだ。
「もうちょい見ろっての…」
ボソリと渉君は何か言った。
聞き取れなかった。
「何か言った?」
聞いてみると、彼は頬を少し赤くして「なんでもないよ」とふてくされた。
よく分からない。何故だ、何故ふてくされたんだ。
でも気にしない。放っておこう。触れない触れない。
※
「お腹いっぱいだー!」
「ほんとそれな!」
美味しいお昼で大満足。
伸びをしながら歩くと「あのさ」と渉君は声をかけた。
「なに?」
1つ間をおいて。
渉君が言うまでに、なんだか何十秒も何分もかかった気がした。
「いや…何でもない」
気を落とした元気のない声だった。
変だな、具合悪いのかな。
だったらこれしかない。
「早く帰ろう?私、用事もうないし」
帰って寝るのが元気になる近道。
そう思って提案すると彼は「俺も特にないから帰るか」と、またいつもの調子に戻った。
同じ電車たが途中まで一緒だから、電車で帰ることとなった。
登下校は一緒に乗らないから初めてかもしれない。
たくさん話して元気づけようと心に決めた。
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