第1話 とある喫茶店のお話

「ああああああーやっと学校終わった~」


 まだ部活あるのに。現実逃避してる...

 私が入っている部活は情報部、パソコンでなんか色々とする部活動だけど他の部活動よりも規則が緩そうなので入った。ちなみに実際緩い。咲稀は女子テニス部に入ってる。


「部活今日だぁるーーいーーー」

「最初から文化部に入ればよかった」

「だって~運動部ってなんか青春!って感じしない?」


 確かに運動部は先輩に教えられて試合にも出たり先輩と楽しくワイワイいちゃいちゃしたりする。陽キャとかは恋愛イベント発生したりするし。


「……」

「全然分かんない」

「何で!?」

「別にいちゃいちゃしたり恋愛イベントが発生したりするのは関係ない」

「何言ってんの」

「クーラーの効いた部屋でパソコン触る方が青春って感じがする」

「そっちの方が分からないよ」

「じゃ私こっちだから」

「えー」


 何か言いたげにこちらを見つめる咲稀。私はそんな彼女に手を振りながら部活ヘ向かった。


・・・・・・・・・数時間経過・・・・・・・


 まあ語ることも特に何もなく数時間経過した訳だけど。


「いやぁっほ~い!やっと部活終わった~~!しかも今日部活終わるの早かったから早く帰れる~」


 ハイテンション。この状態でお酒飲んだらどうなるんだろ。


「そんなにはしゃいだら頭痛くなるやめて」

「えー、美春も私くらいテンション上げたらいいのに~……それと頭痛は関係ないでしょ」

「テンションに頭痛はつきもの」

「初めて聞いたんだけど」


 初めて聞くものが正しくないとは限らない。


「ねーめっちゃお腹すいたんだけど~!」

「運動部なんかに入るからだよ。ま、私もだけど。」

「どっか食べに行こっか」

「そうね」


 私たちの学校では部活動が終わる時間が早めだから暗くなるまで結構時間がある。しかも私と咲稀は両親が仕事で遅いから夕食は外で食べることも多い。だから咲稀と私でたまに外食する。

 その代償として私たちのお財布を泣かすことになるけど。


「じゃあまずあっちのクレープ屋さん行こうよ!あそこのクレープすんごい美味しいんだよ!」

「あっちの喫茶店の方が安い」

「そこ行こ」


 安い方に釣られてる

 っていうか、


「夕ご飯…?」

「えへへ、ごめんごめん。きっと私の中の本能がクレープ食べたいっ!って反応しちゃったんだよ」

「私心読めるから下手に隠しても無駄」

「ねぇー少しくらいはその能力解除できないの?」

「いや…無理」


 私の持っている能力「テレパシー」。それは人の心を読んだり、応用して逆に誰かの心を人に聞こえさせたり、私が心の中に語り掛けたりと、様々な使い方がある能力だけど、この能力にも欠点というものが存在する。

 テレパシーの欠点、その中の1つは常時発動しているということ。いや、正確には止め方が分からない的な。生まれつきなのか知らないけど止め方が分からず常時発動しているっていう何もしなくても周りの人の声が聞こえてくる地獄のような状態。

 だからそこから特定の人の心だけを読むことはできないっていう欠点につながる。心を読むにはその人の声を聞き分けれないといけない。


「ま、昔からこれだからもう慣れたけど」

「いや慣れたらだめでしょそれ」


 人間どんな環境でも長年同じ状態なら体が自然とその環境に適してくる。


「それテレパシーもし止めれたら静寂に飲まれて精神崩壊しそうだね」

「その時はまたテレパシーを使う」

「テレパシー中毒じゃん…」


 何テレパシー中毒って。持っている能力は使ってなんぼなの。


「えっと…何の話だっけ?」


 話の脱線が激しい…


「私がクレープ食べたいって話だよ!」

「自分で言っちゃってるじゃん」

「だって心読まれるんだもん」


 そんなことを話しながら私たちは歩いていたが、私たちは視界の端に気になる物を捉えふと足を止めた。


「これは…?」


[poplar open]


 ポプラ…かな?そんな名前の看板が置いてあった。雰囲気的に喫茶店か何かかな。この辺りはあんまり喫茶店とか無いエリアなのにやけにぽつんとあるね。

 っていうかここにこんな喫茶店あったっけ...?


「美春!!喫茶店ポピュラーってかいてある!」

「ポプラね」


 英語がんばれ。


「美春ポプラって知ってる?」

「どういう意味だろ。確かポプラって名前の木が無かったっけ?」

「あー確かに聞いたことがある。あれか。」

「そそ。っていうかいっそのことこの喫茶店に入る?」

「いいねー入ってみよー」


 私たちはその喫茶店に足を踏み入れた。夜ごはんに喫茶店て。


「いらっしゃい」


 私たちを出迎えたのはちょび黒髭とエプロン姿のおじさんと、物静かな雰囲気を漂わせた店内。お客さんはあまり来ていない。


「メニュー表だ。注文が決まったら呼びな」


 おじさんはいかにもアニメの「本当はすごい優しい心の持ち主の無愛想でダンティなおじさま」みたいな感じのセリフを残しカウンターへ戻っていった。

 私と咲稀は椅子に座り荷物を置き少し落ち着いた。


「私カウンター席じゃなくて普通の席が良かったんだけど...」

「私に言われても。あの人がここに座れって言ってきたから流石に断るのはなんかアレじゃん」

「あの人に話しかけられたら私喋れる気がしない」


 このままだと気まずくなっちゃう未来しか見えない。あ、今のは別に予知とか超能力的な意味で言ったわけじゃ…


「注文、決まったか?」

「あ、えっとぉー、このサンドイッチとジンジャーエールください」


 ジンジャーエール、咲稀それ好きだったんだ。覚えとこ。


「そっちは決まったか?」

「わ、私は…咲稀が選んだサンドイッチとコーヒーをお願いします」

「分かった、少し待ってな」


 おじさんはうなずき、サンドイッチを作りに行った。後ろ姿がキマってる。なんていうか、ベテラン的な雰囲気。

 夜ごはんにサンドイッチだけ.....!?って思うかもしれない。でもここの喫茶店のサンドイッチは意外と。凄く、ボリューミー。普通にお腹いっぱいになりそうな量。メニュー表にある写真見ただけでわかる。


「すごーい、美春ってブラックコーヒー飲めるんだ!」

「あ。後でミルク貰わないと...」


 咲稀はニヤリとしておじさんに言った。


「マスター、私の隣の客にミルクと砂糖を」

「もしかしてここバーとかだと勘違いしてる?」

「同じようなもんでしょ」


「『バーだったとしても女性客にミルクと砂糖だけプレゼントはセンス悪いでしょ...せめてコーヒーつけて。なんなら全部奢って。』……なんて、美春は思ってるんでしょ。長年の付き合いだからね、大体分かるよ」


 まあ当たってるんだけど、自分でそれを言うってことは自覚してるんだ。 


「奢ってくれるの?」

「さぁね~?私の心の中でも読んでみたら?」

「奢る気無いじゃん」

「ほう?あんたの友人心が読めるのか」


 近くにいたマスターに話聞かれてた。あーあ。


「あーはい。そりゃあ心を読む他にも色々と凄く凄いことがなんでもできちゃって最強ですよ!!」


 語彙力。説明するならするでもう少し分かりやすい言葉で説明してほしい。


「なるほ.....ん?うん。まあ、とりあえず凄いってことだけは伝わった」

「そうですよ!美春は最強なん…………んんん?」


 今気づいたの…?


「遅くない?」

「おじさん、今のはうそです!!冗談冗談、演技ですから!ね?ビックリしました?しましたよね?いやー私の演技って上手いなーなんて…えへへ…」

「おじさん苦笑いだよ」

「おいお前ら。誰かに言いふらすだとか、んなめんどくせぇことはしねぇがな。おじさんおじさんうっせ―んだよおじさんと呼ぶなおじさんと!おにいさんだろ!」


 無理がある。


「だって見た目おじさんだもん!逆にどう呼べばいいの?あとお兄さんは絶対無理あるって!!」


 咲稀、世の中には思ったことがどれだけ正しくても言って良いことと悪いことがある。っていうか初対面の人にそれ言ったら相当失礼。


「そうかそうかおじさんか!…いや、せめてマスターとかで呼べよ」


 乗ってくれるタイプの人で助かったけど。


「いいや、呼ばないね!」

「いや咲稀さっき思いっきりマスターって呼んでたじゃん聞き逃してないよ?」

「……………」

 

 悪かったって。


「そもそも隣の客にプレゼントとかはバーでしょ」

「でもまあ、ここは夜はやってないバーみたいなもんだな。ここら辺では結構有名なんだぞ?ポプラのサンドイッチが美味いだのなんだの」


 夜にやってないならもうそれはバーじゃないのでは。


「っていうかなんでお店の名前をポプラって名前にしたんですか?」

「響きがかっこいい英単語って調べたらヒットした」


 もはやほぼ適当ね。


「ちなみにお前が頼んだそのサンドイッチは、他のより具がいいやつで結構高いやつでな。一つ900円くらいするんだが」


 多分咲稀写真だけで判断して注文したね。


「ねぇ美春」

「なに?」

「相談があるんだけど…………お金貸して」

「絶対嫌だ」


 この人返さない。


「はっはっは。冗談だ冗談!…いやまあ冗談じゃない。普通にそれくらいの値段なんだが、お前ら親が仕事でいないんだろ?じゃあ困ったときはここへ来な。なんなら夜飯くらいなら無料でやるよ」

「??????」

「食べ放題だ~~!!」

「お、おい。程度ってもんがあるだろ?流石に高いの何個もとかは勘弁してくれよ?」


 状況に脳が追いつけない...


「本当に無料とかいいんですか?」


「ここも結構人気店だったんだぜ?貯金はバカみたいにある。お前らの飯作ったくらいじゃあ破産しねぇよ」

「かっけぇ…」

「なんで私たちが親の帰りが遅いことを?」


 聞いといてだけど実は私は心を読んで大体事情は知ってる。


「単刀直入に言うが俺は実は未来が見える力のようなものを持っていてな。それでお前たちのことを知れたんだ」


 マスター曰く予知で、マスターが私たちに親の帰りが遅いことを知っているって言ってるのが見えたらしい。

 一番最初のマスターがどうやって私たちのことを知ったのか凄い気になる。


「そこら辺は暗黙の了解というか触れてはいけないやつなんだろう。世の中にはなぜそうなったのか訳が分からないものもたくさん存在する」


 なるほど...


「まあ能力は完璧っていう訳ではなくて自分の意志で予知できない。気まぐれとか自分の運命に大きく関わることとかいきなり見える感じだな」


 やっぱ能力にはデメリットが付きもの。


「それとな、未来は予知できるが運命を変えるのは自分の力でどうにかしないといけない。あとは予知の内容が実際起こったことと少し違うことがあるな。大体は同じだけどたまに微妙にズレてる。まあそんな起こることに大きく影響が出るズレではないけどな。ほんと迷惑な話だ、予知するんならちゃんと予知してくれねぇと」

「私も何か能力欲しい!」


 若干頬を膨らませる咲稀。


「叶わぬ願いだよ…」


 私は咲稀の膨らんだ頬を指先でつついてしぼませながら言い聞かせた。


「こいつ分かりやすく拗ねるな」

「咲稀はこういう人」


 咲稀が「それどういう意味!?」と言いたそうな表情でこちらを見てる。


「いい意味で、だよ」

「良かったぁ~」


 ...チョロい。


(こいつ…意外とチョロいんだな)


 同じことを考えてる人が私の隣にいた...

 ところで私は一つ考えた。マスターの能力って「未来を予知する能力」じゃなくて「未来の時系列の平行世界の様子を見る能力」では?と。

 平行世界は私たちの世界より若干ズレてて、しかも何百個…いや、未知数に並んでる。だから例えば咲稀がケモ耳系ツンデレ男の娘だった場合の世界とかもあり得る。いや、私の趣味がケモ耳系ツンデレ男の娘ってわけじゃないんだけど。

 これだと予知の時に見えたマスターが私たちのことを知っていたこと、実際の出来事と予知の出来事が少しズレること。納得いく。大体どっかの並行世界で私の母とマスターが知り合いだったとかなんだろうね。

 それじゃあマスターが私達のことを知ったのは結構偶然?

 まあこれもまた何かの運命なんだろう。ひょっとして現実ではあり得ない能力を持っている私のようなイレギュラーな存在同士は引き寄せられたりするのだろうか。

 ま、どうでもいいか。



<あとがき的なやつ>

 先に言っときます。今回は結構特別なだけであって基本他の能力者は極力出さないつもりです。なので能力者どうしのバトルとか見たい人はごめんなさい。あくまで現実にぽつんとイレギュラーが現れたという感じで行きたいので。


 今回出てきた喫茶店「ポプラ」は植物に関係するのでいい英語ないかなーって考えてたらこれしか出てこなかった。英語力の無さを改めて実感しました。ちなみにですけど次回のマスターは若干キャラ設定ブレブレです。

 ちなみに登場人物の名前に注目するとどのキャラにも植物に関係する文字が入ってます。(今後ネタ切れによりいきなり消える可能性もなくはない)

 っていうか喫茶店の人を「マスター」と呼ぶのか問題が僕の頭の中を右往左往してます。多分言うんだろうね。うん。言うと信じよう。

 ちなみにこの話書いた後見直してると結構美春が心のなかでツッコんだり呟いたりするのが多かったかな。くどかったらごめんなさい。


 ところで皆さん平行世界(パラレルワールド)って信じます?

これまでに「あれ?ここに置いた気がするけど、無いな…」みたいな経験したことないですか?

 それは知らないうちに自分が他の平行世界に移動したから物が別の場所に移動したという風に見える。という説があるそうです。

 まあ僕は信じないんですけどね。

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