第12話 交渉3

黒い衣服に身を包むエルフの女性。扉の前には、筋肉質で見るからに勝てる相手では無いことを分からせるような男が2人たっていた。このものたちのボス、龍宮寺雅人は足を組み、ソファーに座り商会の代表者であるパルメザン・ガルムドの様子を伺うようにしていた。そして、ずっと黙り込んでいた龍宮寺雅人の口が重々しく開いた。


忙しなく働くエルフの皆さん。彼女らは今、交渉に来ていくためのスーツを仕立てているのだ。やはり身だしなみは重要。勤めていた会社の先輩も絶対にスーツは綺麗にしろ。と言っていた。

「で、僕はどんなことを言えばいいのかな?」

と俺はアリスに聞いた。こっちの商談のやり方を知らないし、こっちにはパワポもプロジェクターもない。俺が知っている商談方法ではこっちの世界じゃ通用しない。じゃあどうするのか。幸いこっちには、王都にいたアリス頑張っているからアリスに教えて貰うことにした。

「相手方に弱い姿を見せてはなりません。常に相手より上の立場だと思ってやってください。」

とのことだ。こっちはこの世界にはないだろう黒スーツにネクタイを絞めて行く。ついて行くものはみなそういう格好だから威圧に関してはこっちの方が上だと思う。だったらあとは前の世界で培った口のうまさで契約をむしり取る。ただそれだけだ。

「ありがとう。自信が持てるよ。」

とアリスに言うと、微笑みを返してくれた。そして、スーツの仕立てが終わると同時に俺は、交渉に向かった。


移動はと言うとドラゴンを使う。ブラフマーに頼んで、適当なドラゴンを見繕ってくれた。呼んだドラゴンに、騎乗して行く。空の旅は案外気持ちよくて、すっかりハマってしまった。しかし、他の人たちはぐったりしていてもう二度とごめんだと言う。


俺は町に着くなり、商会の建物に向かった。商会のロビーには従業員が多くいたが、俺らが通ると、道を開けてくれた。受付嬢に言ったら見た目のせいかすぐに合わせてくれるそうだ。俺はドカッと座った方がいいと思い、ソファーに座るなり、脚を組み商会の代表を待った。

「おまたせしました。」

と言って部屋に入ってきたのは感服のある老人だった。

「初めまして。私は龍宮寺雅人。今回の交渉に応じて頂きありがとうございます。」

と軽く挨拶をした。

「これはこれは、私はブルーカイザルド商会の代表をしております、パルメザン・ガルムドと申します。話には聞いていますよ。聞いた話によると、”鉄”を生産しているとか。」

と相手さんしっかりと本題に話を繋げてきた。さすが、やり手だな。

「今回の交渉は鉄でございます。」

と言い、俺は指を鳴らした。そうすると、扉の前に待機していた2人が鉄の延べ棒を板に乗せて入ってきた。

「そ、それは…」

とガルムドさんが絶句していた。そこに俺は、

「今回は純度100パーセントの鉄を取引に使って頂きたい。うちとやっていただければ、この延べ棒40、いや50で金貨20枚でお取引いたしましょう。それプラス輸送はうちが引き受けましょう。いまうちでは、輸送に革新的な進歩をもたらす”あるもの”を開発しております。どうです。うちと商いやっていただければこれだけやりましょう。」

と俺はマシンガントークのごとく話した。

「し、しかし、魔物の問題があります。仮に輸送の面が解決しても魔物がおるでしょう。」

と言ってきた。確かに魔物の問題はあるが…。

俺はニヤリと微笑み、もう一度指を鳴らし2人を呼び、次は銃と、ドラゴンの鱗を持ってきこさせ、

「その点は、ご心配なく。こちらのもので魔物を一掃いたしましょう。」

といいアイコンタクトをとる。

「まず、こちらはドラゴンの鱗です。通常ですと剣や弓、魔法までも弾きますが、これは違います。」

と言い、2人は距離を取り始め、鱗を固定台に乗せた。

「これは銃。私共が作り上げた、新しい武器でございます。」

といい片方が銃の引き金を引いた。すると、轟音とともに弾が発射され弾は鱗を貫通し、後ろの壁にめり込んだ。相手が呆気に取られているところにさらに続けた。

「これさえあればドラゴンだろうがなんだろうが撃ち殺してしんぜましょう。いかがです?うちと契約しませんか?契約させて頂ければあとはこちらでやりますよ。さあどうです。金貨50枚お安いですよ。」

と俺は吹っかけか。果たしてどうする。と考えているお相手さんを見ながら思っていると、

「分かりました。契約させていただきます。」

と言ってくれた。よしやった。これでうちは安泰だ。とか考えてる。その後続けて、

「それではこちらにサインを。」

といい、契約書を渡す。その時、

「ひとつ、お願いがあるのですが。」

と吹っかけてきた。なんだ。と考えていると。

「輸出先の町を港町の”クリミナル"にして頂きたく思っておりまして、それともう一つ、クリミナルの町の整備をお願いしたいのですが。もちろんお金は払います。」

と頼んで来た。クリミナルまで行くのはいいのだが何故だ。なぜ町の整備まで…と考えていると。

「実は私の故郷なのです。クリミナルは元々美しい街でしたが今は見る影もなく…。あなたがたの技術ならなんとかなるのではと思ったのですが…。」

と切り出した。なるほど。今後も関係は良くしときたいし。と思い俺は、

「分かりました。精一杯頑張ります。」

といい、交渉は終了。結果、金貨60枚プラス整備の費用として25枚貰えることになった。今回の交渉は成功したのであった。



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