葬列

 葬列。けれども誰の。

 それは私の。

 夜を透かして波音がある。風が吹く、誰かの泣き声をさらい上げながら。途切れ途切れに聞こえる嗚咽、音をひそめた話し声。時折はけたたましい笑い声がそれらの間を一条走り、それらすべての声たちを、あやすように薄く覆うかすかな歌声がある。

 方々で燃やされる松明、列へ加わる人々は誰も、大なり小なりの炎を点して道を行く。

 海風に酒のにおいが混じる。人々は踊るような足取りをしながらなお酒をあおり、出される料理を片端から平らげつつ道を行く。どこへ? 波止場へ。

 私はひとり、それらに加わるでもなく座っている。飲みもせず、食いもせず。海が洗い、漂白し、そして浜へと打ち上げられた骨の木切れに。それはじつに奇妙な眺めだった――誰もが私のために涙しながら、それでいて誰一人私を見ようとしない。

 最後尾近くの集団が、松明を砂浜へ落とし、黒く四角い箱のようなものを担ぎ上げる。棺桶だ。なかにはいっぱいに、私のための荷物が詰められている。

 これから続く船旅のための。

 私が真実死ねば、棺桶に抛りこんでそのまま沈めてしまえばいい。弔いはこうして陸を離れる前に済ませてしまった。ここを立ち去る人間は、だいたいが同じように扱われる。船で行くものは私と同じに、陸伝いに行くものは、馬の首へ棺桶を模した小さな飾りをつけられて。

 波止場で貝が吹かれる音。

 私は立ち上がる――よろめきはしなかった。ただ静かに歩いていく。人々の列のいちばん後ろを。すでにして葬られ、どこでもない土中へと埋められた自分の死を追いながら、追いつくこともできぬまま。誰も私を振り返らない。

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