ep.005 動かない探偵〜不動無道
「さあ、次の探偵さんは……こちらから指名いたしますわ。 そこのあなた、お名前は?」
シャーロット先生は、前髪で顔の半分が隠された眼光の鋭い男子学生を、指名した。
「
声変わりした後の低い声が、スタジオに響く。
「不動……ということは、タンジョ――
「そうだ」
動かない探偵の正体を明かしたシャーロット先生は、妖艶かつ愉快そうに口の端を上げた。
赤いヒールをカツカツと鳴らしながら、動かない探偵へと近づく。
「タンジョは、『探偵になりたい人あるいは探偵の助手になりたい人たちが、安全で持続可能な探偵業を行える、未来の探偵と助手を育てる』という名誉理事長の理念のもとに創設されたわ。表向きわね。未来の探偵と助手を育成するために集められたのは、現役の探偵や助手、元検察や元監査法人の会計税理士、高校教師から一般教養を教えるマナー講師……私も、その一人よ。あなたのお
腕組みをしたシャーロット先生は、動かない探偵の真正面で立ち止まった。
突然のシャーロット先生の挑発的な態度に、周りの生徒たちは動揺を隠せなかった。
しかし、動かない探偵は無表情のまま、眉ひとつ動かさない。
結ばれた唇は閉じたまま、落ち着いた瞳で、シャーロット先生を見つめる。
二人の間に漂う不穏な沈黙を打ち消すように、終業のチャイムが鳴り響いた。
「あら、残念。今日の授業はここまでね。探偵科の学生のみなさん、お疲れさまでした。本日の事件現場について、概要と推理と考察をまとめて、レポートで提出してください。期限は明後日まで。それでは、ご機嫌よう」
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氏名:穂村シャーロット
本職:探偵
専門:探偵科/推理演習
二つ名:現代に転生した美しきシャーロック・ホームズ
決め台詞:「ひとつよろしいかしら?」
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