第11話 交渉2

(ひ、非常にこの状況は宜しくない…)

とブルーカイザルト商会代表、パルメザン・ガルムドは絶望していた。御歳75歳。そろそろ引退して余生は穏やかな海に囲まれて静かに暮らそうと考えていた矢先にそれはやってきた。見たことのない黒色の服を見事に着こなしている男。その隣には、エルフの女性。そして、扉の前には、男が連れてきたごつい男が見たことのない筒を持って立っている。

(オワタ。儂今から死ぬのではないのか。これが報告書で言っておったやつなのか。鉄を掘り出したとかいうやつなのか。信じられん。信じられんが…)

ガルムドは自分の目の前に山積みになっている銀色の眩い光を放つもの。鉄が確かに自分の目の前に積まれている。

(これは間違えなく本物の鉄。これだけあればどれだけの利益をもたらすか…)

ガルムドは唾を飲んだ。

(ここはひとつ話を聞こう。)

ガルムドはそう決意し、口を開こうとした。

この話の数週間前……

「以上が報告です。」

俺は今日も今日とて報告を受けていた。バイオレットに”あるモノ”の開発を任せてからかれこれ1週間弱。あれから俺が木で作った作業小屋に籠っているらしい。噂によると、夜な夜なゴーレムを数体引き連れてどこかに移動しているらしい。危ないことをしてないといいんだけど。

そんなことを考えていると、ドタバタと走って来る音がした。おっ。噂をすればなんとやら…。

「できたわ!!できたわよ!!」

とバイオレットが息をきらしながら言って来た。

「できましたか!!!」

と俺も答えた。俺も楽しみだったので嬉しい。

「早速見せてください。」

と俺が言うと。

「そういうと思った。まぁ着いてきなさい。」

とバイオレットのあとを着いて行った。


第1倉庫前。そこには俺が毎朝見ていたものが敷いてあった。

「こ、これは。」

俺が驚いているとバイオレットが説明を始めた。

「苦労したは〜。精霊学も駆使してやっと完成した代物よ。」

と説明した。俺と第1倉庫職員の前にあったものは。汽車だ。つまりSLが止まっていた。

「すごい…」

と思わず言葉が漏れてしまった。

「ふん。もっと褒めなさい。」

とバイオレットが胸を張っていた。いやすごい。正直ここまでの完成度だとは思わなかったし、こんなに早く前世と同じようなものが作られるとは思わなかった。

「すごい。すごいですよ!!これで輸送時間が大幅に短縮されます。これで…」

ついに商会との交渉の手札は揃った。後は、もっとインパクトがありさりげなく見せられるようなものを…。と思案しているとひとつの案が思い浮かんだ。そう、銃だ。銃はこっちの世界にはまだ確認できていないし、なにか手土産になるものとしても最高だ。

「よし。」

と俺は汽車の完成とともに、あることをやり始めた。


アリスの話をしよう。アリスは俺が肉体関係を持った最初の人間で、初夜の後、数回ヤった。

その後アリスは数名を引き連れてドラゴン討伐に向かった。長い間会っていないから寂しいが仕方ない。もう一つ話して置くことがある。それは今の俺の家だ。昔ここに来たての頃は、テント住まいで会ってこれでいいと言ったがみんなに反対されて渋々家を作って貰うことに。広さは学校くらい広かった。横に長く縦にも長い。ほとんど正方形である。エントランスには、みんな集まれるように家具を置き、部屋はその倉庫ごとの代表者1名とアリス、バイオレットの部屋だその一室に俺の作業部屋がある。俺はそこであるモノを作っていた。それは銃である。俺がこっちに来たときに使っていたものは今も使っているが反動が結構大きいので俺しか使えない状況である。なので今回作るのは、M1ガーランドだ。これは1次大戦から2次大戦にかけて広く使われていた銃だ。これを作る。と言ってもスキルだから1発だが今回は設計図や弾丸の火薬の分量まで記した指南書を作成した。これで準備万端である。俺はみんなを集めた。


みんなが集まり俺はまずこう言った。

「これから僕は商会の方と交渉に入ります。そこで僕の護衛としてガタイのいい方を2人募集します。ご協力をお願いします。」


そして数日がたった。

「それではよろしくお願いします。」

と俺は強面の筋肉お兄ちゃんに話していた。この2人が今回の護衛の方である。

「どうぞよろしくお願いします。」

と背が高い方の人が挨拶をしてくれた。

「・・・」

背が低い方は黙り込んでいた。

「私の名前はジュベール。こっちは弟のアイレスです。弟は無口な方でして…。」

と自己紹介してくれた。この2人は初期メンバーで最近は山でドラゴン狩りをしていたはずだが…。

「アリス様がお見えになって引き継いでくれたんです。アリス様はお強い方なので後1週間足らずで帰ってくるでしょう。」

都笑顔で話してくれた。心配だな。怪我してないといいんだけど。と心配しながら今回この兄弟に使って貰う武器の説明をし始めた。

パァーン パァーン

と倉庫裏の仮の射撃訓練場に銃声が響き渡っていた。最初の撃ち始めの時こそびっくりして怯えていたが、1時間近く撃っていると慣れてくるようで、静止している的だったら10発中7発くらいは当たるようになっていた。

「そこまで。今日はこのくらいにしておこう。」

と俺が終了の合図を出した。この感じだったら護衛は十分だろう。と安堵した。


あれから2日後アリス一行が帰ってきた。お土産としてドラゴンの鱗を持って帰っていた。聞いたところ、ドラゴンの鱗は加工すれば防具となり、研げば剣にもなる万能素材らしく、アリスに管理は任せた。

「後もう一つおみやげがありますよ。」

とアリスは笑顔で言った。なんだろう。鉱石とかかな。と楽しみにしていると。

「こちらがお土産です。」

と言って連れてきたのは、身長は2mにまで迫るほどの巨体。がっちりとした筋肉がついており、肩から腕にかけて、鱗があるオトコだった。

「竜人族、族長のブラフマーだ。よろしく頼む。」

と頭を下げた。アリス曰く、竜人族の最後の生き残りであり、全ての龍を使役し、統率する力があるそうだ。

「初めまして、龍宮寺雅人と言います。ようこそ。我が鉱山へ。」

と俺は挨拶も兼ねて自己紹介をした。

「敬語は結構。俺は、あなたに仕えにきた。」

と言った。どういうことだ。と疑問に思った。曰く、領土であったオリュンピアス山は近年、森に住まう神々たちと、交戦を続けていたそうだ。最初は数でゴリ押していたが神々は1柱1柱が化け物揃いでじわじわやられて言って助けを求めていたらしい。

「マサト様。もう一つお土産がございます。」

と、アリスが耳打ちしてくれた。


「こちらです!!」

とアリスが言うと、そこには耳が長く、1人1人が銀髪や金髪の美女がいた。異世界のテンプレ的な存在のエルフだ。

「えっと。これは…」

俺がまじまじと見ていると、そこの団体の代表の人が出てきて、

「私たちは、”神々の森に住まうもの”。テルプラン一族です。」

エルフにも一族があるらしいな。勉強になった。


俺はその後、各個人個人に挨拶をして周り、良さそうな人材には、秘書として一緒に来て欲しいということを話した。俺が選んだのは、銀髪の女性で、名はないそうだ。名前が無いのは不便なのでその人に俺は、”ナナシー”という名前をつけた。

「ありがとうございます。」

とクールに一瞥していてかっこよかった。ELF1団はあるモノをもって来てくれた。それは20個ほどの繭であった。

「これは、ヘルデレア・スパイダーの繭です。これで衣服を作ります。」

と説明していたが、みんなその説明を聞いて絶句していた。聞いたところ、ヘルデレア・スパイダーの母体は、1匹で小国は滅ぼせるほどの力を持っているそうだ。しかし、その繭は上質なもので、庶民はもちろん、超大国の王が、羽織などを作る時に特注で頼むそうだ。

「これを貰えるのですか?」

と俺が聞くと、小さく頷いて、

「生体もいますからこれで増やせます。」

と笑顔で答えた。みんな怖かっていたので世話から生産まで、エルフのみんなに任せることにした。


「おぉぉぉ!!!!!♡♡イグーー♡♡♡♡」

と俺の寝室にアリスの声が響き渡っている。俺はアリスと久しぶりに夜の営みを行っている。

「アリス!もう出る。」

「どうぞ中へお出しください♡♡熱いのください♡♡」

という声と共に、俺はアリスの中へ出した。

事後、俺はアリスとベットで、横にながら今後について考えていた。するとアリスが突然、キスをしてきて、

「大丈夫です。きっとうまくいきます。」

と言ってくれた。この優しい感じは母性に似ており、とても安心した。

「アリスのため。みんなのために頑張りますよ。」

と俺は、言うと共に今後のことをしっかりと計画立てるのであった。

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