とある超能力系女子のお話

じゃがいもis神

第0話 とある昼休みのお話


ここは春には桜が満開になりお花見スポットとしてそこそこ有名な場所


「桜坂」


 私の住んでいるごく普通な町。

 ここは、そんな桜坂に住んでいる中学生が通っているごく普通な中学校。

 桜坂に住んでいる中学生は楽しく「普通」の学校生活を送っている。


 ただし、「私以外」は……


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キーンコーンカーンコーン


「っよっしゃぁ~!昼休み~~!」

「おい卓也!トイレ行こ―ぜ!」「あ、俺はいい」グイッ「いいからいくぞ~!」「おいおいおいおい」

「え~陽菜ちゃん絵上手―い!」

「目とか描くのめっちゃムズイわ」

「めっちゃわかる~」


 どの学校でも必ずあるお決まりの会話が私の耳を直撃する。

 周りが騒がしすぎて一人でいる私が恥ずかしい。

 まあ休み時間だから仕方無いんだけど...


「………………」


 お願いだから私の席の周りで騒ぐのやめて

 私の耳をみんなの声が直撃する理由。クラスの人気者が私の席と割と近いから。気まずい。


「はあ...」


 ガヤガヤと騒がしい集団を横目に机に突っ伏してため息をつく。

 こういう時どうすればいいか。

 そう、本を読むこと。本読んどきゃなんとかなる。本読むの好きだし。

 あれ?なんか私の後ろに人がいる――


「わぁっ!!」

「ピギャッッ」

「その声どっから出たの」


 クラスの視線をかき集めてしまった。やめて...


「後ろからいきなりおどかさないで、ただでさえ『みんなの声が』ごちゃごちゃしてて気づきにくいんだから」

「今の声もう一回聞きたいからもう一回お願い。テイク2ね」


 1ミリも反省してないこの人


「いいじゃんみはるーん」


 まだ昼休みだよそれ完全に昼のノリじゃないよ。未成年飲酒?通報したほうがいいのかな。

「通報しようとしないで!?」

「その呼び方やめて。慣れた感じで言ってるけどその呼び方されたの今日が初めてだけど」

「え~、みはるんって可愛いじゃん」

「可愛くない」


 圧をかける私。


「えぇぇぇえ~…あ、でも冷たい所も可愛いよ!」


 逆に押される私。

 このセリフをこんな大声で言う人現実で初めて見た...あと別の意味でまたクラスの視線が私に集まった。一旦この人ぶっ飛ばすか。


「冗談冗談、嘘、嘘だって、嘘だよーん!」


 冗談でもクラスに誤解を生んだ事実は消えない。やっぱぶっ飛ばすべきでは?


「そんなの認知書き換えとけばいいじゃん」


 認知を書き換える。『私たち以外』にとってはあまり普段使わない単語だろう。まあ大体察してる人もいるかもしれない。っていうか言葉の意味が分かる人は大体察せる。だって文字通りだから。

 私とこの人の2人だけだけが知る秘密が私にはある。ここで問題。私の秘密は何でしょう。3秒以内にお答えください。


 はい時間切れ、残念。


 単刀直入に言うと私、他の人には無い能力を持っている。要するに私、


 若桜美春は超能力者である。


 別に酔って変なこと言ってるわけではない。これは紛れもない事実。

 そしてこっちの酔ってるような完全にやばいノリで話しかけてくる彼女は私の秘密を知る数少ない人物。中野咲稀(なかのさき)。

 咲稀は私とは真逆の性格をしている。私に対して咲稀はガッチガチの陽キャ。ガッチガチな天敵さんだよ本来は。


 そのような女の子がなぜ私の秘密を知ってしまったのか。そしてなんで私は超能力を使うことができるのか。


 遡ること割と結構前。

 まず私が超能力を使える理由だけど、簡単なこと。

 生まれつき超能力を持って生まれた、ただそれだけ。能力を使える根本的な理由は知らない。

 お母さんによると私が生まれて1年くらいのころからバランスを崩すことなく自転車に乗れたらしい。1年で自転車に乗らせる親も親だけど。

 私は幼少期の記憶が頭にモヤがかかったように全く思い出せないけど、その時私はたぶん自転車自体を念力的なアレで支えていたんだろうね。いわゆるサイコキネシスとかいうやつ。

 でもせめて乗せるんなら三輪車とかに乗せろよって思った。


 お母さんは最初のうちは「うちの子天才だわ!」と感激してたらしいけど、私が母の思っていることをズバズバと言い当てるようになったり、じゃんけん大会無敗の王者になってしまったり、現実ではありえない現象を引き起こしたり。

 なんなら普通に宙に浮いてたり…なんなら幼少期の私は今より危険だったりする。

 今は能力を制御できるけど幼少期の頃の私はまだ力の加減がよくわからなかったからほんととんでもない。下手したら家ぶっ飛んでた。

 流石の母も最初にこれを目にした時はとてもパニクったらしい。というか引いたらしい。ドン引き。


 実の娘なのにね。


 3歳のころ私は能力の存在に気づき瞬間移動したり、物に触れずに動かしたり、透視したり、テレパシーしてみたりなどなど。ありとあらゆる能力を制御できるようになっていった。私はまるで使い方を知っていたかのようにいきなり能力を開花させていったらしい。

 私の母は目立つことがあまり好きじゃなかったから私に


「美春。この力は絶対他の人に見せたらダメよ…?ダメだからね?本当に見せたらだめよ?…いやほんとに、マジで。お願い、約束よ?ねぇ、約束よ?これマジのやつだからね?」


 と言った。

 この人めんどくさいなと思いつつ素直に従った私ってえらい。

 下手に能力を見せて色々と大変なことになるのは私も嫌だった。私は人に能力を悟られないように小学校生活を送った。

そうすると意識してないうちに友達も減っていき、それから私は1人になることが多かったような気がする。


 小学6年生の夏休み、私はお買い物の帰り道でたまたま彼女に遭遇した。

 あの酔っ払いのことね。


「お酒飲んでないって!!」


 咲稀の家は結構私の家と近いらしいから家までついてこられて、「また遊びに行くね~」とか言われたらどう断ろうかって思いながら咲稀に腕を強引に引っ張られお話をしながら家に帰っていた。

 もしあの時私と咲稀のタイミングがズレていたら会いすらしなかったかも。そもそも咲稀とあまり話したこと無かったけど、どこから湧いてくるコミュ力なのだろうか。

 ビルの工事現場の横を通り過ぎようとしていた時事故は起こった。工事現場の横で事故にあう日が来るとは。これまたベタな展開。

 なんと私たちの頭上に工事現場から落下してきた鉄骨が迫ってきた。しかも高さがかなり高かったから当たれば即死。

 咲稀は逃げようとしたけど焦ってこけたらしく、こけかたが若干面白かったから一瞬くすっと笑いそうになった。

「え、マジで!?ねぇ、マジで!?」

「静かにしてて」

「……」


とにかく私たちの頭上に鉄骨が迫ってきた。

 当然、咲稀は永遠の眠りにつきました…とはいかせられないのでやむを得なかった。

 私は鉄骨に力を集中させた。アニメとか漫画で物に手をかざして物が動くとかあるけど、あれはカッコよく見せるための演出でしかない。実際は視界の中に写ってる物体に力をこめれば動く。


 するとあら不思議。鉄骨が勝手に宙に浮き、勝手に元の場所へ戻っていったではありませんか。幸い目撃者は誰もいなかった。咲稀一人を除いては。

 私は咲稀に向かって手を差し出す。


「大丈夫?」

「今のって美春ちゃんがやったの!?そうだよね?そうなんだよね!!」


 おかしいな、感謝の言葉が聞こえない。私は深いため息をつく。こうなることは分かっていた。引かれて拒絶されるよりかはマシだと割り切ったほうがいいか。

 咲稀が仲間になりたそうにこちらを見ている。私の方が若干引いた。

 この人何なの、どういう感情の目なのそれは。

 咲稀は興奮&パニック状態に陥っていた。まあ無理もないけど、冷静に考えて。私の方も感覚が麻痺してるのかもしれない。

 一瞬この人の記憶を消してやろうか、と思ったけど、高度な能力を使うにはそれなりに力も使うのでやめておいた。

 つまりめんどくさいということ。

 能力を使うためには力を使わないといけない。ゲームとかで言う「MP」とか「スタミナ」みたいな。そして、力を使いすぎると私の体調にも影響が出る。

 例えば、私が持っている力のほとんどを使ってしまったら倒れて回復するまで意識すら無くなる。どうやら私の体は特殊で生きる力にもその能力の力が関わってくるみたい。そして、半分くらい力使っても凄い全身筋肉痛みたいになる。

コスパ最悪。だからあんま高度なものは使いたくない。そもそも能力はデメリットが多い。


「ちなみに言っとくと私ほとんどなんでも出来るから。宇宙空間に放り出したりスカイツリー級の高さに瞬間移動させたり一酸化炭素を周りに一瞬で充満させたり色々なことができるよ。試したこと無いけど」


 私は咲稀にとあるお願いを提案した。


「絶対に他の人には私のこと黙っておいてほしいんだけど」

「でも私みたいなクラスメートを殺めるようなことは流石にしにくいんじゃないの?だって無暗にそんなことしたらめんどくさいことになりそうだし」


 今の時点ですごくめんどくさいんだけど...

 けどそっちがその気なら私にも考えがある。


「中野さんの推しの写真どんなのでもあげる」

「他の人には黙っとくよ」


 チョロい、想像以上にチョロい。

 咲稀は私のグッジョブな取引に応じてくれた。優しい、咲稀。


「最初の方完全に脅迫されてたよね。脅迫罪にあたるよねこれ」

「ん?何か言った?」

「いえ何も」


 私が咲稀の記憶を消さなかったのはめんどくさかったことの他にもう一つある。咲稀は割と口が堅めな性格だった。あとちょっとお馬鹿。ちなみに物理的に心の中を覗かせてもらった。


「お馬鹿いうな天然な」

「本当の天然は自分で天然って言わない」

「いや、本当の天然は自分のことを天然って言わないことを利用して逆に自分を天然って言って天然じゃないと思わせることが真の天然なんだよ」

「意味わかんないよ絶対それ即興で考えたでしょ」


 少なくとも咲稀が人の秘密を暴露するような人ではなかった。まあ結局はめんどくさかったが主な理由だけど。

 ということで咲稀は私の秘密を知る存在になった。なったところでって感じだけど。


「まあ私が能力を使えるようになったわけじゃないからね~」


 そもそも私みたいにこんな能力を使える人間が何人もいたら困る。

 ここには魔法使いも、魔物も、もちろん超能力も。存在するはずのない正真正銘現実の世界。だから私のような人間が存在するとこの世界の秩序が壊れる。


「えーーでも空飛びたーーいー」


 夢が小さすぎ。この人が能力を使ったらやらかしそうだなと内心思った。


「私が能力を使えたら自由になれる!!」


 宗教...?こいつにだけは能力を渡すべきじゃないなと内心思った。


 そもそも超能力というものは扱いが難しい。

 例えば全国男子諸君の夢である女の子の服を透視で透けさせて見るという良からぬことをしようとしても、少しでも加減を間違えれば服どころか肉まで透けて骨だけが見える。シンプルに気持ち悪い。

 一時的に身体能力を向上させる能力を使っても、少し壁ドンしただけでも加減を覚えないと壁にヒビが入る。まあ、ヒビが入るくらいならまだいい方。それに自分の身体自体が強くなった訳じゃなくて無理矢理身体能力を一時的に底上げしただけだから身体への負担がかかり、後でとんでもない強さの筋肉痛が待ってる。

 私は長年能力と共に生きてるから大体力の調整はできるけど、いきなり能力を持ったら大変なことになることは確実。

 よく「超能力とかほしいなー」とか言ってる人を見かけるけど、実際のところ超能力は言うほど便利ではない。超能力者になってみたらわかる。確かに便利な場面はあるけど、その分普通に人間として生きることができなくなる。


「そういえば美春以外に超能力を使える人いんのかな~」

「さあ、どうだろう。でも私が存在するのなら1人くらいはいたりするのかな」

「えーいいな…」


キーンコーンカーンコーン


 授業再開のチャイムが鳴る。


「じゃあまた後でね~」


 と言いながらバカみたいに近い私の隣の席に戻る咲稀。チャイム鳴ってから着席じゃ遅い?いや、心配無用。

 私の力には、人々の認知を変えるというものがある。さっき咲稀との会話でちょっと出てきたやつ。

 認知変化を使うと人々の認知を変えることができる。例えば…


『学校では男子がスカートを履いてもおかしくない』


 という認知に変えると、朝男子がスカートを履いて登校してきても誰も疑問に思わなくなる。ただこの能力には少し注意点があって。

 1つは内容によっては世界が大きく変わってしまうこと。例えその認知を上書きして直しても大きく変化した世界を認知変化によってもとに戻すことは出来ない。要するにやらかした時の後始末がめんどくさい。

 そして2つ目、この認知の効果は地球全ての人々に影響を及ぼすこと。だから部分的に認知を変えることはできない。要するにやらかした時の後始末がめんどくさい。

 そして、私はとある認知を変えている。


「チャイムが鳴って数秒以内に着席するのはギリ許される」


 こういうこと。

 私の能力の使い方割としょうもない。まあ普段これくらいしか能力の使い道ないから。


 だってここは魔法使いも、魔物も存在しないただの現実の世界だから。



<あとがき的なやつ>

 まず、こんなラノベの小説のなり損ねみたいなこの作品に時間を使ってくださってありがとうございます!少しでも面白いと思ってもらえたら満足です。

 今回はプロローグ的な初回の解説みたいな感じの話になったので0話としました。1話もそんなテイストの話になるかも。

 ちなみにこんな感じの小説投稿サイトに投稿するのは初めてなので改行とかどのタイミングでやったらいいのかとかマジわけわかんねーでした。


 改行は適当にやっとけば何とかなる。うん。


 超能力ってめっちゃ欲しい能力だけど、冷静になって考えてみたら逆に不便なことに気づきました。アニメとかの超能力は都合が良すぎるからいい物に見えるのであって、実際はとんでもない数のデメリットがあると思う。テレパシーとかで映画のネタバレ食らったら台パンもんやで。

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